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がんばれ!読書感想文の書き方まとめたよ

はじめに

がんばれ! 読書感想文はこう書こう

この数年は小学生〜中学生に年に数回文章指導をしています。私はライターであり、本も何冊か書いています。
子どもは素直なので、ちょっとのアドバイスでたちまち文章がいきいきしてきたりして、こちらが驚かされます。
夏休みもあと数日(もう終わってる学校もあるかもですね)、宿題で最後に残ってしまった読書感想文……という子どものために、こう書いてみたら? というアドバイスを記してみました。

1.本を読むだけはしよう

これだけは、どうしようもないです。読まずに書くのは30年ライターをやっている私でも逆に時間がかかります。You Tubeなどネットであらすじを探すのもやめたほうがいいです。そのコンテンツを作った人の主観が必ず入っているので、そこに引きずられて原稿用紙複数枚書けるほどの内容になりません。
子どもの中には、そもそも本を読むのがキライ、本を読む習慣がないという子もいます。もう26日ですし、課題図書でもなんでも、一番薄くて読みやすそうなものを選びましょう。

2.読みながら、思ったことを全部メモしよう

「はあ? なにこいつおかしいじゃん」とか「つまんねー本だな……」とか、読みながら思ったことをいいも悪いもとにかくメモしましょう。あとで文章にするときの重要なとっかかりです。

3.メモを見直して、一番強く思ったことに◯しよう

すなおに「感動した!」とか「主人公の気持ちに泣けてきた!」というメモもあるでしょうし、場合によっては最後まで「どうでもいい……」「つまらん……」という感想で終わった人もいるでしょう。先生や親がどう思うかは置いておいて、とにかく読んでいて一番強く思ったメモにマルします。仮に、それを「いちばんメモ」と呼ぶことにします。

4.「いちばんメモ」の内容をふくらまそう

いちばんメモはメモですから、あんまり細かく書いていないと思います。
もし「どこまで読んでもつまらない」だとしたら、「なぜつまらないか」を考えて深掘りしてみましょう。
つまらないと思ったことにも理由があるはずです。本の批判になっても構いません。今、この時期から感想文を書こうっていうんですから、「いい点を取りたい」とか「親や先生やクラスメイトにさすがーといわれたい」とかいう欲は捨てましょう。
つまらない……というメモを書いていたら、なんでそう思ったんだろう? と考えてみましょう。たとえば、主人公の行動に不満を感じたり、あるいは主人公を取り巻く環境が理不尽すぎたり、あるいは、あまりにも良い話しすぎて嘘くさく感じられたり……。その理由を正直に文章にすれば、なかなかオリジナルでおもしろい感想文になるはずです。

<補足:セオリーは捨てる>

ちなみに、いまここで書いている内容はあくまで「書くのがキライな子が書きやすくするため」と、「一般的に大人がマルするようなものではないけど、面白い内容になる」ためのものです。
感想文をセオリー通りに書こうとしたら簡単で、

・あらすじ2〜3割
・それについて自分はどう感じたか→自分の身近な経験や状況と対照させる
・上記を踏まえて、今後自分はどうしたいか、本を読んで感じたことをどう活かしていくかなど前向きなコメントを入れる

こんな感じで書けば、まあ、5段階の3から4ぐらいの評価はもらえるんじゃないでしょうか。
でも、それはみんなが書くやり方でもあり、正直、面白みのある文章ではないです。
やっぱり、ぐいっと惹きつけられる文章のほうが印象に残りますし、ゼロかイチかでいったらどっちに転ぶか謎ですが、個性を認められやすいのではと思います。

4にもどります

つまらない以前に、読んでも全く何も感じなかったらどうすればいいか?
こういうこともなくはないと思います。だけど、さすがに「読んでも全く何も感じない上に面白くなかった」で終わってしまったら、原稿用紙1枚も埋めることはできません。

そういうときは、無理矢理にでもいいから、そして「いいな」でも「やだな」でもどっちでもいいから、とにかくどこか1箇所引っかかる箇所を見つけてみましょう。
もうはるか昔のことですが、淀川長治さんという映画評論家がいらして、地上波の映画番組「日曜洋画劇場」で映画が始まる前と後に映画解説を行っていました。
そのことについてどこかで、「正直、どうしようもない映画っていうのはあるもので、それでもみどころを解説しなければならない。だけど、どんな駄作でもどこかに1つぐらいは良いポイントがあるので、解説するときはその1つのポイントについて話すようにしている」とお話されている記事を見ました。
これぞ先人の教え。淀川さんは「良いポイント」を探していたわけですが、感想文の場合は「良い」でも「悪い」でもなんでもいいから、何か心に引っかかるポイントがあったらそれを全体の5割ぐらいにして書けば、オリジナリティのある作文になると思います。

5.書き出しを工夫する

普通に書いてしまうと「この物語は……(あらすじ)」で始まるのがほとんどではないでしょうか。あるいは「〇〇という物語を読みました」みたいな始まり方。
ここを変えるだけでぐっといい感じになります。一番印象的だったセリフから始めるのもいいと思います。

例)
「シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」
これは、主人公のまいのおばあちゃんが、まいが不登校になった理由をおばあちゃんに話したときに言った言葉です。まいは、友だちと行き違いが起きて、学校にいけなくなっていました。そのことを自分の弱さだとおばあちゃんに話したところ、おばあちゃんは「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、うしろめたく思う必要はありませんよ」といい、最初に書いたシロクマのことを話すのです。
私はこれを読んで、自分が今、放課後のクラブで悩んでいることを思い出しました。もっとがんばらなければならないと思いこんで、クラブに行こうとするとお腹が痛くなっていました。でも、もしかしたら無理に行く必要はないのかもと、このおばあちゃんの言葉を聞いて思ったのです」

※セリフは梨木香歩『西の魔女が死んだ』より

こういう具合に、
印象的なセリフから書き出す→なぜそのセリフが印象的だったか、自分の体験に引き寄せて説明する
という風にすると、本の感想と読んだ人の気持ちが伝わる文になります。

6.1つのポイントから広げて展開する

1つだけ、心に引っかかるポイントを書くということともつながっていますが、もし、読んだ本がとても気に入って、いろんな部分について感動したりいいなと思ったポイントがあったとすると、その全部を書きたくなるかもしれません。
それはやめたほうがいいです。だいたい、小学校低学年だとせいぜい400〜800字ぐらいで書けと言われるでしょうし、中〜高校生でも2000字ぐらいじゃないでしょうか。
本の良かったこと、受けた印象全部を網羅しようとすると、どうしても箇条書きの文章のような感じになり、言いたいことが散漫になって伝わりにくくなります。
1つのポイントに絞り、そこから上の例文のように自分の体験と重ね合わせて話を広げていくほうが感動ポイントがストレートに伝わる文章になるでしょう。

7.シメについて

書き出し同様、子どもが迷うのがシメをどうするかです。どうやって書いた文章をいい感じで終わらせられるかに悩み「もうやだ」となってしまう子どもはとても多いです。
大人だって、文章のシメは悩みポイントの1つです。
最後はやっぱりきちんと「終わり」の雰囲気を出したいものです。
でも、無理に素晴らしいフィナーレを作らなくても、どうしたいのか分からないということを終わりにすることもできます。

例)
こうして、この本を読んで感じたことを書いてきた。それが、これからなにかの役に立つかどうか? 分からないけれど、これほど夢中になって、いつもの生活を忘れて読んだ本は初めてなので、これから生きていくうちにどこかで、この本のことを思い出して役に立たせることができるかもしれないと思う。

などというように。あるいは、

本を閉じたら、ふうーっとため息が出ました。なんだか遠くまで旅をしてきたような気持ちです。本に出てくるカバン(カバンに限らず作中に出てくるキーワード的な小道具)を持って、本当の旅に出たくなりました。

という感じで、本を閉じた→読んでいた世界が終わった というシメもアリかと思います。

一般的には、どうしても「この本から学んだことを活かして、これから◯◯していこうと思います」みたいなお利口な感じになりがちですが、できるだけ最後まで自分の気持ちを入れ込んで終わりを書いてみることに挑戦してほしいと思います。

以上、役立つかどうか? 
頑張ってください、あと5日!


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