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ハイパースケールからインディースタートアップの時代へ。“アンチメガファンド”のカルチャー【Off Topic Ep205】

宮武徹郎と草野美木が、アメリカを中心とした最新テクノロジーやスタートアップビジネスの情報を、広く掘り下げながら紹介するポッドキャスト『Off Topic』。このnoteでは、番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けする。

今回は「#205 インディーズVC・スタートアップの時代」から、VCのメガファンドの懸念と、“アンチメガファンド”のインディースタートアップについて。VC大型化が進むことで、さまざまな課題が生まれているという宮武。ただそうしたなかでも、現在のVC・スタートアップ業界にカウンターカルチャー的な動きが出てきたとも。2008年以降の、より大規模なリターンを追求するハイパースケールの時代から何が変わろうとしているのか?


なぜファンドの大型化は進むのか

ゼロ金利政策という経済状況は、VC業界とかスタートアップ業界に大量の資金が集中する追い風となり、2008年から2022年前半は「ブリッツスケール」「ハイパースケール」の時代といわれていた。Facebookをはじめ、TwitterやInstagram、Snapchat、AirBnBなど、大規模なエグジットが立て続けに起こり、投資家たちも次のマーク・ザッカーバーグを探すべく様々なスタートアップに投資をし始めた。それによって、起業家、そして起業家をサポートするVC、さらにはVCに投資するLPを志す者も増加していった。

アメリカのVCファンドの合計調達額は2013年から2022年にかけて8倍に増え、VC調達額を新規スタートアップの数で割ると、2022年は2013年と比べてスタートアップは5倍VC資金にアクセスしやすい、つまり調達しやすい環境になっている。

Terrence Rohan

しかし、それにともなって同じ勢いでスタートアップが増えたかというとそうではない。出資を受けている新規スタートアップの数の同期間の増加率は2倍に満たず、如実に増えているのは、その裏方にいるVCの資金力だということがわかる。

そのVCが調達した資金がどこに流れているかというと、既存のVCファンドである。米調査会社のピッチブックによれば、2019年から2022年にかけて、VCファンドが調達した資金のうち、50%以上が5億ドル以上の規模のファンドへの投資に使われている。2022年では、50%以上が10億ドル以上の、いわゆるメガファンドに流れている。1号ファンド、2号ファンド、3号ファンドといった具合に、自社ファンドの投資サイズ(資金)の規模を大きくして成長させるのだ。このVCファンドの大型化は近年の大きなトレンドとなっている。

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