満身創痍ケツカッチン北海道ツーリング
一人で行動するのが好きです。
友達が少ないからそうなったのか、一人が好きだから友達が少ないのかはわかりません。
国外問わず一人旅行もだいすきです。
飽きたり疲れたりすれば帰ればいいし、食べたいときに食べれるし食べたくなければ食べなくていい、そして何があっても自己責任というところが一人旅行のいいところだと思っています。
なのに、なぜかわたしの旅行は、毎回過酷なものになります。
過密なスケジュールを組んでいるわけでも治安の悪い場所を選んでいるわけでもないのに過酷な旅になるのです。
これは、そんなわたしが免許もとりたてバイクも買いたてのほっかほかの状態で北海道ツーリングを敢行した時のおはなしです。
北海道を自分のバイクで走るには、フェリーにバイクを乗せる必要があります。
関東在住のわたしは、茨城県の大洗港→苫小牧のフェリーに乗ることにしました。
居住地から大洗までの所要時間は、Googleマップ様によると4~5時間弱。
わたしの愛車は125cc以下のため、高速には乗れず下道で行かなければならなかったのです。(高速怖い)
大変と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、バイクライダーにとって4~5時間などなんてことはありません。
ただそれは、晴れていたらの話です。
出発日当日は、朝からしとしとと雨が降っていました。
しかも天気予報では、雨足は昼頃までにさらに強まり、最大で7mmの雨が降る予定です。
しかしフェリーも宿も全て予約済み。行かない選択肢はありません。
(危ないので、乗らなくていい人は本当に乗らないでください)
気合を入れて雨具を着込み、駐輪場で荷台に荷物を取り付けていたところ、通りすがりのご年配ダンディに話しかけられました。
今からどこに旅行に行くのかという質問から、実は自分も昔バイクに乗っていたが病気になり生活も苦しくなりバイクに乗れなくなってしまったというまさかのヘビーな話をされ困惑しました。
止まらないダンディのお話。強まる雨足。わたしはよ出発したいねん。
なんとか話を終え出発し、ひたすら下道を走り続けます。
カッパの意味がないほどずぶ濡れになり、体力がひたすら削られていきます。しかも大洗に行くまでの道、走ってても何も楽しくない。
2時間ほど走って千葉某所のココスに逃げ込み、きのこ雑炊をいただきました。沁みます。
そこで服を乾かしつつ休憩をしつつ雨足が弱まることを祈りつつ1時間ほど過ごしました。
粘りましたが雨足は全く弱まることはありませんでした。
わたしは走りながら、もうほとんど泣いてました。泣きながら大洗を目指します。なにこれ。
結局大洗に着くまでに8時間くらいかかりました。なんの試練?
疲労困憊のままなんとかフェリーに乗り込みました。
大雨なので海も荒れています。信じられないくらいフェリーが揺れます。
大きな船なので通常はほぼ揺れないと聞いていましたが、テーブルに乗せたコップが左右にずずず、、と動くほど揺れていました。
布団に横になっても背中に常に波を感じ、フェリーが軋むギギギという音が鼓膜を揺らし続けます。持ってきた酔い止めはバイクの荷物入れに忘れました。
死ぬほど疲れていたのが功を奏してなんとか寝れました。
翌朝、苫小牧港に着いた時は圧倒的な曇天でした。
雨が降ってないだけで幸せです。
支笏湖によりつつ小樽を目指します。小樽までは120~130kmくらいです。
意気揚々と苫小牧港を出て、しばらく経ったところで気づきます。
道路が割れてあらゆる場所がボコボコして穴が開いている!!!
車体が小さいので穴の上を通過する旅に車体がめちゃくちゃ跳ねる。
北海道には何度も訪れたことがありますが、その時は車だったので気づきませんでした。バイクだと揺れがダイレクト体にひびきます。
たぶん、冬の間に冷え冷えになった道路が夏の太陽に暖められて変形し、ボコボコになってるんだと思います。
旅行に行く前に、「フェリーに乗るときにすべって立ちゴケしない方法」という動画は見ていたのですが、これはノーマークでした。
信じられないくらい走りにくい。車体が跳ねるたびに奪われる体力。旅の行く末に一抹の不安。しかし景色は最高。北海道大好き。
次の道順を確認しようとバイクにマウントしているスマホ(ハンドルの左につけていた)を見て驚愕しました。
私はこの旅のためにスマホに挟んで使えるクリップタイプの広角レンズを購入し、それをつけっぱなしの状態にしていました。
広角レンズ無くなってる。
おそらく、ボコボコの道を通った時に車体が跳ねたいきおいてスマホから外れてぶっ飛んだんでしょう。
ということで、初日に5,000円の広角レンズがなくなりました。
支笏湖ではふざけていた男の子が見事に顔から転んで顔面からものすごい血を流しているのを目撃したりしました。お母さんが笑ってティッシュを顔面に押し当てており、母強し、と思いました。
支笏湖は透明度が高くとても綺麗な湖でした。
ここでも圧倒的に曇天でした。
ホテルに着いたのが夜遅く、その日のご飯はファミリーマートでサッポロクラシックビールとソーセージなどを買ってすませました。
サッポロクラシックでなんとか北海道を感じました。
翌日は小樽のホテルから神威岬、そして富良野へというルート。
小樽から富良野へは150kmくらいです。
神威岬は信じられないほどに美しかったです。
近くのお店で海鮮丼を食べました。先にお伝えすると私が北海道で外食したのはこれだけです。
その後の小樽から富良野への移動は、壮絶でした。
北海道の広大な大地から放たれるとてつもない横っかぜ。
相変わらずボコボコしている地面。
信号がほとんどなく、ずっとエンジンをかけっぱなしで痺れる右手。
同じ体制でおかしくなってきた背中。
怪しくなってきた雲行き、そして降り始める雨。
こんな状態で3~4時間走りっぱなし。
満身創痍。ガソリンもわずかになってきた。
そして、何度目かのボコボコでスマホが吹っ飛び地面に叩きつけられました。
バイクを止めて降りてスマホにかけよります。
終わったと思いましたが、ご存命でした。多分都会だったら後続車に轢かれて死んでたと思います。
でも画面はいい感じに割れていました。
ということで2日目にスマホの画面が割れました。
夜はセイコーマートで買ったお惣菜をペンションのお部屋で食べました。
セコマ最高。
翌日は朝から1~2mmの雨でした。
しかし、雨だからどこにも行かないのはペンションのオーナーご夫妻にライダーとして舐められる気がします。
謎のプライドを守るため、適当に行き先を決めて走り始めます。
結果、適当に走りすぎて美瑛の山奥に入ってしまいました。
8月の北海道の山は死ぬほど寒いです。
雨もあって山に霧が出てきました。ほとんど前が見えない。
バイクは坂道の途中でUターンすることができません。(できるかもしれないけどめちゃむずかしい)
私はひたすら前に進むしかありませんでした。
寒いし前は見えないし、これは本当に死ぬかもしれないと思いました。
ぼんやりとした頭で、地球温暖化が叫ばれて久しいなかで、夏でも寒い場所があることに安心感を覚えたりしました。
ということで3日目は美瑛の山奥で死と地球を感じました。
なんとか途中でUターンをし、帰路で見つけた温泉に入って体を温めました。
日帰り温泉OKのギリギリの時間にいったので結構迷惑そうでしたが、温泉に入らないと多分死ぬので無視しました。
温泉から出るとまだ雨が降っていました。また濡れながらペンションに帰ります。
ペンションのオーナーの奥様がとても優しい方で、濡れて帰ってきたわたしに声をかけてくださいました。
「まあまあ!濡れましたね、お風呂沸いてるので入られますか?」
「さっき温泉入ったのでいいです。」
「えっ」
お風呂は1日1回までだと思っていたので断ってしまい、変な感じになりました。
その日もセイコーマートで買ったお惣菜を食べました。
早いもので最終日です。
最終日は今思えばとんでもないスケジュールでした。
富良野→十勝岳→富良野、その後夕張を抜けて苫小牧港へ。
200kmを優に越えます。苫小牧には15時までに着く必要がありました。
十勝岳は素晴らしかったです。鹿や狐にお会いしました。
神の宿る神聖なところとはきっとこのような場所なのだろうなと思いました。
そういえば、ライダーには「ヤエー」という挨拶があります。
バイク乗り同士がすれ違うときに手を挙げて挨拶し合うみたいなものです。(追い抜かすとかもしてくれます)
北海道はヤエーをしてくださるライダーさんがたくさんおり、新米ライダーでしたが仲間に入れた気がして嬉しかったです。十勝岳で馬力がなくてぜんぜん山が登れていないわたしを鮮やかなコーナリングでアウトから抜かしつつ、爽やかにヤエーをしてくださった緑ninjaライダー野のお兄さんはお元気でしょうか。
でもヤエーに慣れておらず、フルフェイス内で「こんにちは!!!」と元気に挨拶を返してしまい、多分無視したと思われたと思います。
その日のわたしはM-1優勝後のコンビの翌日くらいスケジュールが詰まっていて常にケツがカッチンでした。
各所でバイクを降りてのんびりできる時間は10分くらいしかありませんでした。六花亭でとにかく目につくものをカゴに入れて5分でお土産を買い終えた時はなんだか何をしてる人なのかよくわからなくなりました。
バイクを降りる旅にメットを脱ぐ、グローブを外す、それをしまう、という動作が面倒でバイクのまま店内に入りたいと心の底から思いました。
夕張が信じられないくらい広かったです。夕張の山の中でガソリンのメーターがどんどん減っていき、もう一生夕張から抜けられないのでは、夕張は他県から来た人を逃さない地形になっているのでは、と思いました。
数時間余裕を持って出発したはずなのに、どんどん到着時間がギリギリになっていく。なぜだ。六花亭でお土産を買ったり、十勝岳に行くつもりはなかったのに当日の朝に行くことにしたりしたからである。全部自分のせい。
しかしシューパロ湖をたまたま通るルートで、思いがけない絶景が見れたのでとてもよかったです。シューパロ湖は夕張市にある人造湖です。
なんとか夕張を抜けたところで、警察の方が先導している謎のバイク集団がいました。
あまりよくわかりませんが、安全交通週間みたいなので、パレード的な何かをされていたようです。
休憩に入った道の駅で、そのパレードに参加されていたライダーさんたちと一緒になりました。近くにバイクを止めたところ女性の方に話しかけられました。
「さっきパレード参加されてましたか?」
「いえ、してないです」
「係の方に言ったら、誰でもこの記念ペナントもらえますよ!」
「あ、大丈夫です」
「えっでもたくさんあるっていってたから!もらってきましょうか?」
「あ、本当にいらないので大丈夫です!」
「・・」
荷物を増やしたくない一心で断ったのですが、お風呂を断った時と同様、変な空気になってしまいました。
不要であっても相手の好意を受け取るべき時はある。
こうゆうところだと思います。
ところでペナントってなんですか。
そんなことをしてるうちに旅の終わりが近づいてきます。
最後くらいは北海道らしいものを食べようと、苫小牧港にあるらしいホッキ貝のカレーか、北海道的なラーメン屋に目を付けていました。
ホッキ貝のカレーは並ばないといけないとの情報だったため、夕張にいる時点で諦め、すぐに食べられそうなラーメン屋にターゲットを絞りました。
ラーメン屋には14時に着くことができました。
10分あれば苫小牧港につける距離です。ラーメンなら着丼から食べることを考えても20分あれば終わる。大移動で疲労困憊、めちゃくちゃお腹が空いている。
バイクを止めていそいそヘルメットやプロテクターを外し、いざ店へ。
ドアに手をかけたところで貼り紙に気づきます。
午前中のラストオーダーはもう終わっていました。
ラーメン屋は午前午後通してやってくれているものではないのか。
いかに甘やかされて生きてきたかが身に沁みました。
奇しくもラーメン屋の横にセイコーマート。
わたしのセイコーマート。
セイコーマートで何食分かを買い込み苫小牧港に向かいました。
フェリー乗り場で並んでいるときに年上と思われる女性ライダーさんに話しかけられ、なんだか知り合いっぽい雰囲気になりました。
その方はホッキ貝カレーを食べたらしく、輝いて見えました。
夜、フェリー内でその方が他のライダーさんと広場でご飯を食べながらお話をされているのを見かけました。
見つかると誘われそうだったので、違う階に移動して、端っこでご飯を食べました。
こうゆうところだなと思います。
わたしの北海道ツーリングはこうして幕を閉じました。セイコーマートと共にあり続けた旅でした。
この旅の話をすると、いつも(数少ない)友人から、なぜそうなるのか、それの何が楽しいのか、何回セイコーマート行くねん、と言われます。
が、わたしはほんとーーーーーーうにこの旅がめちゃくちゃたのしかったです!!!
何より一番は「疲れた」ですが、楽しかった。
ここに書ききれなかったその他のトラブルもありました。(車体に不備がでて自力で整備したりとか)体は常に悲鳴をあげていました。
それでも、この体験はわたしだけのもので、しんどい思いをして、死にそうになって(全部自分のせい)、でもしんじられないくらい美しい景色を見て、シシガミ様みたいな鹿にお会いできて、飲まず食わずの後のヨーグルッペが体に染み渡って、最高だったんです。
もう一回やるか?と言われたら、やりません。
実際わたしはこの体験の後に燃え尽きて、バイクを売りました。
でもわたしはこんな行き当たりばったりの、苦しくも楽しい旅を愛しています。
体験談は世に溢れていて、簡単に読むことができます。
わたしも北海道ツーリングの体験談をたくさん読んで参考にさせていただきました。
でもそれは誰かの経験でわたしの経験ではない。
100人いけば100人の体験談があって、100通りのことが起きる。
自分がここにいったらどんな旅になるのか、それが楽しい。
一時期、他の人の旅行記は美味しいものを食べたりたくさん観光スポットに行ったりアクティビティをしたり、とても充実しているのにわたしの旅行はなぜ毎回こんな感じになるのだろうか、わたしは旅行が下手なのか!?と思っていた時期がありました。
いまは、自分で体験したことだけが本当の体験だとわたしは思います。
体験は誰にも奪われない一生の財産。
この度でわたしが身をもって学んだことは「北海道の道路は穴がいっぱい開いている」です。
近場の散歩でもなんでも、これからも思いついた場所にいってやって、疲れて帰ってこようと思います。
それではまた。
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