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「平成」という永い修業を経て、「令和」への全力疾走

「平成」は僕にとって長い下積みと修業期間だったなぁと思う.やらないといけないことがたくさん見えているから書き留めておきたい.今月は「令和」を迎える準備期間だ.

「昭和」の終わりの1987年に生まれて,ゆとり世代と言われて育ち,「平成」の終わりにメディアアーティストとして活動し始めて,「平成」の終わりに学位を取って,「平成」の終わりに国立大でラボを持ち,研究開発の会社を経営し,分野縦断的な国プロを始めてその研究開発の社団法人を立ち上げた.

ずっと自分の才能と価値を時代において最大化し,人類に貢献するために準備してきた,ある意味で「社会に入場する」準備をしていたような気がする.いろいろな「実績を解除する」感覚で見えるものが変わっていくのかを確かめながら生きてきた.

列挙すれば結構濃い日々を送ってきた平成の終わりだ,といいつつパッとやってきたことや実績が思い出せないし抜け漏れも沢山ある.いつも多くの人に支えられて足を向けて寝れない方角が多すぎるので最終的には立ったまま寝るようになるんじゃないのか.

アートでは大学の在学中からメディアアーティストとして活動し始め,毎年個展を開催しながら,マレーシア・クアラルンプールの大規模個展やオーストリアリンツでの展示,東京でのいくつかの個展などを経て,メディアアートの最高賞であるアルスエレクトロニカに入選したり,EUのStartsPrizeにも二度入選した.作品もギャラリーで販売するようになったし,写真集も上梓した.Sekai No OwariやOne OK Rockや多くのアーティストとコラボレーションプロジェクトも行ったし,SXSWの日本館では統括ディレクターもして賞も貰った.耳で聞かない音楽会や変態するオーケストラの演出などをやりながら,自分の表現を探す下積み期間が続いている.書ききれないほど色々やってきながら,自分の色を探してきた.

研究では博士を取るまでにトップカンファレンスにペーパー書いたり,PIになってからもSIGGRAPHはUISTやCHIにペーパー書きつつ,CRESTのプロジェクトを研究代表で始めたり,いろいろな学会でベストペーパーもらったり,賞もらったりした.ショートやポスターまで含めれば着任してから120報程度書いたことになる.2015年にはワールドテクノロジーアワードもらったし,Laval Virtualは3年で4回賞もらったし,ザンガレンシンポジウムとかグローバルシェイパーズとかに選ばれつつ,2017年には准教授になって研究をスピンオフしたピクシーダストテクノロジーズでも産学連携の共同研究をし始めた.これもまた,壮大な下積みを続けている.だんだん波好きが際立ってきた.

教育では学生さんが4年で10回学長表彰もらったり,ベストペーパーもらったりトップカンファに学部生にフルペーパー通させたり,アジアデジタルアートアワードやEU StartsPrizeやメディア芸術祭にも入選させていただいた.学長補佐を務めたりもしたし,デジハリと大阪芸大で客員教授もした.筑波大で通算で70人程度の学生さんを指導したし,近いうちに指導した博士もやがて博論を書くだろう.これもまた,まだまだ道半ばの下積み感がある.

起業ではピクシーダストテクノロジーズは成長を続けていて,日本初の産学連携の仕組みを立ち上げたり,大規模な資金調達をしたり,多くの大企業と共同研究や共同開発の事業を進めている.やがて大きなリリースを出せるよう頑張っている.ただまだ道半ばのベンチャー経営者である.xDiversityの社団法人も乙武プロジェクトをはじめとして多くの興味をもってもらえるプロジェクトが増えつつある.

発信ではレギュラー出演する民放とネット番組とラジオをこなしながら,twitter, facebook, instagramなど含め40万人のフォロワーの方々に日々情報発信をしながら,本も9冊書いた.合わせて70万部を超えてまだ発行部数を伸ばしているが,ここももう一息の道半ばである.書ききれないけれど多くの人に支えられながら発信している.

公共には内閣府知的財産ビジョン専門委員,東京都ビジョン懇談会メンバー,厚生労働省未来イノベーションワーキンググループ委員,内閣府ムーンショットのビジョナリー委員などを行いながら,小泉さんと平成最後の夏期講習をやったり,様々な社会貢献をするための活動をしている.

自己認識ではどれも道半ばで,大きな目的を達成する下積みのために平成を使ってきたなという印象だ.ひとりの人間として生まれ持った才能と天命を社会に生かしていくこと,今の社会だけでなくて遠くまで含めて視座を残して行くためのプロセスにしか過ぎない.言ってみれば自分はひとりのアーティストで研究者であることは変わらなくて,その洞察と感性を深化させていくためにさまざまな挑戦をし続けるのだろうと思う.「自分にしかない視座を作るためのプロセス」を行い続けてきたのだ.その中で数多くの人に出会い,かけがえのない時間を共有し,有難い幾多の協力の中で自分が生かされていることを日々感じている.ここから先は,やってきたことを一気通貫して変化を生み出すフェーズだ.

だから実績を解除することはもうあまり興味はなくて,やっとやりたいことができる仕組みづくりが完了してきた時期だ.感性の赴くままに自分にしか見えないものを作って生み出すこと,ビジョンと仕組みの二輪を突き詰めていくのが自分の持ってるものを活かしきるのに必要なことだと思う.つまり,現場とビジョンをテキパキとループする生き方をさらに加速させていきたい.

自らに令を告げ,手を動かしながら調和を作っていく時代だと思う.ルールを作り,調和を生み出し,コードによるルールと自然とテクノロジーの調和が見えることを祈りながら,天命を生かせるように今月は準備を重ねていきたい.

追記: 年号の感想としては「爽やか」だと思う.令月のよく爽やかな感覚,春の爽やかさ,風和らぐ爽やかさ,梅の花の爽やかさ,欄の香りの爽やかさ,色々な爽やかさがある.令=よい+コード,和=調和+サステナブル,文化と爽やかさの同居は,泰平かつ事なきを美徳とするよりも爽やかな新しさを感じる.

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落合陽一が「今」考えていることや「今」見ているものを生の言葉と写真で伝えていくことを第一に考えています.「書籍や他のメディアで伝えきれないものを届けたい」という思いを持って落合陽一が一人で頑張って撮って書いています.マガジン開始から2年以上経ち,購読すると読める過去記事も800本を越え(1記事あたり5円以下とお得です),マガジンの内容も充実してきました.

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