みなさま、あけましておめでとうございます。 Office Rebornです。 コロナ禍という大きな社会変化から、3年が経過しようとしています。世界情勢の予測できない混乱のなか、私たちは日々の生活に追われて、日々の安定、安心した生活が本当に必要不可欠なものだという想いを新たにしています。昨年度は情報発信がほとんどできませんでしたが、今年度は気持ちも新たに挑戦をしていこうと思っています。これまで多くの方々に応援して頂きました。心から感謝しております。 本年の4月から浜松から横
生来的で発達経過をおって状態像が変化する障害という見方では、知的障害を普通に発達障害と考える時代がありました。今では知的障害と発達障害を行政法上では区別しています。 戦後をむかえ、身体障害は、傷病軍人の対応が急がれたので、1949年に「身体障害者福祉法」ができます。その一方で、知的障害への対応は、児童福祉法のなかで児童対応の一部が行われるに過ぎず、成人期の施策は長らくありませんでした。 このような状況下で、1952年に知的障害者の親の会である「全国精神薄弱児育成会」
発達障害の定義はひとつですか?と問われれると、私は複数あると答えています。歴史的経緯と、行政的区分や学術的な区分が関係するからです。 まず、私がかつて大学で学んだ発達障害は、現在とはだいぶ異なっていました。発達障害は中途障害との対比で考えられており、「先天性の障害」を指していました。その代表的な障害は、脳性麻痺です。1970年代には、結核性カリエスやポリオ、先天性股関節脱臼に関しては、予防や治療が普及して激減し、脳性麻痺・二分脊椎の子ども達がほとんどになりました。
自閉スペクトラム症(ASD)の子ども達には、幼児早期に有意語が出現した後に、そのほとんどを消失してしまうという言語発達の退行を示すものがいます。自閉症の研究の最初期から、言葉や行動の退行現象は認識されていました。自閉症の提唱者であるレオ・カナー博士も気づいてはいましたが,自閉症が生まれつきの特徴であるという主張をもっていたので,当初はあまり言及していませんでした。日本では、有意語の消失といった発話の退行現象を、石井(1971)は「折れ線型」と命名しました。 「折れ線型」
人間は,他の植物,動物と同じく生物ですが,高い知能をもつ社会性が極めて発達した生命体であり,様々な道具を発明して量産し,複雑なコミュニケーションを身につけ,発展してきました。長年を経て発展した文明は,現在では家庭教育や保育,幼・学校教育に集約されて,子ども達に伝えられます。ですから,子ども達は,それこそ人類の歴史を飛躍するように,「進化」していきます。 このような時代ですから,子ども達の発達のスピード(進化のスピード)は個人差があって当然ですし,子どもが育つ環境も多様化
続いて2000年代の地域療育を振り返ってみましょう。戦後50年にわたり,日本の障害者福祉の根幹を支えてきた措置制度(国が措置するので原則無償)は,契約制度へと大きく舵をきることになります。 2000年6月,「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律」が成立します。これによって,2003年4月から,障害者の自己決定を尊重し,利用者本位のサービスを提供しようとする新たな仕組みが導入されることになりました。いわゆる,支援費制度です。 支援費制度は,障
発達障害の精神疾患の合併率など、大規模な予後調査が行われるようになりました。発症リスクを知ることで、予防的な介入を行うことができ、二次障害の増悪を防ぐことは大切です。 先日は、未診断の自閉スペクトラム症(ASD)の自死に関するリスク研究(通常の約11倍というハイリスクという結果でした)について書きました。今回紹介する論文は、ASD、注意欠如・多動症(ADHD)で死亡リスクは増加するかを検討したものです。 カナダのオタワ病院研究所が発表した研究は、ASDとADHDの患
子どもの身体・精神・情緒の発達において、安全・安心な環境をつくり、守ることは大人たちの基本的責務です。しかし、思いもよらなかったコロナウイルス感染症のパンデミックにより、私たちの生活環境は脅威にさらされ続けています。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻は、世界にさらなる脅威を与えています。 今回は、子ども達の視点から、これらの災害の脅威について考えてみましょう。パンデミックも戦争も、公衆衛生上の甚大な障害です。パンデミックは主に自然災害(一部は対応の失敗による人為災害)、
悲しい戦争が起きています。私たち誰もが望まないはずの戦争。なぜ起きるのでしょうか。国際的な平和の祭典が行われている最中の、戦争やミサイル発射。私たちは、心ない為政者たちの暴挙を許してはいけません。 戦争の起こる直前、緊迫するウクライナ情勢について、NHKのキャスターがロシア大使にウクライナ侵攻はあり得るのかと尋ねました。大使は、ロシアは戦争する意図もなく、計画もないと返答しました。胸中は複雑だったでしょう。 戦争は綺麗ごとではない、戦争反対を唱えれば戦争がなくなる
自閉症スペクトラム(ASD)の人は方言を話さない傾向にあるという研究結果が出て、ちょっとした話題になっているようです。このことについて、少し考えてみたいと思います。 臨床で出会う人たちで考えると、ASDの方々は方言を話す人もいますし、話さない人もいます。標準語というか、少しオーバーな丁寧さで話す人もいます。大人びた口調のお子さんもいらっしゃいますし、話すこと自体が上手でない大人の方もいます。 その一方で、方言を流暢に使い、快活でよく話す、とてもお話し好きなASDの人
自閉スペクトラム症(ASD)の発症率は、統計上では男児が女児の約4倍だということがわかっています。しかし、最近では、男児の方が自閉症になりやすく、女児がなりにくいという単純な話ではないと考えられるようになりました。 男児の方が障害特性が典型を示し発見しやすいことが想定され、発見思春期で精神症状が重症化するのは女子で割合が高いことなどから、ASDの女児は反復的行動やソーシャルスキルの欠如が目立ちにくく(カモフラージュという言い方がされます)、その発達過程にも性差があるかもし
障害児通園の頃、療育は措置制度でした。ですから、親子は自己負担なく誰でも通園することができました。もちろん、療育後の保育所移行の際も、保護者の就労も問われる必要はありませんでした。 しかし、現在は、だいぶ仕組みが変わってしまいました。障害福祉ではなく児童福祉法に基づく支援になったのはよいのですが、2003年に支援費制度が開始されて以来、契約方式が導入されたため、療育には自己負担が原則、発生します。 保護者は、障害児通所支援では市町村に、障害児入所支援では都道府県に支
自閉スペクトラム症(ASD)は、社会性やコミュニケーションの障害、感覚過敏といった生きにくい障害特性をもちます。そこに、周囲からの無理解や誤解が加わると、いじめ、虐待、搾取、社会的排除、貧困などの辛い状況に追い込まれ、メンタルヘルスのリスクを抱えることが知られるようになりました。 従来から、ASDの人たちは、自殺念慮や自殺行動のリスクが大幅に高くなるのではないかと推定されています。過去の研究では、自殺念慮の生涯有病率は最大66%であり、自殺未遂は最大36%だとされていま
障害者プランは、1995年に政府の障害者対策推進本部が策定し、ノーマライゼーション7か年戦略とも呼ばれています。高齢者福祉のゴールドプラン・子育て支援のエンゼルプランとあわせて日本の保健福祉施策の福祉3プランといわれています。 障害者プランは、ノーマライゼーションとリハビリテーションの理念に基づき、障害者対策の重点的な推進を図るものでした。地域生活のためのグループホームの推進、障害者の社会的自立に向けた障害特性に応じた教育体制の確保、教育・雇用・福祉の連携、社会のバリア
感情・情動の中枢として注目される大脳の扁桃体(アーモンドの形をしているのでそう呼ばれます)は、特に不安や恐怖といった感情に深くかかわっているとされています。過度な不安においては、扁桃体の活動が過剰になることが知られています。逆に、感情や対人コミュニケーションの障害が扁桃体の活動低下と関係することもわかっています。 この扁桃体は記憶の中枢である海馬に隣接して、盛んに情報をやり取りしています。感情と記憶はよく連動するのですね。最近では、共同注意の発達にも関係していると想定さ
「障害者プラン」に入る前に、早期療育の歴史についても振り返っておきましょう。全国に先駆けて障害児保育を開始したのは、1973年の滋賀県の大津市です。そして、1974年に乳幼児健診によって早期に発見された障害を、「集団のなかで子ども達は発達する」という理念のもと早期療育を推進します。 従来は、親が就労しているか、親自身の病気のために「保育に欠ける」子ども達が保育所の対象でしたが、障害のある子ども達も受け入れるようになったため「保育元年」という呼び名があります(待機待ちが多