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【無料公開】MrBeast帝国の事業内訳とエコノミクスを予想 Daily Memo - 11/6/2023

今日のDaily MemoはMrBeastのクリエイター企業としてのエコノミクスの話です。こちらはOff Topic Clubメンバーシップ向けに平日に投稿している「Daily Memo」ではありますが、少し長文で画像やSNS投稿を表示する必要があったため記事として書かせていただいてます。気になる方は是非Off Topic Clubに参加してみてください!

今週11月8日(水)にMrBeastを担当するタレントマネジメント会社NightのCEOであるリード・ダクシャーがOff Topicのイベントで登壇するので、彼が担当するMrBeastのクリエイターとしての事業のエコノミクスについて解説記事を書くことにしました。個人的にはNightの影響があったからこそ、MrBeastは2020年あたりからコンテンツ企業からエンタメ企業へと少しずつ進化していると考えている。

そんなNight CEOのリード・ダクシャーとのイベントを気になる方は是非イベント登録してください!通訳付きでクリエイタービジネスの可能性について色々深掘りする予定です。


背景

MrBeastのエコノミクスの話は過去の動画で色々話しているが、今回はそれをまとめたときにどう見えるかについて話したいと思います。簡単に説明すると、MrBeastはコンテンツ事業、グッズ事業、そしてブランド事業を抱えている。

・コンテンツ事業:MrBeastのメインチャネルやサイドチャネル、TikTokなどの運営
・グッズ事業:MrBeastのTシャツやグッズの販売
・ブランド事業:お菓子ブランドFeastables事業

各事業のブレイクダウンをします。ちなみに今回出す数字は基本的に公開されている数字になるので、実際の数字と大分異なる可能性はあります。あくまでも予想なのと、MrBeastは今後の成長のためにかなり投資もしているので実際の利益額は記載したほど高くないと思われる。

コンテンツ事業

MrBeastは複数のYouTubeチャネルを運営しています。メインチャネルが最も有名で、今では2億人の登録者を超えています。

LinkedIn

それ以外に4つのチャネルを抱えています:
・Beast Philanthropy:慈善活動用のチャネル。広告収入やスポンサー利益を全て慈善活動の運用費用に回している
・MrBeast Gaming:MrBeastがゲームを遊ぶのを見れるチャネル
・Beast Reacts:様々な動画にリアクションするMrBeastのチャネル
・MrBeast 2:その他の動画のチャネル

MrBeast YouTube

各チャネルを見ると、Beast Philanthropy以外は基本的に運営を止めている。MrBeastも最近ポッドキャストでメインチャネルとFeastablesにしか集中していないと語っていたが、他のチャネルが更新されてないのでおそらく本当である。そう考えると、他のチャネルから多少なり売上はあるかもしれないが、基本的にメインチャネルの制作コストと売上に集中するのがベスト。ちなみにスタッフから他のチャネルの売上を聞いたが、まぁまぁすごい金額だった。

Forbesが2023年の最も収入を得たクリエイターのランキングではMrBeastが1位で、収入が$82Mと記載されていた。これは恐らくYouTube AdSenseからの売上だと思われる。All-In Summitで$60Mぐらいの広告売上じゃないかと聞かれた時にMrBeastは反論はしなかったので、今のところ$60M〜$80Mぐらいの広告売上と想定しても良いかもしれない。

Forbes

さらに動画売上としてスポンサーからの収入もあります。最近MrBeastの一つの悩みは動画再生回数が多すぎてブランドが支払える予算をはるかに超え始めていること。動画の再生回数で見ると2020年では1動画あたり平均4,000万再生回数を達成していたのが、今は1動画あたり平均1.4億再生回数を達成している。今年のスーパーボウルの試合の視聴者数は1.13億人だったが、そこで30秒のCMを出すのに$6M〜$7Mぐらいのコストがかかった。

そのスーパーボウル並みの視聴者・再生回数を毎月1本以上の動画を出している(直近は1週間ごとにリリースしている)。そう考えるとMrBeastの動画にスポンサーとして入る場合は億単位の支払いが必要となるので、多くのブランドとしては1本の動画にYouTubeの広告予算の半分以上をかけるのは無理だと言われたとMrBeastは語った。

MrBeastは恐らく1本あたりの動画で$500K〜$1Mぐらいはもらっているはず。それ以上もらっていてもおかしくないが、コンサバな計算でで$750Kあたりと想定します。今の動画配信ペースを考えると、恐らく24本(2週間に1回)の動画が公開されるので、スポンサー売上で$18Mぐらいあると考えられる。

そう思うとShopifyがおそらく長期契約を締結しているのは、もっと裏では複雑な契約にしているのかもしれないと一瞬思った。多くの動画でMrBeastはShopifyをスポンサーとして出していて、Feastablesやグッズ販売する際にもShopifyを活用している。Shopifyとしてはもちろん億単位の額を支払うことは出来るが、1年間の契約だと想定するとおそらく$10M以上の契約となる。これは仮説でしかないが、数億の支払い + FeastablesのShopify手数料を削減する契約にしててもおかしくない気がする。それをやることによってMrBeast側としてはアップフロントのキャッシュはそこまでもらえないが、Feastablesのマージンが改善される。

YouTube

ちなみに最近MrBeastはShopifyのNYスペースでポップアップ体験を提供した。

次に販管費の方を予想します。実際にスタジオにも遊びに行ったからこそ分かるが、MrBeastのメインチャネルのコストは本当に億単位の投資が必要。施設の大きさ、複数の大型セットとそれを実行するための費用、そして動画内で大体出てくる賞金を含めると、MrBeast自身が今年メンションした1動画あたり$2.5Mの制作コストは納得できる。ちなみに約1年前には$1.5Mと言っていたので、毎年上がっている。$2.5Mの制作コストと想定して、今年24本の動画を公開すると考えると、最低でも$60Mの年間制作コストとなる。ただ、MrBeastやマネージャーのReedさんは過去の動画やポッドキャストで制作に失敗したり、制作したものの出すクオリティには達さなかった動画が複数あると話したことはある。恐らく全ての出さなかった動画の制作費は$2.5Mではないのと、一部の制作した資産(セット、小道具、賞金)は他の動画に再利用できるはずなので、年間5本の動画を使わないと想定して、各動画のコストが$1Mと仮定すると、MrBeastの年間合計制作コストは$65Mぐらいとなる。

結果的にMrBeastは広告売上で$70Mぐらい、スポンサー売上で$20Mぐらい、そして制作コストで$65Mとなるので、年間で$25Mぐらいの粗利(売上の28%)を出している。しかしそれ以外のコストがある。確かMrBeastが語る$2.5Mの制作コストは全ての人材コストが含まれていない。彼は100人以上のチームを抱えていて、全員が政策に関わっているわけではない。それ以外にもサーバーコストなども含まれてないが、MrBeastは自社のサーバーをスタジオ内に立ち上げている。想定でしかないのと、過去のMrBeastの発言を聞いていると、メインチャネルはほぼ儲かっていない。それは一部儲かった資金を次の動画に投資しているからでもある。ただ、コンテンツは常に制作しないといけないので、基本的にはマージンは低いビジネスとして見るべき。

グッズ事業

グッズについては正直そこまでのデータがない。超人気YouTuberはグッズをローンチする際に1日$1M以上の売上を達成することもあるが、MrBeastはそこまでグッズを推してないため、年間で$5M〜$10Mと想定する。平均的にグッズ売上の利益率は10%ぐらいと想定すると、これはかなり小さな事業で、もしかしたらブランドビジネスと一緒に考えた方が良いかもしれない。

MrBeast Store

ブランドビジネス

2020年12月末にMrBeastはVirtual Dining Conceptsという会社と提携してハンバーガーのチェーン店「MrBeast Burger」をローンチした。リアルな場所は存在しなく、アメリカ中にすでに存在するレストランに食べ物を作ってもらい、それをフードデリバリーアプリ経由で提供する仕組みだった。だからこそローンチした時から300店舗を展開していた。めちゃくちゃ人気で最初はトラフィックが多すぎてMrBeast本人とマネージャーのReedさんがカスタマーサポートをTwitter上で行っていた。2022年に初店舗をオープンした時は1万人以上の行列ができるほどの騒動が起きた。結果的にゴーストレストランだったからこその課題(クオリティ担保やレストランに手数料を支払うのでマージンが低い)はあったものの、クリエイターブランドの可能性を見せつけた。そういう意味ではMrBeast BurgerはMrBeastがブランドとして成立するのかの非常に良い検証ポイントだった。

そこで立ち上げたのがFeastables。FeastablesはMrBeastとMrBeastを担当しているタレントマネジメント会社のNightが立ち上げたお菓子ブランドで、最初はチョコレートを販売している。ローンチ時は「チャーリーとチョコレート工場」をオマージュして、Feastablesの各商品のQRコードで抽選にユーザーが参加できて、数名がチョコレート工場を賞金として様々なチャレンジを挑む動画企画を出した。実際にMrBeastが作ったチョコレート工場はウィリー・ウォンカと同じようにチョコレートが流れる川がある。

Feastablesは2022年1月末にローンチ、最初はオンラインだけで数ヶ月以内で$10Mの売上を達成した。ただ本当に伸び始めたのはWalmartなど大手リテーラーに卸し始めてからだった。Walmartは最初から全米展開したいと言ってきたが、これは普通のD2Cブランドではあり得ない話。それ以外にも今年ではセブンイレブンや多くの大手スーパーにも入り始めた。去年末時点ではWalmartだけで週次で20万本のチョコレートバーを販売していた。1本あたりのFeastablesチョコレートバーが$2.50ぐらいするので、単純計算すると毎週Walmartだけで$500Kの売上、月次で$2M、年間で$24Mのペース。

Walmartはチョコレート関連の商品だけで年間$4Bの売上があるので、Feastablesとしては$24Mはまだまだ小さいが、そのWalmartの$24M売上の数字は去年の12月のもの。FeastablesはWalmartでめちゃくちゃ人気なチョコレートブランドになっているが、まだ棚スペースをあまり確保できていない。実際にアメリカ出張行った時も2個ぐらいのSKUしか置いてないのが少し不思議に思ったが、それはWalmartが年1回しか棚スペースをリセットしないから。恐らく来年の棚スペースはかなり多くのFeastables商品が置かれるはず。Walmartとしては人気商品を抱えたいだけではなく、Feastablesを欲しがる、今までWalmartで購入しに行かなかった層も囲い込める。

売上ベースだとどれぐらいかと言われると計算しにくいが、MrBeast Burgerは2023年1月時点で$150M以上の売上と$30Mぐらいの利益を出していたらしい。ただ、今はMrBeastと運営会社のVirtual Dining Conceptsが訴訟で揉めているので、今後MrBeast Burgerは運営しないと想定するべきなので、一旦売上はゼロとして計算します。

Feastablesに関しては$200Mぐらいの売上を今年想定しているとMrBeast本人が語った。Hersheyなどの決算発表などを見るとチョコレートブランドのマージンは大体30%〜50%ぐらいと想定できる。40%と仮定すると、Feastablesの今年の粗利は$80Mぐらいの粗利、さらに人材やオペレーションコストを考えると最終的に20%〜25%ぐらいの利益率になると考えている。そうすると$200Mの売上に対して、大体年間$40M〜$50Mの利益を出している。ただ最近だとリブランディングをしたり、NBAチームのユニフォームのスポンサーの契約もしたので、それだけで年間$10M〜$15Mぐらいと想定できる(楽天はGolden State Warriorsのユニフォーム契約で年間$20M払っていると言われている)。そう考えると利益は$25M〜$40Mぐらいに落ちる。

事業単位ではなく、全体で見た時のMrBeastエコノミクス

コンテンツ事業、グッズ事業、ブランド事業をそれぞれ合わせると、以下のようなエコノミクスになる。

想定売上
・コンテンツ事業:$90M
・グッズ事業:$10M
・ブランド事業:$200M
合計:$300M

想定利益
・コンテンツ事業:$10M
・グッズ事業:$1M
・ブランド事業:$25M
合計:$36M

普通に事業としての数字はこれでまとまるが、個人的には各事業を単体で見るのではなく、ディズニーと同じような形で見るべきなのではないかと思っている。ディズニーも同じように映画やコンテンツを作ってそれでマネタイズしているが、最も利益率が高くて重要なマネタイズポイントはテーマパークである。それと同じようにMrBeastはコンテンツからリアルな商品や体験へとマネタイズ戦略を拡大している。

Business Insider

そしてMrBeastの利益率を20%〜25%と高めの数字に想定しているのは、もう一つ理由がある。Hersheyの利益率は10%〜15%ぐらいだが、それはマーケティング予算が含まれているから。Hersheyのマーケティング予算は売上の25%弱ぐらい。Feastables単体で考えると$200Mの売上に対して$15M〜$20Mのマーケティング費用なので一見小さく見えるが、実は本当のマーケティング予算はそこではなくコンテンツ事業の全体がマーケティング予算として考えるべき。そう考えると、MrBeastは全体的に$300Mの売上に対してマーケティング予算は約$100Mぐらいと売上の33%ぐらいを占めている。

Hershey 2022 Consolidated Financials

これは一般的なD2Cブランドより遥かに高い数字ではあるが、一つ大きな違いがある。それはMrBeastはマーケティングコストをマネタイズできること。多くのD2Cブランドのマーケティング予算はブランド広告やプロモーション広告なので、投資でしかない。コンテンツそのものから売上を作れなく、コンテンツを通して商品を販売しなければコンテンツにかけるコストを下げるしかない。MrBeastやクリエイターブランドの一つの強みはクリエイターファーストであることなので、コンテンツ自体が広告やスポンサー売上が付くこと。そうするとマーケティングコストがほぼゼロに抑えながら、その上にブランドを作ると通常売上の15%〜25%かけるマーケティング予算をかなり削減できる、もしくはそのマーケティング予算をより大きな投資(例:NBAチームのユニフォームスポンサー)にかけられる。これがクリエイターブランドの一つの大きなアドバンテージとなる。

告知:On Air 2023 by Off Topic

Off Topicでは「クリエイターが次世代起業家になる」ことについて話しています。何故クリエイターが既存の大手ブランドの競合になり得るのか、そして今のクリエイターはどのように進化しているのかについて詳しく話してくれる海外・国内ゲストをお招きしました。

セッション①:クリエイタービジネスの可能性 (通訳付き)
1.7億人の登録者を抱える人気YouTuberのMrBeastを担当するタレントマネージメント会社Night Media CEOのリード・ダクシャー氏が日本初来日してクリエイタートレンドやクリエイター事業について一緒にトークします。Night Mediaが行うクリエイター支援、そしてクリエイターが事業化する理由、チーム構成、クリエイターの役割、リスク、気をつけるべきポイントなど話す予定です。

セッション②:ショートフォーム動画の可能性と今後
2部セッションでは、ゲストとしてグローバル規模でも活躍し、海外クリエイターともコラボレーションされているバヤシ氏とともに日本から世界的な規模へ成長させるためにどうコンテンツを発信されているのか。ショートフォーム動画クリエイターとして何を気をつけているのか、今後どのように進化していくのかについて話す予定です。

【イベント概要】
◼︎イベント名:On Air 2023 by Off Topic
◼︎日時:2023/11/8 (水) 18:00〜21:00 (開場17:30)
◼︎会場:Tunnel Tokyo(Googleマップ
東京都品川区西品川一丁目1-1 住友不動産大崎ガーデンタワー 9階 (JR・りんかい線 大崎駅 南口 徒歩6分
◼︎開催形式:ハイブリッド開催
◼︎主催:Off Topic株式会社
※1階の受付機にてイベント開催前にメールにて送られるQRコードをスキャンして、エレベーターまで9階までお越しください。

【タイムテーブル】
17:30〜18:00 開場
18:00〜18:15 挨拶、Off Topicの紹介
18:15〜18:30 Night Mediaの紹介
18:30〜19:30 クリエイタービジネスの可能性(リード氏、Off Topic宮武)
19:30〜20:00 ショートフォーム動画の可能性と今後(バヤシ氏、Off Topic宮武・草野)
20:00〜21:00 懇親会

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