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障害福祉分野の手続負担が軽減される

厚生労働省は、障害福祉分野における手続負担の軽減、いわゆる「ローカルルールの見直し」を進めています

障害福祉事業者の各種手続の負担を軽減し、生産性の向上を図ることを目的に、政府の政策として、各都道府県等で横断的に行われています
また、このような施策の推進が、人材不足の解消や利用者さんの利益向上にもつながると期待されています
 
では、この手続負担の軽減の施策がどのように進められているのか
今回は、これをテーマにお話します
 
なお、関係各省庁から文書や資料が発出されていますので、リンクを記載しておきます

関連リンク
内閣府(規制改革推進会議)資料
厚生労働省(障害者福祉)資料

手続負担の軽減施策の概要

現在は、大きく以下の項目が推進されています

  1. 標準様式等の活用

  2. 手続きの簡素化

  3. 今後の標準様式等の使用の法令上の措置・システム整備

  4. 障害福祉分野における事業者要望専用窓口の開設等

  5. 障害福祉分野における手続負担の軽減のための調査 

1と2は、事業者側が直接かかわる書類や手続きに関する事項です
3と4は、行政側が施策を推進する体制や運用の整備に関する事項です
5は、施策推進の実態の把握・分析に関する事項です

令和6年4月12日に厚労省及びこども家庭庁から事務連絡が発出されています
これによれば、上記の5項目は完了したものではなく、今後推進するものとして記載されています

特筆すべきは、目的を果たすべく、事業者からの要望を聴き、実態を調査・分析することで施策の効果を上げようとしていることです
行政側からの一方的な施策ではなく、官民協同で進めようとする姿勢が読み取れます

軽減施策の細部

さて、施策はどのように進められ、事業者にとって、どのくらい負担が軽減されるのでしょうか
厚労省・こども家庭庁の事務連絡の内容を要約します
 

1.標準様式等の活用

都道府県等に提出する及び都道府県等が出す書類・文書の様式が、都道府県等で統一した標準様式に順次変更されます
令和6年度中には、指定申請、報酬請求、運営指導の3分野で様式の標準化が進められます
都道府県等をまたいで複数の事業所等を運営する法人にとっては喜ばしいことでしょう
ただ、従前から使っていた様式から標準様式への切り替え作業が予期されるほか、都道府県等の事情によっては、独自様式も並行して用いられる可能性がありますので、事業者全体が一律に負担軽減とはならなそうです
 

2.手続きの簡素化

この施策は、どの事業者にとっても負担軽減が期待できそうです
当初は、細部の要領などが分からず、戸惑いや抵抗感があると思いますが、手順が明示され、これに対応することで確実に負担が減るものと思われます

①指定申請などの書類への押印・署名の省略化
 標準様式を活用した押印・署名の省略

②書類提出の電子化
 新規の指定申請時など、対面の機会を必要とする場合を除いて、書類提出を電子メール等(非対面)で行う

③人員配置に関する資料提出の一部省略
 指定申請時の人員配置に関する添付資料のうち、雇用契約書などの添付資料を求めず、代替の確認方法がある場合は、資格証等の写しの提出も求めないなど

④運営規程や重要事項説明書への従業員の員数の記載緩和
 ・指定基準において配置すべき員数を満たす範囲において、「○人以上」と記載することも差し支えないものとする
 ・運営規程の「従業者の員数」に変更が生じたものとして届出が必要になる場合は、変更が生じた都度ではなく、1年のうち一定の時期を比較して変更があった場合で足りるものとする

⑤施設・設備等の写真省略
 指定申請における写真提供の求めは、行政側が現地を訪問できない場合に限る

⑥更新申請時の既提出文書の提出省略
 更新申請に当たり、既に提出している事項に変更がないときは、特段の事情がない限り、申請書の記載又は書類の提出を省略

⑦事業者指定の有効期間に満たない期間での更新手続可能
障害福祉サービス等事業者が、同一事業所で複数のサービスの指定を受けているなどの場合、指定更新を一括して行うことが可能(申請時に6年未満であっても有効)

⑧運営指導における確認書類の提出等の効率化
 ・運営指導(旧実地指導)において確認する書類等は、原則として運営指導の前年度から直近の実績に係る書類等とする
 ・行政側が既に保有している書類等については、再提出を求めず、行政側内で共有を図る
 ・事業所に対し資料や文書の提出を求める際、重複して提出を求めない
 ・既提出の書類等(提出済の内容に変更がない書類等)の再提出は不要
 ・ICTで書類等を管理している事業所においては、PC画面上で書類等を確認する

3.標準様式等の使用の法令措置とシステム整備

施策を支える法令とシステムという2軸の整備が推進されます
・標準様式等の使用の基本原則化のための障害者総合支援法施行規則等の改正を予定
・電子的に申請や届出を可能とするためのシステムの構築整備を検討中
 

4.障害福祉分野における事業者要望専用窓口

行政側の一方的な施策とならないよう、事業者からの声を聴くための制度です
・開設した窓口に提出された要望について整理し、厚生労働省ホームページに掲載
・要望の継続を促すため、厚労省HPの存在や要望手順などの周知・共有を図る
 
※リンク:事業者要望専用窓口受付フォーム

5.障害福祉分野における手続負担の軽減のための調査

行政側の施策推進にかかわる調査結果が公開されています
・令和6年1月に実施した調査結果を厚生労働省ホームページに掲載
・都道府県等の更なる手続負担の軽減や手続の利便性向上の取り組み推進

今回、発出された事務連絡からは、未だ道半ばではあるものの、確実に負担軽減に進んでいます
また、負担軽減の施策を推進するための官民協同の体制構築も整備されていることが伺えます

 今後をどうする

今般の施策の背景には、都道府県等ごとの煩雑なローカルルールの存在を行政側が問題視したからで、多くの事業者さんが声を上げたから実現しています

事業者さんの業務負担は、事業者自身しか分かりません
現状の不満・不便に対して何もしなければ、何ひとつ改善されません
特に、法令や行政側からの指示等は、事業者側の努力で変わるものではありません

今般の施策には、要望を聴きつつ推進するという体制と制度が整っています
今後は、これを積極的に活用し、更なる事業負担の軽減化や業務の改善に反映に役立てていただきたいものです



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