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営業組織の売上を伸ばすために責任者が取り組むべき5つのステップ

企業で営業を統括している方は常に、チーム全体の底上げを図ろうとしているはずです。

もちろん営業組織は1人の営業担当者の集まりなので個の活躍は欠かせませんが、しかし総合力が高まらないと売上にボリュームが出ません。

ハイパフォーマーを増やしてローパフォーマーを成長させて強いチームをつくるには、営業組織に巣くう成長阻害要因を排除して、1人ひとりの働き方や動き方を改善していく必要があります。


そこでこの記事では、営業組織が抱えやすい課題を3つ紹介したうえで、売上を伸ばす2つの方程式と売上を伸ばす5つのステップを解説します。

キーワードはLTVと営業プロセスです。


営業組織の売上が伸びないよくある原因3つ


営業統括者が、自社の売上の伸びの鈍化に悩んでいたら、チーム内に次の3つのことが起きていないかチェックしてみてください。


●営業活動が属人化している

●顧客の考えや行動を把握できていない

●営業ツール間の情報が断絶されている


1つずつみていきましょう。


営業活動が属人化している


少数の営業担当者だけが突出した成績を残していても、営業活動ノウハウがその人たちだけのものになっていると(属人化していると)、全体の底上げはなかなか進まないでしょう。

なぜなら、営業活動が属人化されたままではパフォーマンスの再現性がなく、売上増が一過性のものになりやすく全体としては安定感を欠くからです。

さらに、少数の営業担当者がノウハウを抱え込んでしまうと、チーム内での営業活動の標準化が進まず生産性が低下します。

そして営業活動の属人化が進むと営業統括者が全体を把握しづらくなるので、意思決定の遅延をもたらします。


こちらは、営業活動が属人化している組織の売上高と営業活動の標準化が進んでいる組織の売上高を比較したイメージ図です。


どちらも5人の営業担当者で構成され、そのうち2人はハイパフォーマーです。

営業活動が属人化している組織は、ハイパフォーマーたちは自由に動けるので売上高を増やすことができますが、その他の営業担当者は職場の雰囲気が悪かったり劣等感を抱いたりすることでローパフォーマーに転落してしまいます。

一方、営業活動の標準化が進むと、ハイパフォーマーの売上高はそのままで、その他の営業担当者の成績が伸びます。

営業組織全体の売上高の伸びは、ローパフォーマーをどれだけ減らし、標準的な営業担当者をどれだけ増やせるかにかかっているといっても過言ではありません。


顧客の考えや行動を把握できていない


顧客獲得主義はカンフル剤のような効果を持つため、短期で売上高増を狙うにはよいのですが、その効果は長続きしないでしょう。

なぜなら顧客獲得主義の営業活動は、顧客の考えや行動を把握しづらくさせてしまうからです。


顧客の本当の考えや長期的な行動傾向は、営業担当者が顧客の視点に立って顧客と向き合わないと把握できません。顧客獲得主義はそれとは逆の、いわば自社視点の営業活動です。

顧客視点の営業活動にはアップセルとクロスセルがあります。

アップセルは、顧客により高い価値を提供して客単価を上げる手法です。

クロスセルは、顧客に別の価値も提供して、本命の商品以外の商品も購入してもらう手法です。

価値を高めたり新たな価値を生み出す顧客視点主義には投資も手間も時間もかかりますが、それだけに顧客獲得主義より大きな果実を得ることができるでしょう。


営業ツール間の情報が断絶されている


営業活動を支援するコンピュータ・システムは、今や「営業ツール」と呼ばれ実用化がかなり進みました。

営業ツールには、顧客情報を管理するもの、営業活動を記録するもの、営業目標値と実績値を管理するもの、会議やプレゼンをサポートするもの、メンバー間で情報を共有するものなどがあります。そのサービス内容は多種多様で、これも多くの営業統括者や営業担当者から支持されている理由になっています。


しかし営業ツールは種類が多すぎるので、部門ごとや担当者ごとに導入してしまうことがあります。

例えば営業1課と営業2課が異なる顧客管理システムを購入してしまうと、顧客データが分断されてしまい一貫した営業ができません。

また、営業ツールの運用を営業担当者任せにしてしまうと、データ入力を行わない人が現れたりします。そうなると営業ツールのなかに入っているデータが中途半端なものになってしまい使いものになりません。


営業ツールは簡単に部分最適化ができてしまうので、一部の人たちが独自運用を始めてしまうとそれがブラックボックス化してしまいます。それでは効率化や生産性の向上はいずれ限界を迎えてしまいます。


営業の売上を伸ばすため2つの方程式


営業の売上を伸ばすための方程式を2つ紹介します。

そして営業統括者は、特にライフ・タイム・バリュー(顧客生涯価値、以下、LTV)に注目してください。


営業の成果を測る2つの方程式


2つの営業方程式はこちらです。


●方程式1:売上=顧客数×成約率×平均成約額

●方程式2:LTV=購買単価×購買頻度×契約継続期間-コスト


方程式1はおなじみのものです。売上は顧客数と成約率と成約金額の積で算出されます。この式から、この3項目のどれを強化しても売上が増えることがわかります。

営業統括者は、現有勢力や現状、将来性を分析したうえでどれを強化するか選ぶことができます。

例えば新商品に注目が集まっていれば顧客数を増やす方法が効果的ですし、顧客満足度が高まっていれば成約率を上げやすくなります。商品に付加価値をつけ、それが顧客に認められれば平均成約額を上げることができます。


方程式2はTLVを考慮したものです。

TLVは、1人の客がその企業に「落とすお金」の総額です。したがってTLVが上がるほど企業の経営は安定します。

方程式2から、1人の顧客が企業に落とすお金の額は、購買単価と購買頻度と契約継続期間とコストで決まることがわかります。


・購買単価を上げればTLVが上がる

・購買頻度を上げるとTLVが上がる

★契約継続期間が長くなるとTLVが上がる

・コストが下がるとTLVが上がる


注目したいのは契約継続期間です。TLVには時間の概念が含まれます。そのため営業組織にTLVを重視する考えが浸透すると、営業担当者たちは時間をかけて顧客の考えや行動を把握するようになります。


LTV とは


LTVについてさらみていきましょう。

LTVは古くて新しい営業戦略といえます。

かつての百貨店はお得意様や上得意を一般客より大切にすることで高額単価顧客を増やしていました。そして大切にされた顧客はそれを高く評価して、子供や孫に「あの百貨店で買いなさい」と教えていました。LTVは1人の顧客の生涯をターゲットにしていますが、かつての百貨店の戦略は親子3代をターゲットにしていたわけです。

方程式2をもう一度みてみましょう。


●LTV=購買単価×購買頻度×契約継続期間-コスト


親子3代にわたってケアすることになると営業活動のコストは莫大な金額になり、これはLTVの押し下げ要因になります。

しかし親子3代になると契約継続期間は100年近くになるので、それはコストをはるかに凌駕します。しかも顧客は富裕層なので購買単価も高額を狙うことができます。

したがって最終的にLTVはかなり高くなります。


しかしこれは古いLTVモデルといえます。百貨店業界は今、ユニクロやニトリなどの専門小売業やセブンイレブンやイオンなどの流通大手に大きく水をあけられています。


ではLTVは現代に通用しないのかというとそうではありません。サブスクリプションは新LTVといえるもので、こちらは活況を呈しています。


サブスクリプションは、毎月定額支払いの使い放題プランと理解されていますが、これで成功するには、顧客にそれ以上の価値を提供しなければなりません。なぜなら、毎月定額支払い使い放題プランは、そのままでは分割支払いと変わらなくなってくるからです。

サブスクリプションに成功している企業が提供している価値は体験です。

サブスクリプションで提供する商品やサービスは、販売する商品・サービス(つまり売り切る商品・サービス)より顧客価値が高いものでなければなりません。

サブスクリプションでは、顧客が商品やサービスを長く愛用しないと売上が増えないので、顧客を飽きさせない工夫や「お得感がある」と思わせる方策が必要になります。

サブスクリプションは顧客に価値を提供し続けることで売上高を伸ばすので、LTVといえます。


なぜ LTV を追うべきなのか


LTV型の営業活動は、顧客に価値を提供し続けるコストがかかります。コストは投資であり、投資には常にリスクがつきまといます。つまりLTV営業は、リスキーな一面もあわせ持ちます。


それでも営業統括者がLTVを追求したほうがよいのは、顧客獲得主義や売り切り型営業モデルが消費者に通用しづらくなっているからです。

日本は10年以上デフレ経済に見舞われたことで、安くて便利な商品やサービスがあふれかえりました。デフレ経済下の消費者は購買意欲が旺盛だったので、企業は顧客獲得主義や売り切り型営業で売上高を上げることができました。

しかし安くて便利なものが生活の隅々まで行き渡ると、消費者は価値や体験を重視するようになりました。「特別な何か」を求めるようになったのです。


顧客が求める特別なものを提供するには、コストがかかります。そのため営業組織は、一度つかんだ顧客を手放さないようにしなければなりません。顧客をつなぎとめながら利益をあげるには、価値と体験を提供し続け、それに見合った対価を支払ってもらう必要があります。

これがLTVの本質です。

消費者や顧客のニーズはモノから価値や体験にシフトしています。営業組織もそれに合わせて、LTV型の営業モデルにシフトしていくことが求められています。


営業組織の売上を伸ばす5つのステップ

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