圏外通信

遠くに雷鳴が響いている

まるで傘を持たずにバスを待っているだけの僕を、睨みつけるように、まだ少し遠いところで、雷鳴が響いている

あっちは明日の方向かもしれない

いや昨日のような気もする

両眼が前面についているおかげで、僕はいつだって前だけに歩いてこれた、きっと今も、この先も

来るもの去っていくもの傷つけたもの触れたもの、捨てたもの

別れを交わせるほど花も咲いていなかったし、笑いを混ぜられるほど、氷は溶けていなかった

ひどい砂利道、詰め込んだ精一杯、自分のためだけの言い訳

錆びたバス停の時刻表にある不満の落書き、勝手に書き足された発着時間、あの時ああしていれば、こうしていればが容赦なく僕を壇上に吊し上げる

脱走と疾走の違いを必死に考えては、すべてがうまくいってる未来に泣きへつらっていた

身勝手なバスが低い雄叫びをあげながら僕を目指してくるのが横目に見えた


ああ、あの漫画持ってこればよかったな、、


きいろの綿がはみ出したボロボロの座席に座る、貸し切り、裏切り

飼ってたネズミは、こんな天気の日に逃げ出したっけ、もう忘れてしまったけど

雷鳴はまだここにはやってこない

追いつかれる前に、今は遠くに、時間に甘えて呼吸ができるところに、行けるとこまで、ただちょっとだけ、ただできるだけ遠くに、いまは、ただ

晴れた隙間から、雨だけが降り出した

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