壱岐津礼

壱岐津礼

最近の記事

夫の闘病記

「礼(仮名)ちゃん! 大変だよ! 脳梗塞なったみたい!」 夫に叩き起こされたのは2/1の早朝、5時過ぎのことでした。 聞けば、夜中から脚が痺れてきて腿まで痺れが上がってきたとのこと。 なんでもっと早くに起こさんのかいっ! 脳梗塞の処置は一分一秒を争うんやぞ! と、即119で「救急です」と手配を頼んで暗澹たる気持ちになっていました。 脳梗塞といえば、父が晩年これの後遺症によって寝たきりになってしまったことが思い起こされたのです。 この時点、まだ50代の夫も同じになってしまうの

    • 人生の事件としての文学フリマ

      「そうだ、文学フリマに参加しよう」 思い立ったのは、売りたい小説同人誌が手元に有ったからです。 この時点で私は同人歴ン十年の化石でした。 と言っても、20代後半~40代前半はWEBでのみ活動していて長らく「紙の本」は作ってはいませんでした。 その私が紙媒体に舞い戻ったのには色々深~い理由が――まあ、一言で片付けると「魔がさした」からです。 この時点で1000部の在庫がありました。いえ、100ではなく1000……「魔」……恐ろしい…… 20代前半の頃の小説本のイメージは「

      • 独りで死ぬことを考えていた女が二人で生きることを考えるようになった件について

         小泉八雲ことラフカディオ・ハーンは、来日にあたって友人から新鮮な感興は即時メモをとっておくように忠告されたという。「これから君の向かう地には新鮮な感興があふれている」しかし「日を追って、それは明確に思い出すことが困難になるだろう」と忠告者の経験に基づく言葉だ。  人と人との深い関わりに至る出会いについても同様のことが言えるかと思う。  出会った瞬間に稲妻に打たれたかのような運命を感じるかどうかは人によるだろう。  ぶっちゃけ私は出会った当初には何も感じていなかったのだが

        • インド映画の話をします。

          バーフバリではありません。 さらに遡る踊るマハラジャの話でもありません。 まあ、インド映画なので歌と踊りはあるんですけど違うんです、昨年、2019年に日本で公開された豪華絢爛スペクタクルな愛憎が火花を散らす超大作叙事詩映画です。「バーフバリじゃないの!?」違うって!バーフバリは一昨年でしょ! さて、件のインド映画、邦題は『パドマーワト 女神の誕生』です。 「知らない」 「聞いたこともない」 「見たこともない」 そんな声が聞こえてきそうですね。 実際、ほとんどの人の目に

        夫の闘病記

          もっと語られていい『トールキン 旅のはじまり』

          不遇な映画の話をしましょう。 現在公開されていて、そして間もなく公開終了します。多分、今週がラスト。 ま、タイトルに書いた映画がそれなんですけどね。 で、予告がコレ↓ https://www.youtube.com/watch?v=g9uL_SnAR4g この予告見て「観たい」と思います? 私は思いませんでした。 またアメリカ映画特有の「無駄なラブロマンスで釣る系かよ」て、正直、予告公開段階では萎えました。 トールキン作品のFanだから、義務感で観に行きました。予告で萎えて

          もっと語られていい『トールキン 旅のはじまり』

          不死の猫は招く~『図書館司書と不死の猫』

          もう五年以上前だったか我が家にはそれはそれは鳴き声のうるさい老猫が居りまして、夜毎おめきながら廊下を徘徊するその猫のことを私は正直好きでなかったのです。が、ある日、私はそいつに名を呼ばれてしまいました。 夜中でした。 胃を壊して何度も吐き戻し、トイレは寒いし普段気にならない程度の臭いも弱った胃にはこたえるしで洗面器を抱えて寝床に戻って息も絶え絶えにへばっていた時、聞こえたのです。閉ざした寝室のドアの向こうから。私の、名を、はっきりと、呼ぶ、おめく、声。 声色は耳慣れたものでし

          不死の猫は招く~『図書館司書と不死の猫』

          『バンブルビー』

           オートボットの「あざとイエロー」ことバンブルビーが主役となったら、ひたすらあざとい話になると思うじゃないですか。少なくとも予告はひたすらあざとかった。ところがどっこい。どっこいでもないけれども、これが、実に胸が熱くなる「思春期」の物語だったのです。  それもヒロインもの。  昨今はヒロイン流行りで、スーパーだったりハイパーだったりする力強いヒロインの活躍が目につくようになってきておりますが、本作のヒロイン、チャーリーはスーパーでもハイパーでもない普通の思春期の女の子。  ち

          『バンブルビー』

          そうだ、ステーキを食べよう『イップ・マン外伝 マスターZ』

           ステーキが食べたくなる映画でした。  チョン・ティンチを応援する立場としては白粥と揚げパンこそを食すべきなのかもしれません。しかし身体はステーキを欲する!  なぜなら、ステーキのためにチャリをとばし、ステーキを食べ損ない、ステーキを皆でたいらげ、一枚のステーキを奪い合い、ステーキが美味しくなる間にげほごほぐぼぼぼげぼっっっ!!!!!!気がつけばそこにステーキ!「牛肉料理なら他にもあるだろ!」て、劇中でも言及されますが、皿の上乗っているのはステーキなのです!  圧倒的ステーキ

          そうだ、ステーキを食べよう『イップ・マン外伝 マスターZ』

          【映画】サスペリア(2019)

          「けして一人では見ないでください」のオリジナル版は未見です(今月末にリバイバルの予定があるそうなので、順序が前後しますが、その際に観る予定です)  前知識が「ホラー」である、ということと、「何かダンス学校?が舞台らしい」「魔女が出てくるらしい」くらいの漠然とした状態で観に行きました。  ホラーというジャンルについて愛着があるかというと、「ホラーとは、そもそも何だろう?」恐怖を主題にしたジャンルであり、受け手の恐怖心を(適度に心地よく)刺激するものだという認識は頭ではあるのです

          【映画】サスペリア(2019)