見出し画像

芋虫「さきこ」伝ーキアゲハが教えてくれたいろいろ④

夏到来。

アゲハチョウの季語は夏。
ブログの間隔がこれだけ空いて季節が変わってしまった。
さきこファンのみなさまお元気でしょうか?

その間、たくさんたくさん書きたかったことがあるけれど
一つ、皆さんにお知らせすると、
7月18日さきこは息絶えてしまいました。
やっと、心の整理がついたのでブログを書いてみます。
長くなっちゃうけれど、最後まで読んでいただけると光栄です。

これまでのブログ
第一回第二回第三回

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いい大人になって、芋虫1匹死んだだけでこれだけ泣くなんて
子供のころの自分から見たら考えられまい。

さきこは丸々と大きくなって、本当に可愛かった。
前日まで、もりもりと茎を食べるさきこが
マイクにしゃぶりつくアメリカのロックスターのように見えて、
セックスピストルズの音楽とかをかけながら
「さきこ凱旋ライブだー!」とか言って大いにはしゃいでいた。

画像1


ところが、朝、目が覚めるとさきこはどこかから落下し、
そのまま横たわって息も絶え絶えになっていた。

キアゲハが蛹化するときに落下ということはたまにあるということだった。

ただ、普通と違うのはサナギになりそうでなれず、
蛹化が中途半端に始まったせいで、
足が麻痺してしまいずっと横たわったまま。
そして最終的に2日間もの間、さきこはずっとずっともがきながら飲まず食わずでずっとずっと、「のたうちまわる」という言葉のお手本のように
のたうちまわっていた。

「さきこー!!」

耳元でいうと(耳はないのだが)
体をこっちにむけて苦しい、助けてと訴えてくる。
体液が目からも出てしまっていて、本当に泣いているように見えた。

2日間もの間、もがき続けさきこの体は半分になった。
それでもさきこは最後まで諦めなかった。

今、思えばごっつええ感じのコントのような展開で
芋虫に向かって涙ながらに蘇生を2日間もの間訴えつづけていたと思うと
笑えてくるところもあるのだが、
あの時のさきこの苦しみ方を思い出すと言葉にはならないものがある。

最終的に横たわっていた体を自力でうつ伏せになり
体制を整えて本当に綺麗な形になって息を引き取った。

たかが、

虫なのに、

なんて気丈なんだ


虫なんて、あっという間に死んでしまうと思っていた。
でもさきこの「生きたい」という執着に心底驚いた。

さきこを見つけてから、本当に楽しい日々だった。
偶然我が家にきたさきこを、見つめ続けることは癒しでもあった。

蝶のことも、詳しくなった。
論文もたくさん読んで
生態系や蝶の歴史、農薬のこと、植物のことなど私はさきこから
本当に多くのことを学んだ。

本当はもう少しその学びをブログにアップしたかったが
その前に、さきこは力つきてしまった。

最後に、どうしてもさきこの「もがき」が異常すぎて
いろいろ調べた結果、「脱皮阻害剤」というものがあるというのも知った。

脱皮をする虫(甲殻類もしかり)に対して、脱皮する際に
体に異常反応させて殺虫するというものだった。

しかもこれは農薬散布ではなく肥料として巻かれているらしい。
つまり無農薬でもそれが入っている可能性はあるのだ。

脱皮をしない人間には影響はほとんどない。

さきこが、これに該当するのかどうかは芋虫の病院に行ってないのでわからない。
ただ、こういう薬が世の中に存在することに驚いた。
人間って、残酷だ。。。

もともと、キアゲハの孵化率は0.6パーセント程と言われているので
さきこもそれまでと言ったらそうだ。

脱皮阻害剤じゃなかったとしても、コンクリートで固められた都市に住んでいる以上、今まで計り知れない虫たちを犠牲にしてきた。

じゃあそれまでの虫たちと何が違うのかって、
私の勝手なる愛情以外のなにものでもないのだ。
そんな時だけ、人間のやった行為を批判するのもなんだか違和感もあった。

私が目を向けたいのは、さきこという存在を通して
そしてこのブログを通して人の本質的な温かさだ。
コメントや声をかけてくれる人たちは本当に優しい。

社会のこと、自然のことを考えると人間の愚かさに気づく。
でも、それだけじゃないということも同時に考えないといけない。


人間は優しい心を持っているということを忘れてもいけないし
そこを諦めてもいけない。

芋虫さきこが最後に教えてくれたことは
命の尊さと人間の優しさを信じることだった。

ダメになっていくことばかりじゃない。
愚かなことばかりじゃない。
人が持っている優しさをつなぐことで、きっと何か見えてくると思う。

ということで、みなさまがいたおかげで、私の世界が沢山広がりました。

このブログを読んでくれた方々に心より感謝の言葉を述べたいと思います。
本当にありがとうございました。

追伸:
このブログを書いたことでお声がかかり「害蟲展」
ファシリテーターのお仕事もいただいた。
さきこがすごいのは、自分の餌代は自分で稼ぎ私の財布まで潤したという結末だ。
さきこ、本当にありがとう。
天国にいって蝶になってくれたらいいな。





















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?