「主役」よりもワードワーブの中で輝けるような「名脇役」になりたい。 「aacero」デザイナーの八幡夏樹さん、後藤彩さんにお話をうかがいました。【第1話】



aacero(アーチェロ)は2011年にスタートしたレディースブランドです。

デザイナーは八幡夏樹(やはたなつき)さんと後藤彩(ごとうあや)さん。ともに文化服装学院出身のおふたりです。

aaceroはイタリア語で「広葉樹」という意味。「葉の色のように、移ろいやすい女性の機微を表現する」という思いがこめられています。

aaceroの洋服は、可愛いだけでなく、繊細で美しい生地をぜいたくに使ったものが多いので、年齢をかさねていくごとに、可愛さをたのしんだり、素材をたのしんだりして、そのときの考えのなかで変わらず着つづけてくことができます。

シンプルな洋服にあわせてコーディネイトのアクセントにしたり、「普通の服とはちがうけど奇抜すぎない」バランスのよさが特徴のファッションブランドです。 

今回は、おふたりに洋服のデザインができるまでのこと、ブランドをはじめるきっかけからこれからのことまで、伺いました。


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− 本日はお忙しいなか、お時間をいただきありがとうございます。 まずは、八幡さんと後藤さん、おふたりともデザイナーということですが、それぞれの役割はどのようにわけられているのですか?


八幡   はい、ふたりともデザインしますが、aaceroは女性のもつ感覚を大事にしたいと考えているので、核になるような部分は後藤に任せています。

あとは、おたがい性格が正反対で、後藤は要素をどんどん足していくタイプですけど、僕は引き算したり、全体のバランスを考えるタイプ。だから、後藤のアイデアをまとめたり、整えたりするのが僕の役割です。


後藤   私がデザインするときは、次のシーズンを考えはじめる時期に、それまでなんとなく気になっていたものが目につくようになってきます。

たとえば、14年の春夏はインドの「ホーリー祭」というお祭りがテーマでしたが、これもたまたまネットでみかけたのがきっかけでした。

そんなふうに「なんとなく気になるもの」のことを調べていくうちに、「これとファッションを結びつけたらおもしろいかも」と考えはじめます。

日常のなかにある物事とか状況からデザインしていくことが多いので、思いついたアイデアを八幡に伝えていきながら、毎シーズンのコレクションを形にしていきます。



− 去年(2013年) は、「ホーリー祭を体感するイベントの開催」にむけて、クラウドファウンディングにもはじめて挑戦され、みごと目標金額を達成することができました。今回挑戦されてみて、どうでしたか?


後藤 はじめてみる前は不安のほうが大きかったのですが、あたらめて見てくれているひとはいるんだな、ということを実感しました。

純粋に「かわいいな」と思ってもらえるものやことに、お金を払って応援してくださるひとたちがこんなにいるんだ!というのはすごくうれしい驚きでした。


八幡 ファッションやアパレルはクラウドファウンディングとしてはむずかしい分野だと聞いていたので、僕たちもお話をいただいて「何をしようか?」というところからはじまりました。


それで、お客さまと一緒につくりあげていくような、作り手の意思とか思いを共有できる場があればおもしろいと思って、こういうイベントを考えました。


「ホーリー祭」開催のようす



後藤   まだ、これは本当にはじめの一歩なので、これから完成度もあげていきたいと思うんですけど。
ファッションショーとか展示会は、商品がお店にならぶ半年前にやることが多いじゃないですか。

でも、やっぱりお客さまにとっても、私自身にも「買ったら今着たい」という気持ちがあるので、その差をうめることはできないのかなと考えていました。そこで、春夏の商品がお店にならびはじめるタイミングでこういった「お披露目会」のようなイベントをすることで、今の気分のまま買った服を着てもらえるように今後もしていきたいです。


八幡   もちろん、そこには生産とか在庫の問題があったりするのですが、ファッションを身近に感じられるようなことをブランドのほうからも発信していければおもしろいなと思います。



− 性格も正反対だというおふたりですが、なんで一緒にaaceroをはじめようと思ったんですか?


後藤   もともとは専門学校の同級生で、私はアパレルデザイン科、八幡はニット科にいってたんです。


八幡   後藤はコンテストがあったりして、そこでニットを使いたいときには僕が駆り出されたり(笑)


後藤   「ちょっとこういうのを作りたいんだけど、どうやったらいいのかな」って感じで。


八幡   だから、学生のときから一緒にものはつくってたんです。そのときから後藤はニットをうまく組み合わせて使ってくれるなとおもっていました。


後藤   ブランドをはじめるきっかけになったのは、アパレルデザイン科の先生が恵比寿の「パンゲアソラリウム」という展示会場で、毎年1組にスペースを無料で提供する企画をされていたときです。

それで、私も当時の仲間と「こういうことをやりたい」とか言いあってるときにはじめて「ブランドにすること」を意識して、もしやるんだったら八幡を誘いたいなと。

展示会のためにブランド名をいっしょに考えて、「aacero」に決まりました。最初は大文字だったんですけど、あとでロゴを考えて小文字にしました。それがaaceroのはじまりです。


後藤   多分それぞれが別のブランドをやっていたら全然ちがうものになってたと思うんですけど、「かわいい」とか「きれい」とか思うところが似ていたのがよかったと思います。

男女の2人組なので、女の子がかわいいと思ってつくっていても男性からみれば華美すぎたり、もっとこうしたら良くなるんじゃないかというのを男性からの目線で言ってくれるので、2人組で良かったのかなとおもいます。



− でも、それから専門学校を卒業して、おふたりとも一度就職されていますよね。


後藤   八幡はニットのOEMをしてる会社にはいって、私は4年間専門学校で学んだあと、雑誌編集の企画会社に就職しました。ゆくゆくは自分でまたブランドをやりたいなと思っていたので、雑誌とか「伝えてくれるひと」の立場に立ってみることができたのはよかったです。

それから2年くらいフリーランスでエディターの仕事をしていたんですが、そのくらいに渋谷に「文化ファッションインキュベーション」( )がオープンすることが決まったんです。

それを聞いて、もう一度や八幡に声をかけなおして、文化ファッションインキュベーションのオーディションを受けることにしました。そこであらためてaaceroをやっていくことを決めて、施設のオープンと同時に企業したようなかたちになりました。



「主役」よりもワードワーブの中で輝けるような「名脇役」になりたい。 「aacero」デザイナーの八幡夏樹さん、後藤彩さんにお話をうかがいました。【第2話】



*この記事は2014年1月におこなったインタビューを一部編集しなおして再掲しています。


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