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スアレックが渡部に判定勝ちで、魅せたセンスッターイ(最後の輝き)〜KNOCK OUT 3月5日

3月5日に国立代々木競技場 第二体育館で開催されたキックボクシングのイベント~3.5 MAROOMS presents KNOCK OUT 2023 SUPER BOUT“BLAZE” (マルームズプレゼンツノックアウトスーパーバウトブレイズ) にて、渡部太基 (TEAM TEPPEN)VS スアレック・ルークカムイ(STUGIS新宿)の一戦が行われた。


↓ 試合展望は前記事を参照下さい。

この日の第8試合となった渡部対スアレック戦は3分3ラウンド(延長1ラウンド)でヒジ攻撃なしのKNOCK OUT BLACKルールで行われた。ぱんちゃん璃奈のエキシビジョンマッチや、鈴木千裕、木村ミノル、龍聖らの出場するメインイベントクラスに向けて、会場も温まってきたというところでの試合開始となる。

選手入場では、スアレックは笑顔でリラックスしている様子が伺える。金のガウンが良く似合い、入場でも絵になるスアレック、これが最終試合となってしまうのが寂しい。

一方、渡部も黒いロングガウンの後ろに”渡部太基”と自身の名前を大きく入れている。こちらも絵になる男だ。黒一色で、50戦を超すキャリアを感じさせるシブい雰囲気を醸し出している。渡部はTEPPEN GYM 所属で、那須川天心の父、那須川弘幸氏がセコンドについていることが確認できる。

昨年、後楽園ホールで見た渡部はとてつもなく大きく見えたが、この日はそうでもなく感じる。ライト級の骨格であるスアレックも体に厚みがあり、決して体格で劣っていないように見える。そしてそれは、試合中でも充分にナチュラルのウェルター級の渡部に押し負けていないように見えた。また、パンチも、キックも1ラウンド目から充分渡部を効かせている。

1ラウンドの序盤で見せたローキック、ミドルキックは効果的で、ローキック~ミドルキック~パンチというコンビネーションがうまく機能し、右ストレートを中心に渡部の顔面に危険なパンチが襲う。

1ラウンド終盤、明らかに効いた渡部は、右フックを顔面に被弾し腰を落とす。右の眼の上を切って血に染まった右顔面だが、眼はまだ死んでおらず、スアレックの攻撃を良く見ており、スアレックのラッシュにひるまず打ち返す。ここで初回ゴングが鳴る。

2ラウンド、渡部はダメージもあるだろうが、あえて前に出てくる。1ラウンドほどはスアレックの攻撃をもらわない。しかし、スアレックのパンチ連打からのもみ合いからのヒザ攻撃も効果的、そして1分過ぎにローキック蹴り合いから、またスアレックの回転力のあるパンチが連続でクリーンヒットし、渡部の動きが止まる。

ここを耐えた渡部がパンチを出し、喰らいつく。2分過ぎに息を吹き返して渡部が反撃する。スアレックのほうが、着弾率は高いものの、顔面へのパンチ、ヒザ、ボディーブローの打ち合いと激しい攻防が繰り広げられる。

スアレックはミドルキックを多用、ローキックは減ってきた。打ち気にはやっているのかミドルキック、左右フック、右ストレートの流れで、被弾もあるが「超攻撃型ムエタイ」らしい姿を見せる。

最終ラウンドとなる第3ラウンドもスアレックはヒザ、ミドルキックを混ぜてビッグパンチをふるう。ローキックの打ち合い、そして、渡部が前に出だすと、スアレックは下がりながらも首相撲、ヒザなどで渡部の攻撃を遮断する。そんな渡部も飛び膝蹴りなど大技を見せて、大逆転を狙う。このラウンドは渡部に振ったジャッジもいるだろう。スアレックはうまく防いで、そのまま試合は終了となった。

判定は、30-28、29-28、30-28で3-0、ジャッジ3人がスアレックの勝利を支持し判定勝ち。最終戦を白星で飾った。

試合の翌日、KNOCK OUTの記者会見があり、その場でスアレック・ルークカムイ選手は正式に引退を表明した。以下は会見の質疑応答の模様。

渡部選手の攻撃の印象はどうだったか。
――スアレック・それほどでもないけど、身体が大きかった。そして頑丈でした。

ブラックルールでヒジが使えない中での戦いについてはどうだったか。
――スアレック・同じようなルールで何度もやったことがあるので、問題はなかった。ヒジが使えたらより楽しい試合ができたと思います。

今回の試合を終えて、試合前に表明していてた進退については、まだ続けたくなったとかいうことはあるか。思うところはあるか。
――スアレック・この舞台で戦うことができて、勝つことができた。これでもう戦わない。プロモーターの山口さん、ジムの会長(STUGIS新宿ジムの江口代表)、KNOCK OUTの宮田さんに、今回の機会を頂いて本当に感謝しています。

昨日の試合で最後というのは、試合の前から決めていたのか。
――スアレック・そう考えていました。いい試合をして勝てたので、気持ちも固まりました。

元王者(スアレックは元KNOCK OUT-RED ライト級王者)がこれで引退となるが。
―――宮田氏・試合前からスタージスの江口代表からもスアレック選手の引退の旨は伝えられていたが、引退試合という形にはしたくなかった。またやりたいとかいう心境の変化もあるかもしれない。またKNOCK OUTの他のイベントで引退セレモニーなども考えていきたい。スアレック選手が関西に住まいを移すとも以前から聞いていた。スアレック選手は日本のファンも多い選手なので、何かしらのことを考えていきたい。

昨日の大会ではタイ人唯一の勝利でしたが思うところはあるか。
―――スアレック・私はタイ人ですが、日本に住んでいるし、日本での戦い方をしっている。タイから来る選手はどういう心境でやっているかは分からないが、日本での勝ち方、戦い方が分からないかもしれない。           

そして私にはこの日本で応援してくれる人がいっぱいいる。それが大きな力になっています。

やり残したことはないか。
―――スアレック・心残りはありません。このKNOCKOUTの舞台で終わりにするということで、良い終わり方だと思います。

昨日の試合についてファンへのコメントをお願いします
―――スアレック・昨日は応援してくださってありがとうございました。最後の試合、勝つことができて、幸せを感じております。

―――宮田氏・昨日はお客さんいっぱい来ていて、応援凄かったね。

2016年より、STUGIS新宿ジム所属選手として、日本で活躍してきたスアレック・ルークカムイ選手もこれで現役に一区切りをつけた。

そのキャラクターももちろん、「超攻撃型ムエタイ」と名付けられたファイトスタイルも魅力的で、多くの日本人ファンが応援した理由と言えるだろう。

スアレック選手が入場曲で使用したタイのロックバンド・BODYSLAMのセンスッターイ(最後の光~แสงสุดท้าย)は「僕の進むこの道には辿り着く先がある 空にわずかでも光がある限り 最後の光(希望)を目指し進み続けよう」と聴くものに呼びかける。ラストファイトを戦い終え、彼は格闘家としての「センスッターイ」に行き着いたような、満足しきった顔をしているように見えた。

今後は人生のセンスッターイ(最後の光~แสงสุดท้าย)を追い求めて、頑張っていく引退後のスアレックも応援したい。

※YOUTUBE観戦~写真はスアレック選手本人からの提供、会見の写真はYOUTUBEの会見から使用させて頂きました。

↓ 渡部太基対スアレック戦動画

↓ 一夜明け会見(54分辺りからスアレック選手会見-)

 ↓ スアレック選手が入場曲で使っていたBODYSLAMのセンスッターイ(最後の光~แสงสุดท้าย)


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