今にも振り出しそうな夜に


いつも訪れる石垣があった。

さきほどからぽつりぽつりと雫があたり、ごつごつした岩肌にかすかな線を描いていった。

ため息まじりに、その折り重なる岩を見つめながら彼女は言った。


「また会ったね」


彼女はここを知っている。

彼女はここにあるものを知らない。


いくつにも折り重なる模様を眺めながら、彼女は探している。


ここにある何かを。



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