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2022年4月19日の「消費者理会」Vol.13のゲストは「音部大輔さん」

株式会社秤の小川と申します。10年以上の総合広告代理店でのコミュニケーション支援の経験とデジタルマーケティング会社とPR会社でのコンサルティング経験を経て、2019年12月に法人を設立し、今は業務委託でアドバイザーやアンバサダーなど複数の役割で活動しています。

JX通信社の松本健太郎さんのお声がけから、同社の新たなチャレンジをサポートする役割も担っています。同社は、「テクノロジーで『今起きていること』を明らかにする報道機関」を目指す報道ベンチャーです。

私は、KAIZODE(カイゾード)という消費者リスニングツールのアンバサダーとしても活動しています。これは、マーケター向けにユーザーの興味がある1テーマに分析対象を絞り込み、そのテーマでのツイートの抽出と分類までを機械学習によって行い、人間が行うと膨大なリソースがかかるデータの前処理を効率化し、ブランドの消費者動向や仮説のタネをいち早くキャッチすることを可能とした先進的なツールです。同社のテクノロジーによってマーケターが市場や顧客を洞察する解像度を上げることができるツールです。以下がサービスサイトです。


弊社のプロジェクトでも、テストケースとして、KAIZODEを使って定性調査であぶりだすような、仮説の種を発見する取り組みをしています。消費者リスニングは、必要な情報を定義してそれを抽出する時点からテクニックが必要です。テクノロジーの力を使うことで、スピーディにSNS上にある消費者を収集し、最短距離でマーケティングの仮説をみつけることができます。

過去の分析例

「消費者理会」

2022年4月19日火曜日で13回目となるイベントが「消費者理会」です。われわれがお話を聞きたい、学びたいと思う方をゲストに招いてお話をお聞きする消費者理解をテーマにしたマーケター向けの夜会的なウェビナーをめざしてはじめたものです。

これまでの開催でお越しいただいたゲストは下記の皆様です。

・2021年4月 ニューバランスジャパン 鈴木 健 氏
・2021年5月 リサーチャー 菅原 大介氏
・2021年6月 プリファードネットワークス 富永 朋信 氏
・2021年7月 ソフトバンク 井上 大輔 氏
・2021年8月 才流 栗原 康太氏/ブランディングテクノロジー 黒澤 友貴氏
・2021年9月 ファミリーマートCMO他 足立 光氏
・2021年10月 TORiX 高橋 浩一氏
・2021年11月 カーマインワークス 深田 昌則氏
・2021年12月 ゲスト無し。松本さんと小川
・2022年1月 インサイトフォース 山口 義宏氏
・2022年2月 みる兄さん
・2022年3月 ダイキン工業 片山 義丈氏

松本さんと相談しながらオファーして多くの方にご出演いただくことができました。振り返ってみるとすごい方ばかりです。

マーケターにとって外せないスキルの消費者理解について、ゲストの皆さんそれぞれのお考えをお聞きしながら我々も学んできました。ツールの宣伝は行わずに、参加者の皆さんとともに、ゲストの方からお話を聞いてリアルな学びを共有するコンセプトで行っています。

ゲストの皆様にはイベントの前打ち合わせでは、当日、いくつかのテーマをご用意してお聞きするので、ぶっつけ本番でのトークをお願いしています。普段のマーケティング談義のような会話をお話しをいただくようお願いしています。たとえば「なぜ、消費者理解が必要なのか?」など、モデレーターの松本さんが投げかけテーマは、小手先のテクニック論ではなく、本質論が多いので、みなさんそれぞれ、お話頂くお考えもさまざまです。すご腕マーケターの皆さんの思考をお聞きしながら、自分自身がきづかなった視点を確認しています。

いよいよ2年目に突入し、4月開催回で13回目となります。

2022年4月19日火曜日20時~21時の消費者理会Vol.13のゲストは、

株式会社クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役の音部 大輔さんです。マーケティング従事者の皆さんはご存じの方も多いと思います。17年間の日米でのP&Gでの業務と、幾多の有名企業でマーケティング担当の経営者のご経験を経て、2018年から独立されています。博士号もお持ちです。

note用音部さん

音部 大輔 氏
株式会社クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役
17年間の日米P&Gを経て、欧州系消費財メーカーや資生堂などで、マーケティング組織強化やビジネスの回復・伸長をマーケティング担当副社長やCMOとして主導。2018年より独立し、現職。NHK、関西電力をはじめ、国内外の多様なクライアントにマーケティング組織強化やブランド戦略などを支援。博士(経営学 神戸大学)。 著書に『なぜ「戦略」で差がつくのか。』(宣伝会議)『マーケティングプロフェッショナルの視点』(日経BP)『The Art of Marketing マーケティングの技法』(宣伝会議)がある。

近著の『The Art of Marketing マーケティングの技法』(宣伝会議)は、氏のこれまでの知見を凝縮し、体系化したマーケティング技法を共有するものです。

これから実際にこの本で書かれていることを使って思考して、自分のものにしていきたいと思います。私にとってこの書籍は擦り切れるまで読んで見返す参考書です。だからKindleではなく紙の本で買いました。すでに折り目だらけです。

書籍のメインテーマは「パーセプション(R)フロー・モデル」です。消費者の認識(パーセプション)の変化を中心としたマーケティング活動の全体設計図を描き、マーケティングを推進する組織の羅針盤として全体最適を実現するものです。

これは「パーセプション(R)フロー・モデル」は音部氏が考案・命名したもので、1990年代末にP&Gの日用雑貨ブランドが日本市場のブランドマネジメントを行うツールとして使いはじめ、その後、洗剤から消臭剤、紅茶などの食品、そして国内外の化粧品へと展開され、さらにその後は、アルコール飲料、自動車、オートバイ、医薬品、家電、住宅など、適用範囲を大きく広げ、学習塾や通信教育、保健、IP(知的財産)、アプリ、電力会社、放送局などの無形サービス、D2CやBtoB領域の適用も進んでいます。

60万文字の内容を削って15万文字にしたと書かれていました。それを私がキレイに要約することなどできません。

だから、私目線で、まずは入口となる知識として積極的に使わせて頂いている「エレベーター型」思考について、私なりの解釈を交えてご紹介します。

私はマーケティング分析を得意としており、因果推論や確率モデルなどを使って適正なROIを導いたり、意思決定のための「秤」を持ちましょうといったことをnoteやTwitterで発信して活動しています。そのため、「マーケティング意思決定をデータドリブンに行える組織になりたい」というご相談頂くことが多いです。

私は、音部氏のようにCMOとして事業にフルコミットしてマーケティングを推進した経験がありません。一方で大手広告会社やデジタルマーケティングコンサルティング会社など、億円単位の大規模な予算のマーケティング・コミュニケーション領域の実務を上流から下流までの業務を一通り経験してきた中で得た知識とノウハウがあります。

また得意ジャンルとして、マーケティングサイエンスのスキル(確かな効果検証のデザインやリサーチのスキル)があるので、そうした手法を取り入れながら、どこに注力すべきか?戦略を決めるサポートなど行っています。月間20~30時間前後の稼働契約を複数並行しています。

現状のマーケティング業務の運用体制を理解させて頂き、何から整理していくかをスコープとして決めることから始まります。初回のプロジェクトは、要件を整理する業務になるため、提案は1回だけ90分~120分の時間を頂いています。課題を仮説し、進め方を考えて議論をさせて頂き、ご一緒させていただけるかご判断を仰ぎます。

そうした場面で必ずといっていいほどお話させて頂く様になったのが「エレベーター型」思考です。

「ファネル型」から「エレベーター型」へ

『The Art of Marketing マーケティングの技法』(宣伝会議)より参照させて頂いてる図が下記です。

エレベーター型

AIDAMAAISAS(R)など、Atentionからはじまる購買ファネルの考え方が長く使われてきました。

私も20代後半に広告代理店で働きだした頃は「(とりあえず)まずは認知を取りましょう!」なんて提案をしていました。今となっては恥ずかしくて仕方ありません。

マス広告とネット広告の最適化が注目されだした10年ちょっと前くらいから(30代になってから)TVCMだけでなくインターネットの運用型広告の提案も行う様になり、そのころから「認知より関与です」と言い出す様になります。

さらに時が経ち、「これからは広告の時代ではなくビジネスインテリジェンスの時代だ!」とゲームチャンジャ―な諸先輩が動きだしていた段階で私も、「TVCMの効果検証は認知でも関与でもなく、売上です」と言う様になり、広告代理店を辞めて、広告ビジネスからコンサルティングビジネスに軸足を移します。時系列データ解析によって売上効果を推定するMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)のノウハウを体系化した「Excelでできるデータドリブン・マーケティング」という書籍も出版しました。

「(とりあえず)まずは認知を取りましょう!」などと、今は口が裂けても言わなくなりましたが、認知をとっても次につながらないケースも今だに多いと思います。

書籍にも、「大量の広告投下をして名前は憶えてくれたが、1回買ってもらっても次に続かない」という問題を抱えるブランドから氏への相談が増えていることが書かれていました。

認知はあるのに試用(や購入意向)につながらないとか、購入はあるのに再購入(や満足)につながらないという捉え方自体が間違えている可能性を氏は指摘しています。

試用や購入意向につながらない認知や、再購入につながらない購入があることにも問題があるのではないかという観点です。

試用した人にいかに満足してもらうかという時系列のアプローチを正攻法としつつも、「満足しそうな人にいかにして試用してもらうか」という逆側のアプローチを考え、「どうしたら再購入につながるか?」ではなく、「どうしたら満足してもらえるか?」と考え「満足しそうもない人へのアプローチをいかにして避けるか?」という考え方も重要です。

あらゆる人に満足してもらえる製品やサービスは存在しにくい現実を踏まえて、「本来満足してくれそうな人から逆算してターゲット消費者を設定する。」これが、「エレベーター型」思考です。

エレベーター型

これまで当たり前のように前提とされてきたAIDAMAやAISAS(R)などの「ファネル型」思考に対して長年、私も抱えていたモヤモヤが晴れる目からウロコの考え方でした。

ファネル型の思考から闇雲に認知や試用(や購入意向)の獲得に邁進せず、ブランドが解決できる問題を感じていて、ベネフィットを愛用してくれそうなターゲット消費者を探し、彼らが満足して再購入するための試用体験や購入意向の作り方を考え、それにつながる認知を獲得する「エレベーター型」思考が重要だとわかりました。

氏が教えてくれたことを自分なりに咀嚼した今、私の頭のなかで標語のようによく浮かぶ言葉が「認知の先の購買は担保されない」というものです。

また、氏の経験的な原則として、マーケティング目標を達成すべき人数、たとえば購入者10万人を目標とする場合はターゲット人数はその3~10倍を目安にしているそうです。これも目からウロコでしたが、マーケティング予算が10億円あるうち、ターゲットが100万人ならば一人に1,000円使えるが、ターゲット1,000万人の場合は一人に100円しか使えないという説明からスっと腹落ちしました。

目標人数10万人を規定したらその3~10倍程度に絞り込んだ30~100万人のターゲットを定義します。

ここからは、かつてメディアプランニングと効果検証を数多く行ってきた私の経験によるものですが、ネット広告などはターゲットが絞り込めますが、全体を狙ってもリーチ2割程度から伸びないケースがほとんどです。TVCMの場合は8割程度届いているケースも多いです。狙ったターゲットのCPM(コスト・パー・ミル※1,000人リーチ単価)を試算した場合、TVCMで8割にリーチして態度変容の対象を30~100万人としたクリエイティブ設計をしたほうがネットのターゲティング広告よりもリーチ効率が良いことも多いです。

エレベーター型の思考を起点に、WHOとWHATを明確にする。

氏の書籍を読んで以降、ご相談やご提案の際、この図をお見せしたうえで、目標人数の10倍のターゲットを規定できますか?という質問と、再購入(≒満足)してくれる人や口コミしてくれるようなロイヤルユーザーがブランドのどんな価値を気にいっているか、その理由(≒インサイト)を把握していますか?という2つをお聞きしています。

これに対して、明確な答えをすぐ返していただける方はいらっしゃいませんでした。マーケティング業務のHOWの実行に終始してしまい、根幹となる重要なWHATWHOが規定が不明瞭になってしまうことが多いと思いますが、「エレベーター型」思考が、解決の第一歩となると感じています。

ここまで紹介した内容は、氏の知見の中でも、初歩の段階だと思います。重要なのは、この先どうやって未来を切り開くのか?未来から逆算して設計するパーセプション(R)フロー・モデルを組織(マーケティング組織、パートナーなどステークホルダー全般)の羅針盤として活用できる体制を作り、マーケティングを仕組み化することだと思います。

簡単ではないはずですが、氏のメソッドを組織の血肉にすることができれば、盤石な体制になるはずです!

実用的な方法論は恐れずに着手する、とにかくスタートを踏み出すことが大事だと考えていますので、できることからやってみて、今後も使って参ります!学びます!

マーケティングの型を作りたいと思っているすべての方におススメ致します。

追加情報(2023年12月18日更新)

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