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カンマ vs ピリオド

 仕事で工学分野の文章を扱うことが多いのだが、同じ言語で書かれた文章でも地域や国によって数値の表記が異なることがあって、時に混乱させられる。

 日本では、数値の桁取りの "," (カンマ)は3桁ごとのまとまりを示す記号、"." (ピリオド)は小数点を示す。これは、米国や英国でも同じ。しかし、この表記方法は世界共通というわけではない。だからややこしい。

 例えば、英語の文章の中で "123.456" という表記があったとしよう。米国人や英国人が書いた英文なら、素直に「123.456(百二十三点四五六)」と読んでも間違いない。ところが、フランス人やドイツ人が書いた英文の場合は注意が必要だ。

 フランス語やドイツ語では、数字の表記で、カンマ(コンマ)とピリオド(ポイント)の使い方が逆になる。だから、"123.456" と書かれていれば、「十二万三千四百五十六」のことになる。一方、"123,456" が「百二十三点四五六」。日本語に置き換える場合は、カンマとピリオドを入れ替える作業が必要になる。

 だいたいの場合は、この知識があれば何とか判断できる。だから、仮に "12,3" という数字を見ても、「これは、日本語では『12.3』だな」となる。しかし、"1,234" と書かれていたら、「1.234」なのか、そのまま「1,234」と読めばよいのか迷うことになる。

 まれに、フランス人やドイツ人が書いた英文で、この扱いが混乱して、カンマとポイントがこっそり入れ替わってしまっていることがある。想像だが、書いた当人は親切心で、「英国人や米国人が誤解しないように、そちらの流儀に合わせてやろう」という心理が働くのかもしれない。それでも、うっかり日頃の習慣が出てしまって修正しきれていないことがあるのだろうか。こちらとしては、そういう場合が一番困る。

 この場合は、文脈や関連する情報から推定しながら、どちらの意味か "裏を取る" 必要がある。それでも、最終的にどちらから判断しきれないケースも、まれながら出てしまう。

 少し調べてみたが、上に示したカンマやピリオド以外にも、桁取りで空白文字(スペース)を使ったり、アポストロフィー(')を使ったりする国もあるようだ。こちらとしては、何とか世界共通の表記法にできないものかと思うが、長年の習慣だからそうもいかないだろう。

 数値表記のやり方で色分けした世界地図を作ってみれば面白いかもしれない。

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