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空白

空白を感じている.それも居心地の悪い空白を.例えば夏休みの終わりごろ,8月26日くらいに,まだ大物の宿題が残っているというのに遊びにうつつを抜かしているときの,快楽を享受すると同時に近い将来必ずやってくる辛い時間を自覚しているあの感覚.妙にセミの鳴き声がうるさく感じ,対峙している現実が希釈され,じっとりとした気候が精神を蝕むあの感覚.

もちろん,この感覚の正体を述べることはとても簡単だ.夏休みというのは今の仕事に行かない状況,そして大物の宿題とは仕事に就いて糊口を凌ぐことである.いや,正確に言えば私は働くのが嫌なのではない.コロナ禍が叫ばれる昨今であっても,バイトならいくらか働き口は(少なくともその場所を選べるくらいには)残されている.問題は新卒3か月でドロップアウトした,新卒であることしか取り柄のない無能な若者が,これからどう正社員の立場をつかめばよいのか,というあまりに深く,あまりに切実な関心なのである.

私は明後日,会社に出頭し,話をする.正直,引き留めはないだろうと思う.電話で話していてそう思った.多分会社に行って私が行うことは,建設的な対話ではなくて,腐れ切った縁を解消するための儀式であろう.しかしそれでも,私は前に進まなくてはならない.仮令牛の歩みでも.仮令地獄が待っていようとも.

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