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二つの世界の交差点~三浦孝太対ジョーカー、ラジャダムヌンスタジアム、2023年7月1日・三浦孝太編

7月1日にラジャダムヌンスタジアムでジョーカー・ファイトクラブタイランドと対戦した三浦孝太は、試合直前の調整をバンコクのロンポームエタイジムで行った。

6月26日には特別トレーナーとして、昨年8月に、三浦孝太とエキシビションファイトを戦ったブアカーオ・バンチャメックが姿を現した。昨年の試合をきっかけに交流をはじめた二人、昨年10月の三浦孝太のタイ合宿の際にもロンポージムで合同練習を行っていた。

今回も軽いスパーリングを含めてブアカーオとの練習を行ったが、ブアカーオの試合の予定も暫くは空いていることから、よりトレーナーに集中して、試合前の孝太の仕上がりを確認していた。

ミットを持つブアカーオと三浦孝太

練習後に、タイのテレビ局のインタビューがあり、三浦孝太とブアカーオ”トレーナーは”次のようにコメントした。

ーー孝太選手、ブアカーオさんとまた対戦したいですか。

ブアカーオさんとはもうやりたくないです。ブアカーオさんと試合している時はすごく怖かったですが、試合が終わった後はすごく嬉しかった。自分にとって大切な思い出になりました。

ブアカーオさんとの試合は、これまでの自分の人生で味わった中でも最大の恐怖です。自分が死ぬ前にもこの時のことを思い出すだろう、というくらい強烈な経験でした。

ーーブアカーオさんをトレーナーにしたいですか。

日本でブアカーオさんが試合した時も控室で挨拶したりと、色々と交流している。これからも自分の師匠のようになってほしい。

ーーブアカーオさんのことをどう思いますか。

お兄さんのような存在です。家族のように思っています。

ーーブアカーオさん、どうですか、このままずっと、孝太さんのトレーナーをしてあげたら?

今日も一緒に練習して、孝太の身体の動きもよくなっているように感じた。少しづつ上達していったらいいと思う。

ーー孝太さんは、ブアカーオさんとの試合の時はすごく怖かったと言ってますが。

彼はまだ経験がなかったし、お互いに、緊張していたと思う。でも、試合が怖いのは普通のことです。何度も試合の経験を重ねて、徐々に良くなっていきます。孝太の次の試合も、良い感じに挑むことができると思いますよ。

頑張ってね。(日本語で、三浦孝太に向けて)

そうです。このまま、練習をしっかり積んでいけば大丈夫です。

ロンポージムでのテレビ局インタビューの様子

ーーブアカーオさんは、今やムエタイの代名詞でもありますね。その辺りのコメントをお願いします。

ムエタイは今やワールドワイドになり、ヨーロッパなど、外国でもあちこちにムエタイジムの看板があります。タイの文化のひとつとして、定着しました。このジム(ロンポームエタイジム)も多くの外国人がわざわざタイに来て、練習に励んでいます。

ムエタイと言えば、ブアカーオ、全くそのとおりです(笑) そしてムエタイがもっと発展していくよう、私も力を尽くしていきます。

ーーすみませんが、ワニの尻尾キック(後ろ回し蹴り)を披露してもらえませんか? 

ええ、今ここで? いやいや、勘弁してよ(笑)

この日は、そんなテレビ撮影、インタビューもあったが、三浦孝太は、タイ・バンコク到着から試合前日までの1週間、タイの暑さにも慣れながら、ロンポージムでみっちり練習して7月1日の試合を迎えた。

当日は、ラジャダムヌンスタジアムが展開しているラジャダムヌンワールドシリーズ「RWS」の興行内のスペシャルイベントとしてメイン挌での試合となった。

この日、通常はメイン挌の39戦無敗のムエタイ世界王者、ダニエル・ロドリゲスや、2階級でルンピニー王者となったペットモラゴット・ペットインディーアカデミーも三浦対ジョーカー戦の前に出場した。

ダニエル・ロドリゲスは、ファイティングコンピューターというべきか、人間ではない別の戦うための動物というべきか、超人的な動きを魅せて判定勝ちを収めたが、多くの観客もその動きや技巧を見て驚いただろうと思う。

会場には、三浦孝太とちょうど同じ時期に、ロンポージムで短期合宿を組んだ安保瑠輝也、そしてぱんちゃん璃奈の姿もあった。

タイ人の三浦孝太ファンは、若い女性が多い反面、ジョーカーの所属する地下格闘技団体、ファイトクラブタイランドのチームは、お揃いの黒いTシャツで、ビッシリと腕や首などにタトゥーが入っているものも多く、まさに不良然とした雰囲気を醸し出している。両方とも普段のラジャダムヌンスタジアムの観客層とはまた異なる層である。

22時を過ぎる頃にようやくメインイベント開始の運びとなったが、8000人収容のラジャダムヌンスタジアムはほぼ満員、両選手入場時には観客のボルテージもマックスになる。ジョーカーの入場曲は、ヒップホップのファイトクラブタイランドのテーマ、そして三浦孝太の入場曲は「男はつらいよ」のリミックスバージョンで、それぞれの入場時に、”ジョーカー”コール、”孝太”コールが会場に響き渡った。

試合開始ゴング前の三浦孝太

試合は、第1ラウンドから孝太のタックルが目に付く。2度ほどジョーカーを押し倒して、レフェリーが注意する。その後、右フック、右ストレート、パンチの連打がジョーカーの顔面に当たる。ジョーカーはパンチを喰らいながらも、不敵な笑いを浮かべる。

第2ラウンド、ジョーカーは、再三喰らったパンチか、ヒジを喰らったかで、鼻柱の右から出血する。しかし、ジョーカーの左ひざが孝太のボディに決まり、孝太は膝をつく。そのまま勢いが勝って、孝太の後頭部をグローブではたき、レフェリーから注意される。ダウンカウントはなし。

孝太のパンチがジョーカーを襲う

孝太はジョーカーに組みついてそのまま押し倒す。そのようなテイクダウンを2度、3度繰り返す。後でテレビ映像を見直すと、解説者は、MMAファイター(孝太)、ストリートファイター(ジョーカー)が”キックボクシングルール”でぶつかった為、と再三説明する。

ジョーカーはテイクダウンにくる三浦を一度はヒザで狙いうちしたが後が続かない。ラウンド終盤、三浦のワンツースリーのパンチ。そのうち、ワン、スリーはジョーカーがまともにくらい、たまらずクリンチ。会場もヒートアップする。

第3ラウンド、パンチで攻める孝太にジョーカーは、クリンチ、ミドルキック、そして首相撲からのヒザ、今度は逆にジョーカーがテイクダウン。

お互い前に出て揉みあう。ジョーカーの左ヒザが孝太のボディに刺さるが、効いているかどうかは不明、終了間際、俺はまだスタミナあると言いたげなジョーカーは、ダッシュ走のようなステップを魅せる。

ジョーカーが孝太にグローブタッチを要求したところで試合終了のゴングが鳴った。お互いリングに膝をついて健闘を讃えた。

この試合は”エキシビションマッチ”として行われ、KO以外は引き分けというルール。三浦孝太対ジョーカー戦は、最終ラウンドの終了で、”引き分け”という結果となった。

三浦孝太は、試合後のリング上のインタビューは次のように述べた。

ーー今日の試合はどうでしたか。

キックボクシングの試合に慣れておらず、ついついタックルのような動きが多くなってしまった。この点は皆さんに謝りたい。

ーー今回、2回目のラジャダムヌンスタジアム登場となりましたが、どういう気持ちで挑みましたか。

タイのファンの皆さんのことは大好きで、このリングに立てるのはとても嬉しい。しかし、自分がこのメインで試合をするのはまだ早いと思った。

ーージョーカー選手は思ったよりも強かったでしょうか。どうでした?

体重も異なる(9-10キロ差)のに、こういう試合を受けてくれた。実質的には、今日はジョーカー選手の勝ちと言えるでしょう。

ーー最後にファンへのコメントをお願いします。

今日は皆さん、自分の試合を観に来てくれてありがとうございます。

もっともっと練習して、強くなって帰ってくるんで、また応援をお願いします。インスタやTIKTOKを始めたのでフォローをお願いします。

そしてジョーカー選手、ありがとうございました。

2022年8月に、ブアカーオ・バンチャメック、今回はジョーカー戦とタイの有名選手が対戦相手となり、興味深いマッチアップが続いた三浦孝太だが、タイではペットボトルのお茶のコマーシャルに出るなど、一般のタイ人からの知名度も高く、人気もある。年内か、来年早々にでも、三浦孝太のタイでの第3戦が計画されるだろう。

↓ ↓ 「三浦孝太対ジョーカー」ジョーカー編
   別記事でジョーカー側目線でこの試合を取り上げました。

↓ ↓ 「三浦孝太対ジョーカー」試合映像

↓ ↓ ロンポージムのHP


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