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仕事から逃げ出そうとしている話

春の足音と共に、自分の精神に訳の分からない影のようなものが迫ってくるのを感じていた。じきにその正体は、医者によって適応障害だと診断されることになる。

というわけで気がついたら適応障害になっていた。なんだかよくわからないので調べたら、軽い鬱のようなものらしい。

あなたはもう休まなきゃだめですよ、という医者の言葉を、自分がやばいんだろうな〜と心のどこかで予想はしていたがまさかお墨付きになるとは思わなんだ…という心持ちで、眼鏡の水滴を拭いながら聞いていた。花粉の季節だから伊達眼鏡が欠かせないのである。花粉ブロック用のゴツいやつじゃなくて、普通のやつでも、60〜70%くらいはカットできるらしい。

私がこうなった原因は、大半は会社のストレスによるものであった。業務内容やら環境やら理由は複合的なのだが(あまり詳しくはここには書けない)、私は別に会社のことを恨んでいない。もちろん文句を言いたい部分もあるのだが、私にめちゃくちゃな暴言を吐く人もいないし残業代も出るし、そこまで劣悪な環境ではなかった。どちらかと言うと自分の能力の低さで会社に迷惑をかけているんだろうな、という自己嫌悪の気持ちが大きい。

ただ弊社は人数の割に病む人が多い気はしている。私は勤続3年目だが、自分含めてメンタルをやられた人は周りにこれで5人目である。新卒で入った会社だからこれが普通なのかどうか正直よくわからないのだが、大企業ならともかく、中小企業でこの人数というのはどうなんだろう。一般的なのだろうか。

さてそんなわけで医者から診断書をありがたく頂戴。内容拝見。一部抜粋。

「感情コントロール不良で感情失禁を認め、理由なく流涙が出現してしまう。」

感情失禁?

生まれて初めて聞いた言葉なんだけど、なんか、ちょっとさ、嫌じゃない?この言葉。失禁?

それまでは頭の中を「いよいよこの書類を会社に提出して上司と本格的に面談をしなきゃいけないのか…嫌だし申し訳ないな…」という憂鬱な気持ちが占めていたが、一気に頭の中のスペースが「感情失禁」というパワーワードで埋め尽くされてしまった。私は感情を失禁する女になってしまったのである。

そういえば自分の症状を医者に話す時に涙を流してしまったのだが、彼は「おっ今感情を失禁しているな」という気持ちで私を眺めて居たのだろうか。そう思うと彼の冷静な表情が今更ながら私に突き刺さる。

とりあえず薬を貰いぼちぼち休職に入ることになるのだが、あれだけ毎日「労働はゴミ、出勤はカス」と呪詛っていたというのに、いざ休みをもらえそうになると逆に不安になってきた。たしかに休みは欲しかったが、望んだのはこういう形ではなかった。宝くじで7億円当たり、労働階級の方々をにやにやと見つめながら、鷹揚な態度で退職届を部長の顔に擦り付けたかったのである。

「どこにも所属していない」という状態が(休職だから所属はしているのだが)、こんなにも心細いとは知らなかった。

ただこんなことをうだうだ言っていても何の意味もないことだけは確かなので、とりあえず会社には本当に申し訳ないが近日中に休暇の申請を出し、メンタルの回復に専念することにする。

早寝早起きをして日光を浴びて、きちんとご飯を食べる。ただ肌荒れが治った健康的な適応障害になるだけな気もしているが、肌荒れが治らない適応障害よりはマシである。

これからは気が向いた時に時々自分の状態を記録していきたいと思う。感情の失禁、止めてえ〜。







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