見出し画像

『HEADLINER』シリーズに様々な影響を受けた話

あなたが、ニュースをコントロールできたら?
あなたは住民の大半が遺伝子組換えを施した架空の都市で、報道局の編集責任者に任命されました。民衆の目に触れるニュースを操ることができる、啓蒙的な短編アドベンチャーゲームです。マルチエンディングとシェア機能が搭載されており、前任のヘッドライナー達がどのような結末を迎えたのかを確認することができます。

遺伝子工学と社会不安がギャリクシアを埋め尽くしていた
君は地元ニュースチャンネルの編集責任者だ
君がヘッドライナーだ

steam『ヘッドライナー』”このゲームについて”より引用


『HEADLINER』及び『HEADLINER:Novi News』をプレイしました。
めちゃめちゃ久しぶりにビジュアルノベルゲームやったかも。
…これをビジュアルノベルと区分されるのかはよくわからんけど。
これのためにsteamデビューしたりしちゃったりして!ドキドキワクワク!

とか、そんなテンションでできねーんだこのゲーム!!!!
マルチエンディングの幅が広いことは予想できていたけれど(普段から鬱ゲー知識を蓄えているためマルチバッドエンドくらいなら常識だと思っているエアプの偏見)、現状出したエンディングのどれにも満足できない。
「ああ!そんなつもりじゃないのに!」と登場人物たちに謝罪して回りたくなるゲーム。
ただ、これがあまりにもリアルなのではないか、と思うと背筋がぞっとする。
彼方立てれば此方が立たぬ。
両方立てれば身が立たぬ。
そのリアルさに冷や汗かきながらも口角が上がるのを止められない。
早く次へ、早く次へ、と狂ったように先に進めてしまうのでまじで中毒性ある。

『ヘッドライナー』のシナリオについての感想を述べていくのでこの先はネタバレ注意。
なお、政治だったりマスコミだったりの話をしてるので興味ない方は本当に興味のない内容だと思います。





冒頭の引用にもあるがざっくりと概要をまとめておく。
1作目の『ヘッドライナー』では、国民のほとんどが遺伝子組換えを行っていて近々大きなお祭りが開催されて隣国とバチバチしそうな雰囲気のあるギャリクシアにて妻子と暮らす地元新聞編集長としての物語。
2作目の『ヘッドライナー:ノヴィニュース』では、遺伝子組換え技術も保険制度も近隣諸国と比べて途上国でアヤシイ合成アルコール飲料と謎の病が流行り始めているノヴィスタンにて働く新聞編集長としての物語。
それらの国で毎日提出されるライター達の記事を選別した結果で、民衆の思想や行動が変わることで迎えるエンディングを見届けるのがこのゲームの趣旨だ。
作中では人体の遺伝子組換えを胎児か幼児の頃に行っているのがメジャーである。
これは劣勢遺伝子をあれやこれやすることで病気になりにくいとか色々と良いらしいが、完全に安全性が確立されている訳ではない上に”組換え拒絶症”というやべー病気に罹ることもあるという。
その為、遺伝子組換えに対して異議を唱える”純血主義”なる人たちが一定数いる…というのがこの世界のベースにある。
(ある程度プレイした上ではあるけど間違ってたらごめん)
実に政治ゲーっぽい設定。
始めるまで国につくか革命派につくか迷っちゃうよね。
『PAPERS,PLEASE』に似てる、というか多分リスペクト作品。

主人公は健康でそれなりの収入がある所謂平凡な、マジョリティど真ん中の人物だ。
だが、身近な人達は何かしらどちらかの思想に傾いていることが多い。
例えば『ノヴィニュース』の、同僚エヴィと兄ジャスティン。
彼らはそれぞれ病を抱えているため薬やカウンセリングを日常的に必要としていて、エヴィは外国人のため国民皆保険に反対、ジャスティンは低所得のため皆保険になってほしいと願っている。
そして主人公である私は、どちらかを絶対に選ばなければならないタイミングがある。
どっちに転がろうが、少し過激な言い方をすると、1人は見捨てることになるのだ。
つらい。
めちゃくちゃにつらい。
つらすぎて何も選びたくなくなる。
じゃあ何も選ばないわ!ってすると、お察しの通り、自分がひどい目に遭う。
国際問題、警備問題、保険制度、薬の価格変動、差別問題、嗜好品への懐疑的意見、スポンサーの顔色伺い、陰謀論…と様々な選択をほぼ並行的に迫られるので、常にプレッシャーを感じ冷静さを欠いていく。
周回プレイの半分以上は唸りながらエンディング見た。

先述では仕事ターンの選択について書いたが、プライベートでの会話もエンディングにつながる。
『ヘッドライナー』では、フェスティバルを機に娘の身にいろいろ起こるらしい。(未獲得トロフィー情報より)(こわくて見てない)
娘の進路相談に対して否定的な態度を取ったり、フェスティバルに行くのを止める妻(もしくは夫)に同調することでそういう展開にできる、んだと思う。
いやいや。
おれの娘だぞ!否定的なことが言えるわけないだろ!!
仕事は仕事と割り切って本意ではない選択とかも取れるけど、”自分の娘”というフィルターがかかるだけで良心というか親心というか…人間関係における”思想”に抗うことを難しく感じる。
私の志向というか好みとして利他主義的な自覚がある。
だからこそ、現時点で回収しているエンディングで1番満足したのは「妻子が生きていて、フェスティバルに歌姫は呼べなかったけど何事もなく開催されて、自分はクビになった」といった内容になったものだった。
仕事の帰り道にフェスティバルに立ち寄った際、風船をもらえた時にとても安堵した。
『ノヴィニュース』においては、最初にも書いたけど、ぶっちゃけ満足できるエンディングに出会えてない。
1作目よりも登場人物が多い上に個々の展開も増えているからそりゃそうなんだけど。
というか、プライベート会話のボリュームがすごい。
こんなん全員情が入るに決まってる。
ごめん嘘ついた、兄貴のギャグだけは好きになれない。
どのキャラも会話すればするほど好きになり、その後の判断が厳しくなっていく。
…ただでさえ難しい記事読まされて、会話もしっかりしてたらそりゃ忙しいよな?
そりゃ終盤でスタンプ押し間違えてやり直し、ってのも数回やるよな?
実際、プレイ中はちょっと目回ってた。
周回必須だけどこまめにリフレッシュしてからやろうな…。

今更かもしれないけど。
ネガティブな言葉を使いがちだから批判日記のように見えるかもしれないけれど、これはれっきとした「面白いから!!みて!!聞いて!!」の子供の好奇心なので。
ここまで私の文章を読んで「ヘッドライナーって辛くて悲しくてバッドエンドのゲームなんだなあ」って思った人は、今すぐネット辞めた方がいい。5社くらいの新聞を毎日読んだ方がいい。
情報というものは伝え方・書き方よりも読み取り方によって大きく変わると思っている。
このゲームをプレイして思ったことは、マスコミの種類が少ない作中の世界では自分たちの発言が与える影響が大きくなるのは当たり前だけど、現代日本においてはむしろ逆だ。
嘘も真も入り乱れるマスコミ戦国時代では、ニュースの信用度なんてあまりに低すぎる。
その中で、新聞というメディアは読み比べが簡単で感情が乗りにくい文字表現のためフラットに読めるから、比較的情報精査がしやすい、かもしれない。
テレビニュースは視覚情報が大きくなりすぎて感情で判断しがちになるので良くないね。
ツイッター?X?騙されやすいやつはネット辞めなさい。(ツイ廃並感)
…まあ、そんな中でなるべく”質の良い情報”を受け取りたい、となると「そんなもん自分で取りに行け」って話になる。
現状起こっている事象についての報道に関しては質も何も無いけれど、それに付随する過去や未来、報道者による意見によってニュースから受け取る情報が変わっていく。
そもそも”質が良い”って自分に都合が良いってことだから、腐るほどあるメディアの中から1つの記事を読んだだけでそれが最適解になることは稀なんじゃないか。
たまたま目に入った文章に自分の思想とは違うことが書いてあって「何言ってんだそんなんで世界良くなるわけないだろくそが」とか「ああもう生きにくい世界になる…まじむり…」とか「ええ!?信じていたのに…反転アンチになろ…」になるのは、どうなの?と思う。
特にそういう人たちはマスコミがエンタメ的に書いたあおり文を字面で読んでることが多い。
ちゃんと最後まで読んだか?このニュースに対して自分の意見持ったか?
メディアリテラシーを鍛えておかないと辛い思いをするのは自分だ。
…ネット批判だ、これ。本当に批判日記になってしまう。やめよ…。

この日記を書くに至った切欠として、ある程度の選択肢の取り方を分かってきた気がするからというのと、ゲームに作業味を抱き始めた危機感からである。一旦距離を置きたくなった。
トロフィー回収ってどんなゲームにおいても作業感強くなるけど、『ヘッドライナー』に”作業”を感じ始めたらエンディングへのワクワク感が楽しめなくなりそう。
国民も隣国の人も私も全員幸せ!ベストハッピーエンド!ってのは無いことはもう知っている。
だからこそ慎重に、リスペクトを持ってプレイしたくなる。
まだまだ楽しめるなんて、最高だな!このゲーム!

これは”好奇心”だ、という言葉をちょっと前で使ったけれど、結局これがネットに上がるということは否が応でもこれは”報道記事”になる。
何かしらで影響を与える可能性もゼロではないのだろう。
「期待しながらゲーム始めたのにテンション下がっちゃったんだな」と、序盤のみ読んだ人はマイナスプロモーションに思うかもしれない。
たまたま暇を持て余し、たまたまオススメ記事に出てきたとかで、たまたまここまで読んだ人に、たまたま刺さる内容となって『ヘッドライナー』に興味が出るかもしれない。
『ヘッドライナー』『ヘッドライナー: ノヴィニュース』よろしくお願いします。(過激報道)

ファミ通の記事も面白かった。
編集のリアルな考え方とか時世と照らし合わせて本質を書いていらっしゃるのがとても好き。


まあ、要するに。
めちゃくちゃ面白かったよ!って話でした。