2023.9.17 TWAドイツ
2023年9月17日(日)、ドイツ・ロットヴァイルでステアクライミング大会が開催されました。
エレベーターの点検施設として建造されたものとは思えない、曲線美がそそられる通称「白いチュロス」には、エリート部門から消防士部門まで活気溢れる大会でした。小山の苦手な距離でもあるミドルレース「TK Elevator Towerrun」の様子をお楽しみください。
https://towerrun.tkelevator.com/infos_en/
大会概要
【会場】TK Elevator
【高さ】232m
【階数】29階
【段数】1,390段
【参加人数】400名
【参加国】ドイツ、オーストリア、ベルギー、デンマーク、イタリア、スロバキア、ポーランド、チェコ、フランス、日本など
1人ずつ24秒ごとのウェーブスタート。スタートから40mのアプローチを経て階段へ入る。
階段は非常にシンプルで、室内へ入ればフィニッシュまで階段以外なにもないコース。しかし前半区間は1フロア上がるのに踊り場を4-5回通過しなければならず、加減速が多く発生するコースだ。表示は29階とあるが、踊り場の回数だけで考えると70階相当。
出場選手
この大会はTWA(Towerrunning World Association)のワールドツアーに位置づけられている。地元ドイツ選手は強豪揃いで、国別世界ランキング2位につけるマンモス部隊。
中でもChristian Riedl選手はドイツの英雄とも称され、TWA世界選手権での優勝経験がある強豪中の強豪。12時間の階段登りギネス世界記録保持者でもある。
更にはベルギーのOmar Bekkari選手はVWCワールドシリーズの常連。果敢に前半から攻めるスタイルで有名。他にドイツ勢のAndreas Fruhmann、Gorge Heimannはこの道数十年の大ベテランだ。
ドイツの壁が立ちはだかる中、一矢報いたい日本選手たち。階段王になる男・渡辺良治選手は優勝を目指す。前週に0.11秒差の死闘を繰り広げた加藤浩選手は小山の24秒後にスタート。
負けられない、負けたくない戦いが始まる。
作戦
6月に優勝した東京タワーでのレースプランがハマっていたことと、8分を超えても走り続けられるパフォーマンスは備えていると感じていたので、前半から終盤までゆったりのっそり走り続ける作戦。
踊り場が多く何度も回されるが、そのぶん回復区間も多いので、踊り場で最短歩数を意識することと、階段区間は走ることを徹底した。
過去の成績上、この高さになるとトップ選手には2分近く離される。加藤浩選手が24秒後にスタートを切ると、想定では20階付近で追いつかれる。背中に着かれても、引っ張る形で逃げ切りたいところ。
◎10階(高さ90m)まで3'20"
◎20階(高さ86m)まで6'40"
◎29階(高さ56m)まで8'40"
ペースメイクには絶対の自信がある。このタイム想定で行くと決めたら、ある程度のコース情報があればだいたいその通りに登れる。とくに今回はコンディションも良く、前半区間は孤独との戦いともあって集中できる環境は整っていた。
①スタート〜10階
これ以上ないぐらい落ち着いて階段へ。コースの下見もしていないので、10秒程度で階段に身体を慣らす作業から始める。
段差は16.5cm程度(感覚値)と低く、踏面もやや長め。思っていた通り走れるコースだ。手すりの形状は四角で握りにくく、腕を振りながら触る程度で登ることにした。
3階あたりからリズムを掴んできた。1階登るのに20秒程度かかるので、10階の通過は概ね3分20秒。前半1分も経たないうちに感覚を掴めたのは大収穫。
◎10階通過 3'19"
②10〜20階
このレースのハイライトは15階付近で訪れる。
13階あたりで下から荒々しい呼吸音が聞こえ始める。15階あたりからは足音が大きくなった。ちらっと下を覗くと赤いウェアがちらちら見える。間違いない、ヤツだ。
急に不安になった。1人で登っているとペースの比較ができないので、自分がどの程度のペースで登っているか分からなくなるときがある。
一瞬の迷いもあり「後半への備え」として3階ほど歩きに変えた。
スローペースで入ったぶん、心に余裕はあった。冷静に考えながら、残り10階、走り切るために奮起した。
◎10-20階通過 6'40"
③20〜29階フィニッシュ
そろりそろりと下を覗くと、そこにヤツの姿はなかった。どうやら尻尾巻いて逃げたようだ。
23階を過ぎると、これまで4-5回ほど回された踊り場が通常の2回に変わる。ここまで来たら振り絞って出し切るだけだ。
これ以上ないラストスパートでフィニッシュまで駆け登った。その数十秒後、加藤浩選手が疲弊し切った顔で飛び込んできた。そこにヤツの姿は無かった。ヤツは何処へ。
結果
8分28秒 総合8位
自分史上最も安定し、最もラストスパートにキレのあるレースだった。
区間ごとのタイム
①スタート〜10階 3'19" 2.21"/m
②10階〜20階 3'21" 2.33"/m
③20〜29階 1'48" 1.92"/m
総合では渡辺良治選手が2位。女子は立石ゆう子選手が優勝の快挙!
加藤浩選手は15位、階段が本業でここ最近スケートでも頑張ってる戸取大樹選手は19位。女子では原田知華子選手が14位。
前週のオーストリアでは短距離の強さを証明した日本選手団。少し距離が伸びると全体的な順位も下がるので、まだまだ伸び代ですね。
次のレースも頑張ろ。
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