見出し画像

パズル60(2次小説:類つく)

〜楓〜

2人を見送った後、あの映像を他の部屋で見ていたもう1人の人物を訪ねた

トントン
「はい」
「失礼するわね」

扉を開けると目を真っ赤に腫らした花沢護さんが立ち上がり
「楓さん…ありがとうございます。類は?」
「今、見送って来たわ。早くつくしさんに会いたいって晴れやかな顔を
していたわ。でも…あなたには少し辛い映像だったかしら?」
「いえ…見せていただけて感謝します。あんな酷い仕打ちをした私の事を
『優しい人』だと言ってくれた彼女に驚きました…私はあの2人にどうやって
償えばいいんでしょうか?
なぜあの時、類の言葉をもっと聞いてあげなかったのか…つくしさんを財産目当ての娘だと思ってしまったのか…
後悔しても仕切れないです。私はバカな男ですよ…

白井が調べた調査で司君と牧野さんが付き合っていた事も知りました。
あなたも随分と反対されていたし、司君が彼女の記憶を失くしてNYに
行ったら今度は類と付き合い始めた。白井に類が騙されていると言われ
私もそう思った。類を海外に出張させてその間に金を渡せば別れるだろうと
最初は思っていたのですが…それでは甘いと言われあの計画を実行しました。
でも…類は彼女を探し続けた。寝る間も惜しむように探す息子の姿に亜里沙も
「白井さんの提案を断れないのか?」と聞いて来ました。私も迷い始め
彼の『最後の頼み』を信じ類を騙す様な形で式場に連れて行きました。
本当にバカな事をしたと思っています」

彼はまた涙を零しながら話し続けた。彼の懺悔の言葉を私は黙って聞いていた

「楓さん…ずっと不思議だったのですが、いつからつくしさんを守っていたんですか?彼女の監禁場所も早い段階で突き止めていましたよね?」
楓「私も昔あの子を溝鼠と蔑んだわ、彼女の記憶だけを司が失くした時は清々
した気分だったけれど…司は酷く暴力的になって手がつけられなかったの。
『司はどうしちゃったのかしら?』タマに嘆いたら…『昔の坊ちゃんに戻っただけですよ。つくしと出会う前の坊ちゃんは今と同じでした」そう言われたの…
ハッとしたわ…それで私も考えを改めてたの。司の記憶が戻ればきっと、彼女を探すだろうって、それから彼女には気づかれない様に見守っていたのよ」
「そうだったんですね…」
「えぇ ですから類君とつくしさんが惹かれあっている事も報告が来ていたの。でも司の記憶は戻らないしどうする事も出来なかったわ。報告だけは続けて
もらっていたからあの日の異常にも気付けたのよ。以前も話したけれど、あなたがそこに絡んでいたのを知ったから私は類君にも居場所を話さなかったの。
昔の自分を思えばあなたの気持ちも理解は出来たし…その間に司が記憶を戻して
くれたらって欲もあったのは認めるわ」
「あなたの判断は正しかった。あの時、類が救出していたら白井は今度は牧野さんの命を狙ったでしょうから。あの犠牲になった女性の様な目に牧野さんが
合っていたらと考えると震えが止まりません。犠牲になった女性には知らなかったとは言え私にも責任があります」
「白井のあのマンションもあなたが処分して遺族に償ったのよね」
「それで許されるとは思っていませんが、残された家族を見守っていこうと
思います。」
「そうね。つくしさんには彼女の事は伏せているの、優しい彼女が知ったら自分を責めてしまうでしょう。」
「はい。あの家族も詳細は知らされていなかったようなので話していません。
母親は海外で交通事故に遭ったと聞いた様です。それで良いと思います」
「えぇ。亜里沙さんも随分元気になったと聞いているわ。」
「毎日、リモート電話で話していますが類の姿を見れる事でリハビリも頑張れると言っています。楓さんのおかげです、ありがとうございます」

「つくしさんも類君の事故を知った時は亜里沙さんと同じような状態だったわ。つくしさんが海に入って行くのを見て司は無意識に彼女を助けに海に入って行って記憶も戻ったの。正直、私はつくしさんと司が結ばれて欲しかった。
翼もつくしさんを母親のように慕っているし…でも類君は記憶を失くしても彼女に存在をアピールしていたのよね…司は完敗だわ」
「あの2人の絆は誰にも裂ける事は出来ないんですね…私のせいで遠回りをさせてしまいましたが、幸せになって欲しいと心から思っています。
楓さんは類の気持ちも考えてくださり、この様な形をとってくれました。
皆さんがあの2人を捕らえてくれなかったら類は探し出して復讐を考えたかもしれません。私も含め、それだけの罪を犯しているのですから…でも類を犯罪者には
絶対にさせたくない。ここに着いた時の類は憎悪で包まれているようでした。
でも…つくしさんのおかげで全てが吹っ切れた様な顔になった。
皆様のおかげです…本当にありがとうございます」

「みんな、つくしさんの笑顔が好きなの。その笑顔を引き出せるのは類君でしょう?そのために力を尽くしたの。あなたもわかるでしょう?」
「はい…いつか許されるなら彼女の前にひざまづいて謝罪したいです。
そしてありがとうとお礼を言いたいです」
「きっと、会える日が来ますよ。つくしさんが類君の氷の心を溶かしてくれるわ。待ちましょう」
「はい」
彼の涙は止まらない…

「私がこの島に来るのはこれが最後でしょう。護さん、あなたは最後まで
見届けて下さい。白井が動けるようになって娘に会いに行った時、どうするかは
彼に任せましょう。おそらくあの子は反省もしないでしょうけどね
全てが終わったら、あなたも新しい人生を生きて下さいね。」

「ありがとうございます。責任を持って最後を見届けます。
そして…類達に会える時に恥ずかしくない生き方をしたいと思います。
この島を提供して下さったウォルトン氏にも感謝しています。
よろしくお伝え下さい」

私は彼の部屋を出てそのまま島を後にした。滋さんが用意してくれたセスナで
ドバイに向かい、今回の成功の祝杯をあげる予定になっている

護さんから作戦終了の連絡とDVDが届いたのはそれから2週間ほど後だった。






花より男子の類ファン、原作の切ない類を幸せにしたくて類スキ向けにお話を書き始めました。老化防止の為に妄想を巡らせるおばちゃんです。拙い文章ですが応援していただけると励みになります。よろしくお願いします