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#0103 釧路駅高架化に対するモヤモヤ

2月21日(水)「第3回釧路都心部まちづくりフォーラム」のYouTubeライブ配信を傍聴していました。

本当は現地を訪れてチャンスがあれば登壇者や行政の皆さん、会場にいらした方々とも意見交換をしたかったのですが、会社の仕事が山盛りでライブ配信を傍聴していました。本当に無念でなりません。

釧路駅高架化やウォーカブルなまちづくりなどの構想は、報道や釧路市の公表資料で拝見していましたが、資料から色々なことを想像しながら、時に肯定的に見たり、時に否定的に見たりを一人で繰り返していました。

それでも一貫して引っかかっているのは、費用対効果の面で、1時間に1-2本しか通らない鉄道、人口が減少して間違いなく今よりも交通量が減少するのに釧路駅高架化は必要なのかという点です。とくに総事業費200億円ともいわれる本事業。駅舎や周辺施設を民間に貸すといっても、一体何年で回収する想定なのか、この辺りがクリアにならないと、我々の世代が次の世代に負の遺産を残すことになってしまうので、それだけはしたくないと思うのです。

今回のフォーラムでは、このお金の話まで広がりませんでしたが、主に「プレイスメイキング」「ウォーカブル」「クルマ中心からヒト中心へ」をキーワードとしたまちづくりの在り方を先例を交えながらご紹介いただき、具体的に釧路駅前や北大通を思い浮かべながらどんな未来が描けるかを考えることができました。釧路市のホームページや報道だけではわからない、構想の意図や世界がどのような価値観で動いているかなど勉強になりましたが、ずっと前から抱いていたモヤモヤをまずは書き残しておきたいと思います。(2955文字)


〇JR北海道は乗り気なのか?

本件について、JR北海道の声がなかなか聞こえてこないのは、以前から気になっていました。釧路市や地元財界などは盛り上がっているのですが、どうもJR北海道から釧路駅をどうしたいかというのが聞こえてこない。

更に気になるのが、釧路駅は「民衆駅」であるということ。所有者はJR北海道?釧路ステーションビル?まさかここも共同所有?所有権のことを触りだすと、釧路で廃墟になってしまっている建物をことを思い出してしまい、抜け出せなくなるのでこの辺にしておきましょう・・・

とにかく、駅舎のメインユーザーたるJR北海道の声も取り入れてもらいたいし、老朽化で困っていて釧路駅を盛り上げたいと思ってくれているのなら主体的に動いてくれて良いと思うのですが、そのようなアクションが見えてこないとなると、残念ながら釧路駅を重要視していないのではないかとさえ思ってしまいます。

同社の業績が大変厳しい状況にあることは、報道で知る通りですが、道内唯一の民衆駅であることの価値や、SLやノロッコ号などの観光資源などを核とした新たなビジネスチャンスがある地域として「釧路」を評価して貰い、こちらに振り向いてもらわないといけないのではないかと思います。

もっと言うと、本事業は釧路市とJR北海道の官民連携事業です。さかのぼると民衆駅の開発も国鉄と民間の官民連携事業です。当時は国鉄が主体的に動いて民間の資本を集めていたと聞きます。現実的に当時のような熱量がJR北海道にないのだとすると、「うちは駅舎にはテナントとして入れば良いから好きにして」と言ってもらえた方が気持ちが良いですよね。

個人的にはJR北海道の声が聞きたい。釧路駅をどう思っているのか知りたいというところです。

○お金の問題

JR北海道は北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールド北海道」新駅の開発には積極的です。恐らく、北広島市、球団ともよく連携が取れていることがプラスになっていると思いますが、お金の問題もあると思います。エスコンの方は、札幌都市圏であり一定の集客も見込めるので、投資回収の目途も立てやすいのでしょう。

そういった意味では釧路駅高架化は、想定の総事業費までは報道で出ていますが、まだ現実的なお金の話までは聞こえてきません。釧路駅高架化には、国も補助金を出すと言われていますが、JR北海道も相応の負担をすることになるでしょう。そうなると当然に費用対効果の問題が出てくるはずです。国の支援も受けているわけですから、必然的に査定も厳しくなるでしょう。

仮に総事業費200億円を20年で回収しようとすると、単純計算で年間10億円の売上がないとダメ。年間10億円というと最盛期の釧路ステーションデパートの売上高に相当します。20年後の釧路市の人口推計は約13万人、一人あたり年間7,600円買い物してくれる計算。

これでやっと投資回収ができるという話で、実際には開業した後の維持管理費なども発生します。定期的な修繕に必要な資金も積み立てておく必要があります。おそらく年間億単位のランニングコストがかかるのではないかと思うので、それを賄えるほどの売上を確保しようとすると、テナントの家賃にも跳ね返ってきますし、高い家賃なら誰も入らないので、200億円を使って廃ビルを建設するという最悪の将来も想像してしまいます。

ちなみに総事業費200億円とすると人口15万人で割って一人当たり13万3000円です。一人13万3000円負担して釧路駅高架化しますか?ちゃんと賑わいが創出できて投資回収ができれば良いですが、バブル期のMOOでさえ大変なんですよ。13万3000円払って不良資産残しますか?とも思ってしまうんですよね。

言い方を変えると、入会金13万3000円、年会費7600円で高架化した釧路駅、みなさんは使いますか?と考えるべきなんじゃないかなと思うんですよね。難しいなと考えるなら別な方法を考えないといけない。

私はこうした悪夢を再び起こさないためにも、従来型の公共事業ではなく、民間の金融や経営ノウハウを取り入れた官民連携で行うのが良いのではないかと思うのです。

シンプルに考えると、事業をバランスよく遂行するには、投資額を抑えるか、リターンを大きくするかですが、官民で両方を取って出来るだけ投資を抑えて、リターンを最大化させるという知恵を絞るわけです。従来型の公共事業では、補助金が交付される基準をクリアしようとする力学は働きますが、作ったあとの収支やリターンについてはあまり考えられません。

これからは、頑丈な鉄を作る為に鍛冶屋が鉄を叩くようなプロセスが要るのではないかと思うのです。

私は金融畑なので、金融にフォーカスすると、釧路駅高架化事業を行う特別目的会社(SPC)を設立して事業計画を策定し、必要資金を、地元の信金、地銀、そして民都機構などからプロジェクトファイナンス方式で調達するのです。金融機関は、釧路駅高架化事業で発生するお金に依拠した評価を行うので、SPCが策定する事業計画にリアリティがあるのか、貸したお金がちゃんと返ってくる事業なのかを厳しく査定します。金融機関は事業主体であるSPCと何度も事業計画をキャッチボールして手直しをしながら、ハードネゴシエーションをしていくのです。

よく風呂敷広げ人と畳み人と言いますが、今の段階はぶわーっとやりたいを広げて風呂敷を広げた状態です。今後は、それを実現するために風呂敷畳人である金融との熱い協働作業が必要になってくる気がしています。

こうして鍛冶屋に叩かれまくって強くなった鉄は、頑丈で丈夫な鉄として長く使えるようになります。釧路駅高架も是非強くて丈夫な事業として未来に向かって生きていってほしいと願います!

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