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無駄な時間って大事だなという話

Zoom会議が味気ないなぁと思うのは、会議の後の余韻が無いからなのかもしれないとふと思った。

コロナ前は、会議室での話し合いが終わってエレベーターまで見送る途中だったりとか、本筋と全く関係の無い雑談をする数分ってのがあったと思うのだけど、そういう何気ない会話こそビジネス関係無しの「人と人」として接する瞬間になっていた。会食とかまで行かなくても、そういう数分の積み重ねで、少しずつ関係性が育まれていた面がある気がする。

でもZoomになると、打ち合わせが終わって終了ボタンを押すと、そこで完全に切れてしまう。打ち合わせの合間に隙間を入れずに予定を組んでることも多いので、時間が来たら即終了、はい次、みたいになりやすい。なので、以前からの知り合いならともかく、無駄な会話をする余地が殆ど無い。人と人としての関係性を構築するのが難しい。だから、Zoomでしか話した事の無い人は、「あの案件の話をする人」というイメージが強く、その人個人としての認識を持ちづらい。

しかし、人と人の関係性が無いと、継続中の案件が終わった瞬間に切れてしまう。その後も、よほど明確で具体的な用件が無いと連絡することもない。人と人の関係性が無いと、新しいことが産まれない。

人が、ビジネス的な利害関係を越えて、個人として仲良くなるためには、「無駄の共有」が大事なのかもしれない。何の生産性も無い、ビジネス的観点からは無駄でしかない時間の共有。

それこそ、タバコを一緒に吸うなんていうのは、無駄どころではなく生物的には有害ですらある時間だけれど、それを通じて生まれる関係性みたいなものが確かにある。タバコを吸ったことが無い人には分からないかもしれないけれど、自分が喫煙者だった頃は、喫煙所に社交場として確かな価値があった。喫煙所での世間話みたいな無駄な時間を長く共有することで、人と人の繋がりが強くなるというのは事実だと思う(かといって、喫煙を推奨するつもりは一切無いし、コロナ禍において喫煙所は超危険な空間なので避けるべきです)。

ただし、無駄な時間を一緒に過ごせば何でもいいという訳ではもちろん無くて、感情を共有してることがとっても重要。例えば、日本の大企業でよくある、「1ミリも存在意義が理解できない超絶無駄会議」とか。あれなんかは、下手したらタバコ休憩以上に社会的害悪だけれど、「あぁ、この時間マジで無駄だわぁ」という想いを共有している人とは、その無駄時間を重ねることで、不思議な仲間意識みたいな関係が強化される面が多少ある。一方で、その無駄会議の張本人である管理職のオッサン(残念ながら男性である確率が極めて高い)は、同じ会議に参加しているけれど、それを無駄な時間だと思っていない。感情を共有できていない。だから、そのオッサンと、無駄会議に付き合わされる部下との関係は、強まるどころか溝が深まる。

飲み会もそう。あれも、「楽しい」という感情を共有する時間であれば、同僚や上司との関係は深まる。その反面、その場を楽しめない人にとってはただの無駄な時間。お酒を飲むという行為そのものに意味があるわけじゃなくて、楽しい時間を一緒に過ごすことに意味がある。信頼関係を築くために飲み会が必要みたいな古い価値観の人は、「お酒を飲む=楽しい時間」が普遍的なことだと思い込んでいるのかもしれない。

とにかく、人と人との関係性を強くするためには、非生産的な時間を一緒に過ごすことが大事なんだと思う。ただし、あくまでその時間が、共感を生む時間であることが重要。どちらか一方が楽しんでもう一方がつまらなかったり、ぜんぜん共感ができずにお互いが嫌いになるような相手だと、それはただの最悪な時間であって、関係性が強まるどころか、かえって距離が生まれる。必要なのは、共感できる時間を一緒に過ごすということ。

面白いのは、必ずしも楽しいという感情を共有している必要は無くて、無駄な会議を招集する上司みたいな共通の敵がいたり、飲み会で騒ぎ散らす酔っぱらいのカラミを一緒に耐えたりすると、ネガティブな感情を共有する時間であっても仲間意識が育まれたりする。

ここで冒頭のZoom会議に無理やり話を戻すと、コロナ前の直接会っての会議のような、本題が終わった後、書類や名刺をカバンに入れたり、エレベーターホールに向かったりしている間の数分に話す、可もなく不可もなくの世間話は、ポジティブでもネガティブでもないけれどフラットな感情を共有する時間だったのだと思う。無理に楽しませる必要はない。ただ何となくのお喋りで時間を共有することが、個人と個人の関係を築く上でとても重要だった。

Zoom会議になって、会議後の数分という時間が無くなってしまった今、いわゆるアイスブレイクと呼ばれるような、会議で本題に入る前のちょっとした雑談というのが、とっても大事な無駄な時間になったということなのかもしれない。

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