スキューモーフィズムの功罪

スキューモーフィズムという言葉はご存知だろうか?

これは現在ではWEBデザイン界隈の用語なのだけれど、古くは1900年前後から使われているらしい。わかりやすく言うならば、物質性=物の模様や質感などを真似たデザインやデコレーションのことだ。

たとえば一時期のiPhoneのカレンダーは紙の質感を再現していたり、iBookの本棚は木目調の本棚風の画像に本が並んでいた。


WEBに限らず、建築や内装の世界でもこの装飾はよく出てくる。

木目シートで覆われたエレベーターのドアパネル。中身は当然ながら鋼板だ。

ギフトショップの木目のカウンターもよくみればプリントの木目を樹脂で覆ったプリント合板(化粧板)だったりする。

車の外装でも木目調のものがある。もちろんこれだって木目柄のプリントシートを貼ったものだ。

あなたの家の足元のフローリング風の模様も、塩ビのシートに木目のプリントを施されたものかもしれない。


これらに関しては賛否両論あるとは思うけれど、そこにある木目が本物かプリントされた画像なのかは多くの人には興味もないだろう。

視覚情報を優先した上で、柄や見た目を真似ることで本物風を装う。中には本物よりも耐朽性の高い偽物もあるのだけれど、やっぱり質感では本物には遠く及ばない。

それでもこうした表現が採用されていたのは、新しいテクノロジーに対して慣れ親しんだパターンを取り入れることが親和性を高めると期待されていたからだ。


対して、一時期から世の中のデザインの流れはよりシンプルでそぎ落とされた表現や機能性へと舵を振った。これがAppleやGoogleを中心としたフラットデザインと呼ばれる流れである。

要素をシンプルにし、必要な機能に絞ることで認知しやすく使いやすいインターフェイスになる。その理論や仮説は正しかったからこそ、Appleのデザインは世界中で受け入れられて熱狂的なファンを生み出した。

これはモダンデザインの潮流そのものでもあるし、フラットデザインへの流れはInstagramのアイコンの変遷なんかがわかりやすい例だと思う。世界はどんどんフラットに向かっていた、つい最近までは。


カウンターカルチャーとしてのデジタルなアナログ文化

フラットデザインの流れは、突き詰めれば答えが限られてくる。使える要素が少なく、微細なディティールを研ぎ澄ませれば必然的に仕上がりは似たものになって行くだろう。

それに対して、最近の表現を見ているとデジタルでアナログな表現を取り入れることがどんどん普及しつつあるようにも感じる。

例えば写真に手書き文字を入れたり、ベタ面の塗りではなくあえてムラのある塗りを施したり。


内装でも同じことが言えて、DIYっぽいあえてのムラのある仕上げや、ピカピカツルツルの雰囲気よりも汚れやラフな仕上がりをあえて見せることが取り入れられるようになってきた。

これはきっと、スキューモーフィズムの仕上げには触覚的な部分での情報が抜け落ちていることが多いのが理由な気もする。

例えば、木目のカウンターでも樹脂製プリント合板で木目にするなら必然的にツルツルになる。中には凹凸のパターンをつけているものもあるけれど、樹脂の厚みは所詮1〜2mmなので質感では本物とは比べ物にならない。

何より、工業製品は規格が同一なのがメリットでありデメリットなので、どうあがいても同じ柄やパターンの連続になってしまう。その点、オールドメイドな仕上げでは均一ツルツルは苦手だが、ムラやラフさを味として出すのは得意だ。


僕もムラ感やラフさは大好きなので、この流れ自体はとても好ましいのだけれど、俯瞰してみるとよりクラフト感を取り入れる方に世の中の表現は流れて行っているようだ。

単調なスキューモーフィズムはダサいものの代名詞になりつつあるけれど、あの表現自体はそろそろ一周回って新しい使い方やおもしろい転用方法が出せるんじゃないか?という気もしている。

それこそ数十年前には実用化されていなかった新しい技術と組み合わせたら、おもしろい表現になったりするんじゃないだろうか?


独立して6年。ほぼ全てがクライアントワークな日々だった。

そろそろ、自分の為だけに興味のある表現に手を出してみてもいいのかもしれない。

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