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空間デザインのポイントは接触面

ここ一週間ほどは施工現場に缶詰めで、ずっと左官やパテなどの作業をしています。

別にもっと安く早く仕上げようと思えばできるんですよ。

貼りものと呼ばれるフローリング柄のビニールシートとかを貼っちゃえば良いし、壁だって手間のかかる刷毛塗りじゃなくてローラー塗り、もっといえば壁紙にしちゃえば短時間で効率的に仕上げられます。

でも、そういうコーティング的な発想の仕上げ方があまり好きじゃないんです。


適材適所を突き詰めたい

床にビニールシートを使うなら、リノリウムや単色のシートなどビニールシートの利点や特徴を活かせるものを使いたい。

フローリング柄にする理由が木質床材っぽくしたいというなら、ビニールのフローリング柄のものを使うのは悪手だとしか思えない。見た目だけ良いという意思表示に他ならないから。

空間で見た目だけで良いですと言ってしまえば、提供するサービスや商品までその思想は伝搬してしまう。それは避けなければいけない。

木質床材が欲しいならフローリング、フローリングを貼るお金がないならそれこそ下地合板にクリア塗装で仕上げるって手でも良いと思うのです。だってベニヤだって本物の木材だから。柄だけの偽物でごまかすより、よほど誠実だと思う。

壁紙に関しても、使うべき箇所で適切に使いたい。

間違ってもコスパだけで選んで貼りたくない。壁紙には壁紙の良さがあるのだから、プリントされた柄を貼って切り貼りのデコレーションをして空間デザインなんて言いたくない。


こうした仕上げの話もそうなのだけれど、僕は空間デザインにおいて重要なのは境界と接触面だと思うんです。

噛み砕いていえば、手や足の触れている箇所と、目のやり場。

そこには見た目以上に質感や温度などの情報が載っていて、だからこそどんな質感や情報を載せるのかは空間に来る人に対しての暗黙のメッセージになるはずなのです。


例えば、高級ブティックの床材は天然石やタイルです。硬質で上質、コントロールされたバランスがあります。それは当然、狙いすまして選ばれている。

床材なら立っているときの足裏の感覚、歩いているときの足音、照明の当たり方や反射の感じなど、色々な反応があるはずです。

他にも壁、テーブル、椅子、ドアやドアノブ、トイレの水栓金具、照明のスイッチ類、、、空間の中には無数の接触面があります。


特に手の触れる箇所は質感、触感、温度感などのさまざまな情報が一気に伝わります。指先は人体の中でも特に感覚の鋭い場所だからです。

デザインというとつい視覚効果的な側面にばかり注目されがちなのですが、こうした質感のコントロールにこそ空間デザインの妙味があると最近は強く思います。

そして、これらは写真では伝えきれない。実際に現地で体験しなければわからないことが多いのです。


なぜその素材なのか?

空間デザインをする上で、素材の選定はかなり重要なポジションを占めます。

今回の空間は料理家×陶芸家×設計者+αのコラボするセレクトショップならぬプロジェクトショップなので、扱うものと相性のいい素材が必要でした。

メインとなる料理を盛り付ける食器=陶器の原料は土、そして釉薬の原料は鉄粉やガラス粉や石灰など。そしてこれらは乾燥、焼成されて成形されます。

今回の床材に左官=土間のイメージを持ってきたことや、壁面に砂骨材入りのナチュラルな塗料を選んだのも、色味の選び方も含めてすべて理由があります。

ザラザラ、つるつる、しっとり、すべすべ、ひんやり、、、手触りや感覚には温度やリズムや記憶が絡んでくる。細かいパズルのピースのようなそれらを、一つ一つ狙って配置していくのです。

これらを解きほぐして再構成してバランスを整えたり、あえて崩したりする。それが、僕ら空間デザイナーのお仕事です。


なんてことを思いつつ、助っ人の甲斐もあり床はだいたい仕上がってきました。さて、次はメインディッシュのカウンター作りです。

年末年始も隙をみて工事な感じですが、2019年はいよいよイノシシ年で人生3回目の年男。思いっきり良い年にできるように、仕込みがんばります!

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