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クリエイターの次は「受け手」がプロになる時代がくるんじゃないか。

こんにちは。Voicy代表の緒方です。

この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりや、いま考えていることについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。

インターネットが普及したことで、だれもがコンテンツをつくって発信できるようになったのはとても良いことだと思います。Voicyにおいても、音声というカテゴリでこれまでにない才能を発揮する人がどんどん現れています。

この流れはこれからもどんどん加速していくでしょう。

ただ、ちょっと待てよ。

みんなが発信できるのは素晴らしいことだけど、じゃあだれが彼らのコンテンツを受け取ってくれるんだろう? と、ふと考えたりします。

まだちょっとまとまってないんですけど、今回は、つくり手の次は「受け手」がプロになる時代がくるんじゃないか、みたいなことを書いていこうと思います。

僕らはみんな「教えたがり」になっていく

自分もそうなんですが、まわりの友人たちを見ていると、20代はがむしゃらに頑張って、30代で成果を生みはじめて、40歳を過ぎたあたりから、なんだか「下の子を教えてあげたい」みたいな欲が出ていませんか。

教えてくれてありがとうございます、と言われたい。人の成長の役に立ちたい。人から尊敬されたい。そんなふうに思っているだろう人たちが、溢れかえっているように思います。僕だってそれは否定できません。

でも教えたい人が増殖しすぎて、余ってしまっているんじゃないかと思います。下の子を育てる仕事をしたい、何かを教えたいという人は多いけど、教えてもらいたい人はそんなに増えない。人口的にも。

「講演したい」とか「僕の知見を伝えてあげたい」とか「若い子の役に立ちたい」って言っているおじさんたちは、できればこれまで通りプレイヤーとして頑張っていただかないと、たぶん周りが困ってしまうでしょう。

最近、おもしろいことがありました。

成功よりも、きっとほしいもの

Voicyという会社はまだ規模も小さいですし、お金もありません。お世辞にも成功した会社とは言えないわけです。それでも誰もつくったことのないプラットフォームを世の中に生み出そうとしているので、売上がめちゃくちゃ上がっているわけじゃないけど、オリジナルな存在として注目されたりもしています。

経営者の集まりやイベントとかに出かけて行くと、株式100%持っていて、売上が安定している会社の、2代目・3代目の社長だ、という人に会うことがあります。

彼らは会社は成功しているし、売上もちゃんとあるし、赤字でもない。すごく順調なんです。うらやましい。

でも安定していて、この先の売上も見えていて、言ってしまえば自分の成長もそんなにはないだろうと思っている。

そうするとお金はあるのに、自己承認欲求だけがどうにも満たされないらしいのです。

「緒方さん、いくら払ったらあんなメディアから取材とかされるんですか」なんて聞かれるのですが、いやいや、そういうのじゃないですよ、という話をします。まったく成功してないし、自己承認欲求についても考える時間がない我々と、成功しているけど自己承認が足りない方々と。

この関係は少し興味深いなと思いました。お金よりも大事なものがあるとするなら、こういうことなんだと思います。

みんな、自分の存在に「すごい価値がある」と言ってほしいんです。「話を聞かせてほしい」って言われたいんです。考えてみれば、そういう体験をお金で買う場所だってありますよね。

プロの受け手はAIにも代替できない

でも突き詰めると、人間として生きる意味って、誰かに何かしらの影響を与えることだったりします。人にとって価値があると思われたり、考えを聞かせてほしいと言われたり、実際に何かを教えたりというのは、端的に人に影響を与えているということだと思うんです。

インフルエンサーという存在はその最たるものかもしれません。僕らのようなおじさん世代だけでなく、いまや若い人もだれかに影響を与えたいんでしょうね。

ここで冒頭の話に戻りますが、そうなると困ってくるのが、発信したい人、伝えたい人、影響を与えたい人はどんどん増えるのに、それらを受け止める人がいないってことだと思うんです。

Twitterだろうが、YouTubeだろうが、Tiktokだろうが、noteだろうが、みんながみんな「自分の話を聞いてほしい」と思っているけど、昨日まで聞く側だった人が今日は発信する側にまわっている。

だからコンテンツ量の増加に対して、受け取る人なんてたいして増えていなくて、僕らはむしろ「ちゃんと聞ける人」を求めているのかもしれません。

AIをつかって簡単にコンテンツをつくれるようになったけど、結局僕らは、AIに見てもらっただけでは喜べません。人に対して影響を与えたい、それがかっこいいんだって思っているのであって、そこにAIを置いても満足できないですね。

だから次にくるのは完全な受信者不足です。読んだり、聞いたりしてくれる純粋な「受信者」に相当の価値が出ると思います。

「僕のnoteをちゃんと読んでくれるんだったら、お金を払います」っていう人だって出てくると思いますよ。考えてみてください。しっかりと読んでくれて、うれしい感想くれたら、300円くらい払いたくなりませんか?

ちゃんと感想を言ってくれる人なんてだんだん希少になってくる。「プロ・ちゃんと聞いてあげる人」なんていう職業が出てきてもおかしくないぐらい、足りていない。

同じようなことは漫画アプリとかネット広告の仕組みにもすでに見られますね。何らかのコンテンツを消化することで少額のお金を稼ぐことは現実的にできます。

読んであげてポイントがもらえる、コメントを返してポイントがもらえる。今後はだれかのコンテンツを見て、聞いてあげることでお金を稼いで、それがベーシックインカムになるような時代もあるかもしれません。

すみません。まだ妄想を続けます。

もう無料のままでは「ほとんど見られない」

そうすると無料でもいいからコンテンツを摂取したいなんていう奇特な人はほとんどいなくなってきて、もはやメリットがないとだれも他人のコンテンツなんて見向きもしなくなるかもしれない。

「聞いてあげてるのになんなの? お金くれないの?」「動画見てあげてるのにポイントないなんてひどい」なんて言われる世の中になっていく。消費者がプロ化しますね。

たとえばスポーツの場合、サッカーをプレーしてお金をもらえる人と、サッカーをプレーするのにお金を払う人がいます。そこにプロとアマの差がある。その境界線はカテゴリによって変わってきます。

いまのインターネット上のコンテンツのほとんどはだれかが無料でつくっています。すごい人はつくったものでお金が儲かったりする。

つくることでお金をもらうまではいっていないけど、つくることにお金を払ってはいない。「特待生」みたいなものですね。

ただ、無料でコンテンツをつくることができている特待生のうち、無料のままでは「ほとんど見られない」という人が出てきます。

そこでセクシーな絵を出したり、過激な話をしたりすることで、なんとか注目を集める。それはいまも起きている。この先は、本当に伝えたいことがあるときは、みんなにお金を払って「すいません、これ見ていってください」ってなるんでしょうね。ある種の広告に近い。

だからみんな、がんばってがんばって発信したその先には、最終的にお金を払って聞いてもらうっていう世界になるんじゃないかって、最近考えています。そういう世界がくるのもおもしろいなあと思います。

インターネットで発信する人の幸せとは

そもそも、ですけど、「聞いてもらえる」ってすごいことなんですよ。どんなに成功した経営者、お金持ちでも、最後はお金よりも承認欲求が勝るんです。めちゃくちゃ稼いだ人が、なんでツイッターで「俺は稼いだぞ!」って言っているかというと、それをちゃんと認めてもらいたいから。

お金は「ある」だけでは足りないんです。「すごい。あなたの話をもっと聞かせてください」とセットなんです。

インターネットで発信する人って、これから先、どうなったら幸せなんでしょうね。それはフォロワー数を増やすとか再生数を増やすという、単純な「数」の話ではないと思っています。

たとえばVoicyだったら、たくさんの人に聞いてもらえるのはもちろん嬉しいと思うでしょうけど、長い期間ずっと聴いてくれるファンがいることだって同じくらい嬉しいんじゃないかと思います。もしかしたら、フォロワー数とか再生数よりもずっとうれしいかもしれません。

DJ赤坂さんのVoicyチャンネルを聴いていると、よく「長く聴いてくれてるお前ら、最高だぜ!」みたいな感じで盛り上がっていますよ。LTV(ライフタイムバリュー)なんて指標もありますけど、ファンの息の長さみたいなものだって1つの誇りだと思います。

「俺のVoicyチャンネルさ、5年以上聞いてくれるリスナーがたくさんいるんだよね」。これを言えるのはめちゃくちゃ気持ちいいわけです。「一瞬バズるなんてたいしたことないよね」なんてことも言えますよね。

「量」という指標がダサくなって、“これからは「長さ」と「深さ」の時代に”なんてなったら、おもしろいですよね。Voicyのランキングは上位にずっと西野亮廣さんがいるけど、本当に息の長いリスナーが多い番組はまた全然違う顔ぶれだったりして。あたらしい勲章が生まれるのはいいことですよね。

受け手が足りなくなっていく時代に

というわけで、いろいろ考えが発散しちゃいましたけど、発信する人が増えすぎて、受け手が足りなくなっていく時代はきています。そうすると、ちゃんとした受け手が評価され、その道のプロになることは十分にあるでしょう。

僕らのクリエイティブはAIがかなりの部分を助けてくれると思いますが、自己承認欲求までは満たしてくれません。クリエイターエコノミーが成熟する先には、受け手側のマネタイズまで見えてくるかもしれません。

なんていうことを、最近よく考えています。このテーマについては引き続きなにか書いていきたいと思います。

ーー最後まで読んでいただきありがとうございました。

声の編集後記

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