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公衆トイレでの “手を洗わない率” から思うこと

 どこかの調査結果を見たわけではない。全くの個人的な感触だが、鉄道駅などの公衆トイレで手を洗わない人がけっこういるように思う。自分の見たところによれば、5、6人に一人は手を洗わずにそのまま出ていく。コロナ禍になってから手を洗う人は増えたように思うが、かつては3人に一人ぐらいは手を洗っていなかったというのが実感だ。

 特に寒い冬場はひどい。2人に一人は全く手を洗わないか、指先を水で一瞬濡らすだけで “手を洗ったふり” をして、髪をさっと整える様子を見せてそのまま出ていく。自分の髪の毛をハンカチ代わりにしているということなのか。

 もちろん場所による。冷たい水ではなくお湯が出るようなところだったら冬場でも手を洗う率は上がるだろう。ペーパータオルやエアタオルが備え付けられているところでは、手を洗わない人はほとんど見かけないような気もする。上に挙げた “手を洗わない率” は、あくまで、鉄道駅や古いショッピングセンターなどの、あまり設備の整っていない公衆トイレでの話だ。

 季節や地域、時間帯などによって大きく状況は異なるだろう。ましてや男性トイレしか入ったことのない筆者は、女子トイレでの “手を洗わない率” など知りようがない。だから、一般化はできない全くの個人的な受け止め方だと思って読んでほしい。

 かつて勤めていた会社の上司は、トイレで全く手を洗わない人だった。手洗い場の前ではいったん立ち止まる。鏡を見て、服装や髪の乱れがないかチェックする。しかし水道の栓に触れることはない。そのまま出ていく。こちらは、「手を洗わなくて、気持ち悪くないのかな?」と内心で思っていても、本人の問題なの黙って見ていた。しかし、その上司から仕事中に書類を渡されたりしたときに、「この人はトイレで手を洗わない人だった」ということをふと思い出したものだ。

 たとえトイレで手を洗わない人を見ても、他人に直接迷惑を及ぼすわけではないので、本人がよければ、放っておいてよいと思う。ただ、そういう行為を見てしまうと、「この人は衛生観念が低そうな人だな」という印象をどうしても持ってしまう。まずありえない話だが、そういう人が仮に手料理を作ってくれるとしたら、少し抵抗を感じるだろうと思う。

 公衆トイレなどで、『手を洗いましょう』という張り紙をときどき見かける。それを見て、「手を洗うか洗わないかは、個人の自由だ。人からとやかく言われたくない」と憤慨する人はまずいないだろうと思っていた。しかし、最近、必ずしもそうではないのではないか、と思うようになってきた...

...という文章をだいぶ前に書きかけていた。実は、この文章のオチは、トイレで手を洗わない人とマスクを嫌がる人の相似性を記述して、反マスク派の主張についてはそれなりに頷けるところはあるものの、結局、そういう人は衛生概念が低い人なのではないのか、ということにするつもりだった。しかし、コロナ禍の終息が具体性を帯びてきた今では、マスクを嫌がる人に対してあまり奇異な見方をすることもできなくなってきた。

 ということで、上の文章はボツにすることにした。マスクをしない人に対して、衛生概念が低そうだ、なんて思うことは今後やめにしよう。

 でも、トイレで手を洗わない人は衛生概念が低い人かも、という思いは残念ながらすぐに払拭できそうもない。ただ、トイレでふだん手をまともに洗わない人は、マスクをしない人のように見た目でわからないということが悩ましい。もちろん、言われることもなく、衛生概念といっても基準があるわけではなく、偏見も含む全くの個人的な感覚なのはわかっているのだが。

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