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職業カメラマンはじめました

立ち飲み客をやっていると店員としてスカウトされ、店員をやっている時に来たお客さんからカメラマンとしてスカウトされる。

わらしべ長者方式でご縁があり、幼稚園のイベントに同行して撮影する職業カメラマンになり、昨年は3~4回ほどお供してきた。

書籍「写真はわからない」によると、フォトグラファーは自分の作品を撮り、カメラマンはお客さんが望む写真を撮るらしい。

この定義で言うところの「カメラマン」のお仕事について、経験から学んだことを書く。


専属カメラマンより自分の方が上手い?

子供が幼稚園に通っていた頃、職業カメラマンが撮影したイベント写真が回覧されてきて、「これだったら自分の方が上手く撮れる」と思うこともあった。

そもそもの条件が違っていたのに、調子に乗ったこと言ってた。少し考えてみれば分かることだけど、自分で職業カメラマンをやってみて初めて気付いた。

自分の子供であれば、1日中張り付いて撮ることができる。たくさん撮った中からラッキーパンチが出れば良い。失敗した写真は無かったことにすればよい。

一方のカメラマンは、全員の写真をそれなりに撮らねばならない。流れ作業の中で歩留まりを高めなければならない

ルールの違う種目だと気付かず、調子に乗ったことを言ってスミマセンという気持ちになった。

写真力の半分は撮影対象の領域

料理の写真を撮ろうと思ったら、料理としてイケてる見え方を知らねばならない。

きちんとした現場であれば、フードスタイリストが器・食器・あしらいを整えるだろうけれど、私が呼ばれる現場は気合いの内作。カメラマンも最低限は分かっていなければならない。

自然光で撮ったテイクアウトスイーツ

同様に、旅行の写真を撮るには、旅行に行かねばならない。山の写真を撮るには、登山をしなければならない。そして、保育園児の写真を撮るには、幼稚園児の扱いが上手くできなければならない。

スタイリストが服装の乱れをなおすように、帽子で顔が隠れていたら帽子を上げてから撮らねばならない。目線をもらうために、声掛けをしなければならない。4~5人で写真を撮る場合は注意を惹き続けて全員の意識をカメラに向けなければならない。

怖いおっちゃんだと表情は引き出せないけれど、なめられると思った通りの写真が撮れない。幸いにもクセ強め娘に奔走されてきたので、そこそこ上手く立ち回れたかなと思う。

年少は話が通じなくて難しかったり、年長はマセて言うこときかなかったりで、意外と年中さんが扱いやすいような印象を持った。

売れる写真が良い写真

「良い写真」の基準は様々であるが、職業カメラマンに限定して言えば「売れる写真が良い写真」であることは間違いない。市場原理の働く世界。

親御さんの立場で買いたくなる写真を思い浮かべれば良い。自分の子供が良い表情をしているのはもちろんだけど、それだけの写真であれば各家庭でも撮れる。

それが運動会なのか、遠足なのか、どこで撮った写真であるのか伝わらなければならないので、背景の情報も重要となる。

作品であれば背景をとろけるようなボケさせた写真もアリかもしれないけれど、売れる写真となると背景に責任を持たねばならない

写真を売るために売れない写真を入れる

売るための工夫として面白いなと感じたのが、売れなくても役割として必要な写真があるということ。

具体的には、動物ショーに出演している動物の写真など。親御さん達は動物ショーを観ている子供の写真を買い求めるのだけど、ショーに背中を向けて撮った写真であるため、写真だけでは何をしているところか分からない。

それが、流れの中で動物の写真があると「この動物を観ている我が子がこの表情なのか」ということがわかる。このため、売れない動物の写真であっても回覧することで効いてくる。

カメラのアシスト機能は使い倒す

普段、趣味で撮影する際には、マニュアル撮影でとにかく数を撮る。露出もフォーカスも手で合わせるため、失敗も多いけど撮れると嬉しい。撮る体験として楽しいのでそうしている。

プログラムモードは初心者用だという思い込みがあった。でも、職業カメラマンは普通にPで撮る。歩留まりを上げるためであれば、使えるものは何でも使う。

オートフォーカスも同様。その方が歩留まりが上がるなら置きピンにすることもあるけれど、歩留まりを上げるという目的のもとでは、どんな設定で撮るかは手段でしかない。

私の個人的な課題として、オートフォーカスに慣れなければならない。シャッターを押してから合焦までのタイムラグがあることに慣れず、動いてブレてしまうことが多かった。

Pでも絞り、SS、ISO感度に注意を払う

Pモードではあっても、絞り、シャッタースピード、ISO感度に注意を払ってコントロールする意識は必要。

1枚ずつ調整する負担は減っても、屋内から外に出ればISO感度を変えるくらいの設定は必要。あまりに遅いシャッタースピードになっていないか、被写界深度に入っているかは気を配らねばならない。

失敗談。お弁当のテーブルを囲む写真で、真ん中フォーカスのまま撮っていて左右の子がボケてしまうことがあった。

基本は前ピン。シャッター半押しして手前にフォーカスを合わせたままズラすか、フォーカスポイントを変えて撮るべきだった。また、絞りを見て被写界深度に注意するべきだった。反省。

他:現場から学んだことを

そのほか、現場でご指導いただいたことや経験したことについて列挙する。

運動している子供は全身を撮る

運動会で足で見切れた写真を撮ってしまっていて「運動している子は全身撮れ」とご指導をいただいた。自分の子供を撮っている時は意識していなかったけれど、売るための写真としてNGはある。

他にも、串刺し、首切り(手首とかも?)、目刺しなんかも配慮しなければならない。以下がイラスト付きでわかりやすかった

遠足だと歩いて移動する列に先回りしてカメラを構え、先頭から最後までをザっと撮る。運動会の徒競走なんかも、1度構えた位置で全員が走るのを撮る。NG構図だと被害も大きいけれど、構える際に気を付ければ済む。

子供の目線の高さにしゃがんで撮る

同じく運動会で注意されたこととして、なるべく子供の目線で撮るというのがあった。見下ろすような写真になってしまっていた。これは、意識を向けるという他に、体力的なキツさがある。

徒競走ではなく団体演技の場合、移動して→しゃがんで→撮って→移動して→しゃがんで→撮ってを半日繰り返す。そこそこ運動している私が筋肉痛になるくらいのハード。

全員をまんべんなく撮る

撮影のミスが多いと、飲み屋さんの店員をやっている時に現像担当の方とご一緒にご来店されて、ご指導で吊し上げつかまつる。「おっしゃる通り門左衛門」と言うしかない。

ご指摘の中でチョイ恥ずかしかったのは、「こういう子が好きやろ」と指摘されたこと。同じ子を何度も撮っていて偏りがあるとのことだった。

子役なのかというくらい撮られ慣れている子がいて、絵になるのでついシャッターを切ってしまう。でも、職業カメラマンは絵にならない子(失礼)にも分け隔てなく撮影しなければならない。

熟練したカメラマンは、誰を何枚撮ったか覚えているらしい。そこまで至るのは難しそうだけど、「絵になるから撮る」から脱却することは意識したい。

もれなくカバーするためのチームワーク

イベントは同時並行的に進むこともあるので、すべての子供やご家族を漏らさずに撮る。

夏祭りであれば、縁日タイムと盆踊りタイムがある。ラグビー大会であれば、どこのコートでどの組が勝ち抜いて戦うかがある。

タイムテーブルに担当を書き込んで、守備範囲を切り替え、臨機応変にカバーしあうことで、全員をまんべんなく撮る。

トライやるウィークっぽい

ふと「トライやるウィーク」っぽいことやってるなと思う。地元の中学生が商店街のお店に入り込んでお手伝いする職業体験学習の大人版。

お声がけいただいたからには全力でやるんだけど、上手く現場を回せるようになったとして、職業の一側面でしかないことは意識する。生計を立てようとしたら、どのくらいの頻度でお仕事を埋めねばならないか、そのために何をしなければならないか。

企業だと経理や営業がやってくれている仕事も、体験学習の外側にある。逆説的だけど、社外であれこれやってみることにより、会社って仕組みとしてよう出来てるなと気付くところもある。

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