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中国人になった話@カラチ

バンコクの夜遊びストリートを歩いていた時
酔っ払ったアジア人の男が、
路上で客引きをしているタイ人の女に
アイムジャペニジュと下手な英語で国籍を言っていた。

うそだろ。
日本人はジャパニーズと発音するのだ。
お前、ズと発音できない韓国人だろ。
チーズをチージュと発音する韓国人だろ。

日本人のふりをして客引き女にボディタッチをしているが
日本人はそんなみっともないことはしない。
いや、する人もいるな。日本の恥。


私は日中韓の人々の違いを外見でなんとなく区別できる。
顔立ちだけでなく、髪型や服装、
英語を話せばその母語干渉から国籍の推測が容易だ。

一方で、よその地域の人から見れば、
日中韓の違いなどないも同然だ。
みんな目が細くて箸を使って料理食べるんでしょ?程度。
SONYって韓国の会社?とかって平気で聞かれたりする。

まあこっちとしたってヨーロッパ各国人の違いなどわからない。
みんなハンカチで鼻をかむんでしょ?程度。
お互い様だ。


話しは変わって飛行機の経由便の話。
JALやANAは今ではほとんど経由便がないのだが、
私がよく飛行機に乗っていた2000年代初期は経由便があった。
(さすがにアンカレジ経由とかはもっと前の時代)

例えばJALが成田からブラジルのサンパウロまで飛ばすのに
どうしても飛行機の航続距離が足りない。
だから飛行機はニューヨーク経由となっていた。
(曜日によってはロサンゼルス経由もあったような気もする)

この場合、成田を出発しニューヨークに着陸すると、
乗客乗員は全員降機する。
そのままアメリカに入国する乗客もいれば、
空港で待機した後に再び機内に戻りサンパウロに行く乗客もいる。
乗員は交代し、新しいメンバーがサンパウロ行きを担当する。

経由便は全部が全部このようなパターンではない。

私が昔モロッコのカサブランカに行ったとき、
ドーハからのカタール航空はリビアのトリポリ経由だった。
リビアは半分鎖国しているような国だ。滅多に入国できない。

飛行機がトリポリに着陸し、私は空港の探検を楽しみにしたのだが
カサブランカ行きの乗客はそのまま座って待機するように、
というアナウンスが流れ、空港すら降り立つことが許されなかった。
清掃スタッフが乗ってきて機内の掃除を始めるのだが、外出禁止。
こういうパターンもあるのだ。

私が昔オマーンのマスカットに行ったときも経由便だった。
バンコク発のタイ航空は、パキスタンのカラチを経由した。

バンコクから最終目的地のマスカットまで航続距離は問題ないのだが、
タイ航空はバンコク-マスカットを直行便にしてしまうと
座席が埋まらない(需要がない)のを知っているため、
わざと経由便にしてカラチの乗客を拾う戦略なのだ。

バンコクを飛び立った飛行機がカラチに着陸した。
さて、どっちのパターンか。
一旦降りて空港で待つのか、それとも機内ステイか。
アナウンスに耳を澄ませる。

まず、カラチで降りる乗客が最初だと。そりゃそうだ。
ただ私は今回パキスタンに入国予定はない。
続いてアナウンス。
マスカット行きの乗客は手荷物を持って降りろと。

飛行機を降りたところには、パキスタンのヒゲの係員がいた。
降りてくる乗客の搭乗券とパスポートを確認している。
私の搭乗券はバンコク発マスカット行きとなっている。
それなのにパキスタンに入国してしまったら大変だからだ。

ヒゲは私の搭乗券とパスポートを見ながら
「Ohhh JAPAN」と親日的な様子だった。
パキスタンの街は日本の中古車であふれかえっている。
パキスタン人は日本の高品質な製品を通して親日が多いのだ。

「お前はあっちだYO」と、ヒゲは空港内を指さした。
入国審査場に進むルートではなく、ベンチで待機コース。
「どうしてパキスタンに来ないんだYO」とヒゲが言うので
帰りに寄るから楽しみにしているよ、と口から出まかせ。
いや、これは気遣い。優しいウソ。

とりあえずトイレに行き、その後はベンチに座って搭乗を待つ。
経由便は時間のロスが無駄なのだが、
タバコを吸いたい人にとっては絶好のモクモクタイムらしい。
私は非喫煙者なので、腰痛防止のストレッチタイム。

すると「JAPAN」と大音量で私を呼ぶ声が響いた。郷ひろみ?
そちらを見ると、ヒゲが私を手招きしている。ひろみじゃなかった。
そして周囲が彼や私の動向を見ている。どうした?

ヒゲの元へ近づくと、そこにはヒゲだけではなく
飛行機を降りたばかりの2人の東洋人の男がいた。
私は一発で彼らの国籍を判定した。中国人。
その角刈りの髪型や体毛の薄さは中国人確定。

ヒゲが私に言う。
「こいつら英語が通じないんだYO」
あー、なるほど。中国人の出稼ぎさん。
一帯一路でガンガン他国に投資するふりして
自国民送り込んで儲けてるって噂のあれだ。

「だから通訳してくれYO」
いやいや、彼ら中国人だし。日本人ちゃうし。
「同じようなもんだろ?」
いやいや、かなり言語は違うよ。国民性も違いまくり。

「パキスタン人はインド人とコミュニケートできるYO」
知ってる。パキスタンの公用語のウルドゥー語と
インドのヒンドゥー語って似ているらしいよね。
でも日本語と中国語はもっと遠い関係なのだ。

ヒゲの中では日本も中国も同じようなものらしいが、
そうでないことを理解してくれないようだ。
ヒゲは中国人のパスポートをチェックしたいようなのだが
パスポートすら通じずに困っているとのこと。

私は自分のパスポートを取り出し、彼らに見せた。
そして你(ニー)と発音し彼らを指さしてから、
自分のパスポートを指さした。つまりあなたのパスポート。
パスポートの中国語なぞ私は知らない。

これで意思疎通は図れたのだ。
彼らはヒゲに自分たちのパスポートを見せ、
マスカットまで行く乗客だと確認が取れた。
お役に立てて光栄だ。

小一時間後、飛行機の搭乗が始まり、
私や中国人たちは再び機内に戻った。

そしてマスカットに到着する少し前。
例の中国人二人が私の席までやってきた。
なんだろう、お礼でも言うのか?
中国人がこんな礼節を重んじるだなんて信じられない。

彼らはパスポートとオマーンの入国書類を私に渡した。
えっと。
これは。
私に書けって依頼ですよね。
の割に全然遠慮のない態度でいらっしゃるんですけど。。。

やれやれ。



ま、海外旅行初心者の人には直行便をお勧めする、という話です。
経由便はアナウンスを聞き取って動く必要があるので、
英語力が皆無の人は避けた方が無難かと。
一昔前のカタール航空やトルコ航空などが経由便多めのイメージ。




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