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5-11歳の新型コロナワクチン接種に関する、小児関連の2つの公益社団法人の見解の相違について。

いよいよ、当地区でも5~11歳に対する新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されます。既に開始した自治体もニュースでよくみかけますよね。
オーシャンキッズクリニック院長の日比です。

該当のお子様をお持ちのご両親は、皆様悩みを抱えていると思います。
予防接種法に基づく「努力義務」は外すとのことですから、なおさらです。
努力義務とは、義務ではないけど、感染症の蔓延防止のため、なるべく接種に協力してくださいね、というお願いに近いのですが、努力でも義務でもないので、どうしたらいいのかわからない方が自然ですよね。いろいろな情報が錯綜していますが、最終的にはご自身で決定する必要があります。

小児科医の間でも、様々な意見があり、しかも時期によって意見は変わりえますが、今日は小児科関連の大きな2つの公益社団法人からの公式見解をお知らせします。

1.公益社団法人 日本小児科学会


日本小児科学会は、小児科学に関する研究と小児医療との進歩、発展をはかるとともに会員相互の交流を促進し、小児医療の充実、子どもの健康、人権および福祉の向上、さらにこれらを社会へ普及啓発することを目的に活動しております。(ホームページより)


2.公益社団法人 日本小児科医会


この法人は、小児の保健、医療および福祉の充実、向上を図るための事業を行い、小児の心身の健全な発達に寄与する事を目的とする。(ホームページより)

2つの法人の違いは、明確にこれと私もいいきれません。私自身も両方に所属しています。目的は小児医療の充実と発展で同じですが、学会は主に疾患の研究や、専門医の育成も行い、開業医の先生だけでなく病院の先生方も多く所属されています。医会は、専門医の育成はありませんが、疾患そのものより、保健・医療・福祉などの医療行政にも視点をおき、どちらかというと開業医の先生が多く所属している印象があります。

どちらも、こども達のことを真剣に考えるゴールは同じですが、こういった微妙な立場の違いからか、小児のコロナワクチンに対する見解が微妙に異なってくると思われます。

3.両者の見解の類似点について

1.発表の年月日
両者とも、2022年1月19日に発表されています。偶然なのか、必然なのか。

2.作成者
小児科学会の提言は、予防接種・感染対策委員会の名前で発表されています。テレビでおなじみの、長崎大学教授の森内浩幸教授が担当理事のようです。小児科医会の方は、特に記載はありませんでしたが、同じく予防接種を担当する公衆衛生分野の先生だと思われます。いずれにしろ、小児科医の中でも、特に感染症や予防接種の専門家が提言しているという特徴があります。

3.感染状況と考慮すべき点
5~11歳の新型コロナウイルス感染症は軽症であるものの、感染した場合の他者への感染リスクの増加や、行動制限が小児の心身に与える直接的・間接的な影響は考慮が必要である。従って、接種の際は、接種医と養育者がメリット・デメリットを理解する必要がある。

4.ワクチンの効果
5~11歳に対するワクチンわが国におけるデータはない。海外でもオミクロンに関する効果は不明。

5.接種方法
集団接種でも、定期接種同様に丁寧に問診を行うこと。接種前後は慎重に観察すること。成人よりも前後の細かな観察が必要。

6.優先接種すべき人
こども達よりも先に、周囲の成人への接種を優先すべき

4.両社の見解の異なる点

接種の意義についての表現

小児科学会・・・「12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種と同様に意義がある」(ただし、捉え方によっては、成人と同様の意義はないとも捉えられます)

2歳未満や基礎疾患のある小児においては重症化リスクがあることが報告されている。海外では、5~11歳に対するワクチン予防効果は90%以上と報告されているものの、オミクロン株への有効性は不明。
副反応は、16~25歳の人に比べて少なかった。


小児科医会・・・「成人・高齢者への接種と同等ではない」

本ワクチンは、個人医療機関(主に開業医)において、予約、受付、接種、経過観察、事後措置において人的・物的・時間的負担が成人接種とは比べもものにならないほど大きい。現場のひっ迫や混乱により、他のワクチンに影響を出ないようにすべきである。

もしかしたら、タイトル写真のように、同じものを違う方向から見ているのかもしれません。

5.結局何がいいたいのか

やはり、諸外国のデータから安全性や効果には一定の評価は与えられるけど、発表した時点では日本でのデータが乏しく、はっきりしたことは言えないということでしょう。特にオミクロン株については、さらにワクチンのデータが不十分です。未知のものは、誰しも打たなくてもいいものであれば、打ちたくはありません。しかしながら、現在小児にも感染が拡大しているのは事実です。軽症者が少なくても、感染者数が増加すれば、一定の割合で重症化する数も増えてきます。少なくとも小児に接する機会の多い成人は接種を推進という立場は共通ですし、行動制限が長期化するなら、心理的側面も考慮して接種を検討するというニュアンスも感じます。確かに、コロナが怖いから打ちたいと言うお子様もみえます。

病院の先生方も多い小児科学会は、入院例も重症患者もみていることでしょうから、やや推奨派。小児科医会は、多くの軽症患者をみる開業医が中心のためか、やや慎重派。そんな印象を受けました。どちらが正しいとかではありません。立場の違いから、見る方向の違いだと思います。どちらも、こどものことを真剣に考えての結果です。

この2つの見解から私が感じたことをまとめます。

1.基礎疾患のない健康な5~11歳のお子様で、同居の家族にも基礎疾患を有するお子様や成人の方がいない場合は、あわてて接種せずに様子をみる。十分なデータが出て、接種の有効性が明らかになれば接種を考慮。

2.基礎疾患を要するお子様は、早期に接種を考慮。先日、基礎疾患を要する10歳未満のお子様が不幸にもお亡くなりになりました。基礎疾患は、以下のものが該当します。

3.子育て世代やこどもと接する機会の多い職業の成人は接種を考慮。両親が未接種にも関わらず、先にお子様を接種するのは順番が異なりますのでおすすめできません。2歳未満のお子様がいる家庭や、高齢者と同居の成人の方は、特に先に接種を検討したほうがいいかもしれません。

最後に確認しますが、接種は自由意志です。かかりつけ医と相談し、ご自身で納得できる答えをみつける参考になれば幸いです。今、決められないのであれば、様子を見る。不安だから、早めに接種。不安だから、接種しない。どれも正解ですので、全て尊重したいと思います。


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