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雪道

積雪の上を人が歩いてできた雪道は少し人生に似ている。人の足で踏み固められてできた道は平らではなくて高さが偏っている。おまけに踏み固められた雪は氷のように硬く滑らかになり、上を歩くと結構滑る。バランス感覚のある人は難なく渡っていけるけれど、不器用な人にとって転ばず真っ直ぐに歩くことは至難の技だ。狭い雪道では、前から来た人に道を譲る人もいれば、一切道を譲らない人もいる。ゆっくり歩く人もいれば、せかせかイライラ歩く人もいる。いくら急いでいても前がつかえていたら進むことはできない。雪道では多くの理不尽にぶつかる。

でも、悪いことばかりではないと北海道生活5年目にして知った。今日、学校に忘れ物を取りに行くついでに大雪警報が出ている中、真夜中の散歩をした。雪が降っている日の夜は静かだ。イヤホンをしないで歩いていると、新雪を踏む自分のムギュムギュという足音だけが近くに聴こえて、後の音は遠くなる。新雪の中を歩くのは少し大変だが、新雪は見かけ通りふわふわで、靴の中に入ってきさえしなければ歩くのは気持ち良い。死後の世界があったらこんな感じかな、などと考えていた。

雪が降る街の灯りはいつもより少し優しく見える。優しい光の中でふわふわと歩いているうちにそのまま雪と一緒に消えてしまえたら幸せだろうなと思った。少し寂しくて優しい時間だった。


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