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「自分も同じ失敗をするんだな…」 Voicyの最初の大きな資金調達ですごく凹んだ話【声の履歴書 Vol.81】

こんにちは。Voicy代表の緒方です。

この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。あと、この文章の最後に編集後記として声で裏話や思いも語っているのでぜひ聞いてみてください。

Voicyは先日、27億円の資金調達を発表しました。詳しくはこちらの記事を読んでください。

みんなでがんばってシリーズBの壁を越えられました。でも実は3年前のシリーズAではそんなにうまくいっていなかったんです。今回は2019年にVoicyが8億円を調達したときのことを振り返りたいと思います。

夢物語を必死に描いていた

Voicyが8億円を調達したのは、2019年の2月のタイミングです。それまでは2016年に政策金融公庫の借入3000万とエンジェル投資家2000万、一年経った2017年末でも2800万の調達しか調達できなかった。この金額ではほとんど人を雇うことができません。

創業時はよくあることですが、起業してほぼ2年経っても「緒方君がやるなら応援するよ」という人からしか、お金が集められない状態だったんです。「1人あたり100万から300万くらいでお願いします」と言って集めて、本当は3000万集めたかったんだけれど、最後に200万円足りなかったですね。

はじめて「俺達も大きく資金調達したいよね」と思ったのは2018年の夏くらい。イケダハヤトさんとかはあちゅうさんが使ってくれて、一気にユーザー数が伸びていたので、「ユーザー数が伸びたから調達できるんじゃないか?」なんて思ったわけです。

もちろん資金調達をするということは、それ以上の時価総額にしてお金を返さないといけないですし、会社の株を外の人に渡すことになります。

内臓を人に渡すようなもので、かなりの覚悟がいることなんですが、当時立てていた事業計画は今とはまったく違うし、マネタイズ手段も全然違うし、本当に夢物語を必死に描いた感じでした。

売上ほぼナシでつくった事業計画

その当時は売上も全然なかったです。微々たる売上のほとんどは、Voicyファンラボというオンラインコミュニティからの売上でした。それから音声コンテンツの制作とか、僕がコンサルティングをしたりとか、もうとにかく詰め合わせでつくったような事業だったんですけれど、唯一今も続くマネタイズとして生まれたのが、田端信太郎さんのチャンネルから始まった、Voicyのスポンサーでした。個人の喋りに企業のスポンサーが作っていうとても新しいビジネスモデルだったんですよね。

そういったものが少しあっただけで、「こんな感じで伸びていきます」という事業計画を描いたのは、懐かしい記憶です。今となっては、このときよりもっと多くの音声のチャンスを見つけられたんじゃないか、と思います。そのときに無理やり描いた事業よりも、より大きな未来が見据えられて、計算できるマネタイズプランをたくさんつくれたと思っています。

それから資金調達をするタイミングで、とにかく味方を増やさないといけない、既存のメディアさんたちから敵だと思われるのは困る、という思いはすごくありました。

そこで各テレビ、新聞、ラジオなどの大手マスコミから調達をしようと決めて、いろんな会社さんにあたっていきました。TBS、ABC放送、文化放送、中京テレビ。全部グループが違っていて、最終的にテレビ、新聞、ラジオの会社から資金調達をさせてもらいました。それから広告も関係があるかもしれないので電通にも入ってもらいました。

それらを全部束ねるためにグローバル・ブレインというベンチャーキャピタルにも加わってもらう形で資金調達は進みました。その当時の8億円って、かなり大きな金額で、それなりに「すごい」と言われて話題になったんです。

ただし、もちろん調達するときは毎回裏話というか、苦しい話があるんです。「バリュエーションが高すぎる」と言われるのはもちろん、支払いギリギリになって「やっぱりやめた」と言ってくる人もいます。資料だけ請求して情報をとって出資しない企業もいました。

紆余曲折あってその後、8億円というお金が集まったんですけれど、僕らも全然実感がないんです。

だって8億円のお金って見たことがないです。とりあえず銀行口座のゼロの数を数えて、「すごいなぁ」みたいな。それだけです。

「自分も同じ失敗をするんだな」

そこからは「そのお金を使ってどうやって成長するか」という、費用対効果をちゃんと出していくことがすごく大事になってくるわけです。そのお金をどうやって上手く使っていくのか、どうやって組織拡充をするのか、どうやってそれが事業に紐づくようにするのか。

その結果、2019年は豪快に失敗しました(笑)。失敗した話は、次の回にするかもしれません。やっぱり調達したタイミングで、周りから見られる目がめちゃくちゃ変わったんです。でも、自分たちのやっている事業は別に変わらない。それからメンバーも変わらない。社長もまだまだ未熟。

その中で強引に自分たちのステージを変えようとすることは、すごく難しいと感じました。もちろん投資家に対しても、毎月進捗を報告するようになりました。外から見たら、「何かイケているベンチャーだな」と思われるようにもなりました。

それまでの採用は、とにかく何とかして好きになってもらうしかなかったけれど、はじめから「Voicy、いいじゃん」と思って来る人たちが増えてきたんです。そういう人がたくさん出てくると、むしろ「うちって大変なんだけれど、それでも頑張る?」といって慎重に採用していかないといけないことに、後から気がつきました。覚悟がなくても入れる会社だと思われてしまうんです。

社内でも「それだけお金があるんだったらこっちに使ってもよくないですか?」みたいな話も出てきてしまったりして、お金を使うということが、めちゃくちゃ難しく感じました。

僕はいろんなベンチャーの支援を散々してきたし、こけまくっているベンチャーも山ほど見てきたけれど、例に漏れず結局「自分も同じことをするんだな」ということに、かなりショックを受けました。

お金が入ったからといって、別に良い人がたくさん入ってくるわけでもない。採用を受けに来てくれる人はたくさんいるんだけれど、その会社のステージに合う人が手に入るわけではないんです。

そもそも自分たちだって、そのステージに突然踏み出したわけですから、未知の世界ですものね。

もしも運良くいい人が採用できたとしても、その人にピッタリな評価をすることも、仕事を振ることもできないし、働き方すら用意できないわけです。僕らの組織づくりとか、覚悟の足りなさで、うまく活躍できなかった人を生んでしまったなあと今では思います。

見るのとやるのでは、全然違う

だから本当に、資金調達をした後の1年間は足掻いたし、自分の力不足にもすごく凹みました。打つ手がすべて悪手になる、みたいな感じでしたし、お金もどんどん減っていきました。

「こうやって消えていく会社もあるんだろうな」というくらい、すごく危機感がありましたね。周りからは「いいね、勢いがあるね」とか言われてましたけど、身の丈以上の金額が入ってきて、一気に急成長しないといけないときの難しさを散々顧問先の企業で見てきてたはずなのに、自分も同じことをやるんだなぁと、冷静に思っていました。

恋愛したことがない恋愛コンサルタントが、いろんな人の恋愛について知識はたくさんあって役に立つアドバイスしていたけれど、自分が恋愛をしたら、「こんなにドキドキして上手くいかないものだと思わなかった…」みたいな感じでしょうか。

見るのとやるのでは、全然違うということなんですね。本当に難易度が高いと思いました。

でも、Voicyはその後の3年間をかけて、すごくグチャグチャだった会社から、めちゃくちゃ良い会社に変わってきたんです。この3年間を踏まえると、やっぱり経験と成長がないといけないんだろうなと思います。

この8億円というのは、いわゆるシリーズAでした。いろんな経験をさせてくれるお金が手に入っていたということは、すごくありがたいことだったと思います。

ーー最後まで読んでいただきありがとうございました。この話はまだつづきます。

声の編集後記

音声でも当時の気持ちを振り返りながら話しているので、あわせて聞いてみてください。

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