見出し画像

東京の迷月

月が綺麗ですね。

中秋の名月

満月が重なった

のは8年ぶりなんだとか。

8年前のこの日
何をしていただろう。
月をじっくり眺めるくらい、
心に余裕はあっただろうか。

1年前に、キャンプ用チェアーを購入した。

流行りのキャンプにハマっているわけではない。

コロナ禍がはじまり、あまりにも外気に触れていないと焦り
とりあえずベランダで読書するためにと、ポチった。

こういうイレギュラーな買い物は
数ヶ月経って後悔することが多いが

これが意外と使用頻度高めだ。

ベランダで読書するためではなく

ベランダでただ、夜を過ごす

もちろん月をゆっくり見る時もあるが

基本は、夜に部屋を真っ暗にして
キャンプチェアーをベランダにだし
好きな音楽を聴きながら

ただ、ただ

ぼーーーーっとする。

たまにiPadでNetflixを見たりもするが
基本、夜空をぼーーーーっと眺める時間に使う

これが、かなり気持ちいい。

不思議な雲の形を
ひとつひとつ目で追いながら

「地球って、わっけわっかんないのなぁ〜」
「雲って乗れるって思ってたのに、実際乗れないよなぁ〜」
「明日晴れるかなぁ〜」
「天国に行ったみんなはどうしてるかなぁ〜」
「どこかで油揚げ焼いてるぁ〜」
「美味しいものってこの世にたくさんあるよなぁ〜」
「随分涼しくなったなぁ〜」
「今年も残り3ヶ月かぁ〜」 
「はぁ〜まじかぁぁぁ!?!?」

とか、とか、
巡らせているとあっという間に時間は過ぎていく。

ただ、ここは東京。
鮨詰めに建物が並ぶ。
空も狭い。
私の眼中キャンパスが夜空でいっぱいになることはない。
必ず“建物”が入り込んでくる。

夜空の星の明るさよりも
マンションの小窓に灯る
ひとんちの明かりの方が多い。

はぁー…あっかるいなぁー。。

でも仕方ない。

だってここは、東京だから。

そんな東京も好きだから。

今夜もぼーーーーっと
キャンピングチェアに座って
夜空を眺めていると
向こう側にあるマンションのベランダの家族や
違う階の住人もポツポツ出てきては
月を探しているようだった。

月を探す人々

月光よりも輝く人工光のせいで

見つけにくい東京の中秋の名月。

それを部屋の明かりを消し
ベランダでキャンピングチェアに座り

ぼーーーっと、眺める女

…え

…え、こっっっわ

絶対、こちらに気づいたら
「あの人何やってんだろう…部屋真っ暗にして、こわいね。あれ、なんかこっち見てる!?やだぁ、早く部屋入ろ入ろっ!」

とか、思われてるやもしれない。

いや違うんだ、月を眺めようとすると
その方向に、あなた方の部屋のベランダが
私の眼中キャンパスに入り込んでくるだけなんだ。

そんな風に思ったところで
向こうには伝わらない。

仕方ない、大きな声で叫ぼうか…

「あーのおおおぉ!お宅を眺めてたわけでもなくてえええぇえええ!!!!あっちーー!あっちにいいいい月いいいぃぃあーりーまーすよーーー月いぃ月が綺麗ですねぇえええーーー!!」

や、こりゃ騒音だぞ。

これはこれで隣人騒音問題に発展だ。

“部屋を真っ暗にし、ベランダから叫ぶ女”

字面だけでもかなりパワーがある。
住んでいられなくなるやもしれないなぁ

待て待て

てか“月が綺麗ですね”は

“アイラブユー”の意味も含まれると思われるやもしれないぞ?お?
これはより一層“やばいやつ”にカウントされるぞ?おぉ??どうする!?どうする、まりゑ!!?


なーーーんて


そんなしょーもない考えを巡らせて
鼻で笑って、夜空に目をやる。

うん。やっぱり

月が綺麗ですね。

私、まりゑ、はい。可笑しな人間です。分かってます、ええそうですよね。だもんで、そんな可笑しな人間と一緒にいたら絶対人生に少しの可笑しさをプラスできます。 一家に一人、まりゑ。いかがですか? ここで様々なことをシェアし、ありったけ自分なりの表現で皆様に還元していけるように努めます。