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白内障のかなり詳しい解説~原因、症状、見え方、治療方法

目のなかの水晶体という組織は、カメラのレンズのような働きをしているので、これが濁ってしまうと見えづらくなってしまいます。この症状を引き起こす病気を白内障といいます。

この記事では白内障の原因、症状、予防方法、治療方法を紹介します。

白内障は見ることに関わる深刻な病気といえますが治療法が確立されているので、医療機関で適切な治療を受けることで改善が期待できます。そのため症状をよく理解して早期治療に取りかかることをおすすめします。

 


白内障の原因とは


白内障の原因は複数あり、原因によって病名が異なります。加齢によって生じる白内障を加齢性白内障といい、生まれつき水晶体が濁っている場合を先天性白内障といいます。若い人が発症する若年性白内障と診断されるでしょう。その他の原因で発症するものもあります。

一つずつ紹介します。


加齢性白内障


加齢性白内障は最も患者さんの数が多い白内障です。加齢が原因になっているというのは、月日の経過とともに水晶体が劣化している、という意味になります。

水晶体を構成する物質は主に水分とタンパク質です。水晶体には紫外線をカットする役割があり、そのため水晶体は日中、紫外線を浴び続けていることになります。そのため紫外線によって水晶体のなかのタンパク質が劣化して、それが濁りを引き起こします。

また、加齢によって体内の活性酸素が増え、これが水晶体を障害するという指摘もあります。

「加齢」と聞くと高齢者をイメージするかもしれませんが、40代で発症することもあります。


先天性白内障


先天性白内障は生まれつき水晶体が濁っている病気です。原因には遺伝的なものや、妊娠中の人が発症した風疹の影響によるものなどがあります。

生まれつきなので、赤ちゃんのときから見えにくい状態になっています。赤ちゃんは自ら「見えづらい」「風景が曇ってみる」と訴えることができないので、親が気がついてあげる必要がありますが、それも簡単なことではなく日々しっかり観察することが欠かせません。

先天性白内障を見つけることができれば手術を受けることで改善できます。人の見る力は、目を使うことで脳と視神経が発達して身につくものなので、白内障の状態で見えない期間が長くなると子供は見る力を持つことが難しくなります。先天性白内障の治療は時間との勝負の側面があります。


若年性白内障


20~30代で発症する白内障を若年性白内障といい、そのほかの病気が引き金となって水晶体が障害されて発症します。

若年性白内障を引き起こす病気にはアトピー性皮膚炎、糖尿病などがあり、そのほかに外傷、薬剤、紫外線によって発症することもあります。

先ほど加齢性白内障は紫外線を浴び続けることで発症する、と紹介しました。したがって若年性白内障の原因が紫外線である場合、その患者さんの水晶体は著しく紫外線に弱い、とみなすことができます。


その他の白内障

 

20~30代以外でも糖尿病が原因で白内障を発症することがあり、その場合、糖尿病性白内障という診断名がつくはずです。糖尿病によって高血糖状態が続くと水晶体に異物が蓄積しやすくなり、それが水晶体を濁らせると考えられています。

 

アトピー性皮膚炎は白内障のリスク要因になり、これをアトピー性白内障といいます。アトピー性皮膚炎は免疫の異常で起きるので、それが水晶体に悪影響を及ぼしていると推定されています。また、アトピー性皮膚炎を発症すると目を強くこする機会が多くなるので、それが水晶体を傷つけて白内障を引き起こすこともあります。

 

外傷性白内障という病名もあり、これは目に強い衝撃を受けることで発症します。テニスや野球などの球技で使うボールが目に当たって水晶体が傷つくこともあります。

 

目のほかの病気が水晶体を濁らせることを併発性白内障といいます。併発性白内障の原因となる目の病気は、ブドウ膜炎、緑内障、網膜変性症、網膜剥離などです。

さらに放射線治療やステロイド薬による副作用で白内障を発症することもあります。

 

白内障の症状


白内障の症状は見えづらくなることですが、「見えづらさ」は病気の進行度合いや人によって異なります。ここで紹介する症状を感知したらなるべく早く眼科クリニックにかかることをおすすめします。

中高年の方や高齢の方はもちろんのこと、若年性白内障も存在することから20代30代の方でも「おかしい」と感じた時点で眼科クリニックにかかっても問題ありません。


視界が全体的にかすんで見える


多くの白内障の患者さんが訴えるのは、視界の全体がかすんで見える症状です。すりガラス越しに風景をみる感じ、メガネが蒸気で曇ったときのような感じ、と訴える方もいます。


光をまぶしく感じる


それまであまり意識してこなかった光源に対して、まぶしいと感じるようになった要注意です。水晶体の濁りによって目に入ってくる光が拡散するのでまぶしさを感じるようになります。


視力が低下する


視力の低下も白内障の症状の一つです。疲れで視力が低下することがありますが、疲れが取れても視力が回復しない場合は医者に相談したほうがよいでしょう。


明るいときと暗いときで見え方が違う


明るい場所ではよく見えるのに、暗い場所に移ると見えにくくなったり、その逆の現象が起きていたりすると、白内障が疑われます。


近視が進んでしまった


近視の悪化スピードが速いときも白内障を疑って眼科クリニックにかかったほうがよいでしょう。


物が二重に見える


水晶体はレンズなので、それが濁ると物が二重に見えることがあります。

目に強い圧力をかけてしまうと物が二重に見えることがありますが、その場合はしばらくすると元に戻ります。

しかし白内障によって二重に見えている場合は、いつまで経っても改善しません。念のため検査を受けたほうがよいでしょう。


老眼鏡の度が合わない


これまで使っていた老眼鏡の度が合わないと感じるようになったら、白内障が進行しているサインかもしれません。

老眼鏡が合わなくなったら、メガネ屋に行く前に眼科クリニックに行ったほうがよいでしょう。なぜなら老眼鏡を使う年齢の方は、すでに白内障リスクが高くなっているからです。


目が疲れやすくなった

 

白内障の初期では見えづらさが起きないことがあります。それでも白内障を発症していると、意識できないレベルで見えづらさが起きていることがあります。それが目の疲れとなって現れます。白内障による見えづらさを補正しようと目の筋肉などを酷使するので、それで疲れてしまうわけです。

 

白内障の予防方法


白内障の予防方法を紹介します。白内障は「何か」が起きてから、それが水晶体を障害して発症するので、予防ではその「何か」を除外します。

つまり水晶体を傷つけるものを遠ざけることが予防方法になります。


紫外線やブルーライトから目を守る


紫外線を遠ざけることは白内障予防で最初に取り組みたいことです。強い日差しの日はサングラスを着用するようにしてください。サングラスのレンズは、紫外線を通さないUVカット機能が備わっているものを購入するようにしてください。サングラスをかけると目の周囲が暗くなるので瞳孔が開き、その分だけ目に入る太陽光の量が増えて、紫外線のさらされる可能性が高くなります。しかしUVカット・レンズであれば、目に入ってくる紫外線の量を減らすことができます。


また、パソコンやスマホが発するブルーライトも水晶体に悪影響を与える可能性があります。これだけ電子機器が普及すると、現代人は常にブルーライトにさらされているといっても過言ではありません。

パソコンやスマホを長時間見続けないようにしたり、仕事で長時間見続けなければならないときはブルーライトをカットする機能があるメガネをかけたり、連続作業をせず途中でパソコン画面を見ない休憩を挟むとよいでしょう。


目薬をさす


ドラッグストアなどで購入できる市販の目薬でも白内障の予防効果を期待できます。目薬を差すことによって目をいやすことができます。また、目全体が潤うので水晶体が保護される効果が期待できます。

ただし市販の目薬には白内障の治療効果は期待できないので、「白内障かもしれない」と感じたら眼科クリニックにかかって処方薬を使う必要があります。


食生活を改善する


乱れた食生活を改善すると健康になるので、それは当然に目にもよい効果が生まれることが期待できます。食生活の改善にはもう一つ良いことがあって、それは糖尿病を予防したり改善したりできることです。つまり食生活の改善によって糖尿病を遠ざけて、糖尿病性白内障の予防につなげることが期待できます。

また、食生活の乱れは体内の活性酸素を増やすので、食生活を改善して活性酸素を減らせば、活性酸素による水晶体の障害を予防できます。


適度に運動する


適度な運動も、肥満解消→糖尿病予防→糖尿病性白内障の予防、という効果を期待できます。

特に高齢者の場合、筋力の低下や関節の痛みなどで運動不足に陥りやすいので、無理しないようにしながらも、それでも意識してよく歩くようにしてください。

運動をすると、活性酸素を減らす抗酸化作用という働きが活発になることがわかっています。運動→抗酸化作用が活発になる→活性酸素が減る→水晶体が傷つかない、という流れで白内障の予防が期待できます。


禁煙する


タバコは百害あって一利なしなので、当然に白内障にも関わってきます。「見えづらい」と感じたら今度こそ禁煙しましょう。

 

白内障の治療方法


眼科クリニックでの白内障の治療は、生活に支障が出ないレベルの見えづらさの場合は点眼薬を使い、生活に支障が出るほど悪化したら手術を行う、という流れになるでしょう。

ただし点眼薬は症状を緩和させたり、病気の進行を遅らせたりするだけで治療効果は期待できません。それは一度傷ついた水晶体が元に戻ることがないからです。

そのため重症化した白内障の治療では手術が一般的になっています。また、白内障の手術はその手法が確立されていて、さらに入院要らずの日帰りでも行えることから、手術を希望される患者さんは多くいます。


白内障の手術はいつ必要になるの?


白内障の手術を受けるタイミングは原則、患者さんが決めることになります。生活に支障が出ている場合は、医師がすすめることもあります。

小さな文字を大量に読む仕事や、乗り物を運転する仕事に就いている方は、よく見えることが仕事のクオリティに直結するので、比較的早めに手術に踏み切ることがあります。

また仕事をしていない高齢の方でも白内障手術を受けると見違えるように見えるようになって生活の質が格段に上がるので、早めの手術が推奨されることがあります。


白内障の手術


白内障の手術には主に、超音波水晶体乳化吸引術、単焦点眼内レンズ手術、多焦点眼内レンズ手術があります。


超音波水晶体乳化吸引術は超音波を濁った水晶体に当てて小さく砕いてから吸引して取り除く手法です。このあと、取り除いた水晶体の代わりに眼内レンズを挿入します。

 

単焦点眼内レンズ手術は、単焦点タイプの眼内レンズを挿入する手術です。単焦点眼内レンズには、自然な見え方で違和感が少ないというメリットがありますが、遠方か中間か近方のいずれか一つを選ぶ必要があります。一つしか選択肢がないので単焦点といいます。

 

多焦点眼内レンズ手術は多焦点タイプの眼内レンズを使います。こちらは中間も遠方も見えるタイプです。2つの場所を見ることができるので多焦点といいます。近くを見るときはメガネが必要になります。

 

なおここで紹介した3つの手術はすべて公的医療保険の対象になります。

 

まとめ


見ることは日常生活を送ることや仕事をすることの大前提となります。そのため見えづらくなることは生活の質を著しく低下させます。

白内障の主な原因は加齢なので、ある程度歳をいった方が見えづらさを感じたら、迷わず眼科クリニックにかかったほうがよいでしょう。医療機関で適切な治療を受けることで生活の質を維持・向上することができます。

見えづらさを長年我慢していた高齢の方が白内障手術を受け、視力を回復した結果生活が積極的になった、という事例は枚挙にいとまがありませ。そのような方のなかには、早く手術を受ければよかったと言う方もいます。

また20代30代の方も油断しないようにしてください。若さゆえに「見えづらい」と感じても「気のせいさ」と思ってしまうかもしれませんが、若年性白内障の可能性を否定できないからです。

 

 

【参考サイト】

https://www.hakunaisholab.or.jp/cataract-about/about/cause/

https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/library/cataract/museum/about_cataract/#:~:text=%E7%99%BD%E5%86%85%E9%9A%9C%E3%81%AE%E4%B8%BB%E3%81%AA%E5%8E%9F%E5%9B%A0,%E3%82%86%E3%81%A3%E3%81%8F%E3%82%8A%E3%81%A8%E9%80%B2%E8%A1%8C%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

https://www.tomita-ginza.com/blog/cataract/about

https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/library/cataract/

https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/library/cataract/museum/cataract_treatment/

https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/library/cataract/museum/surgery/

https://www.cataract-iol.jp/condition/visual/

https://clickeye.jp/disease/cataract/

https://www.bumrungrad.com/jp/treatments/phaco-iol-intra-ocular-lens-cataract

 

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