水を売る

東京の水道水が、美味しい?

ビジネスジャーナルに寄稿した”ミネラルウォーター戦争勃発…王者・南アルプスの山梨県を脅かす北アルプスの長野県”では、ミネラルウォーター大国として知られる山梨県に長野県が勝負を挑む――といった飲用水にまつわる話を描いた。

 東京の水道水が美味しくなっているという話を耳にしたのは、2005年頃だった。それまで飲用水を買うなどという生活習慣はなく、店に並んでいるミネラルウォーターを眺めては、「金を出してまで水を買うってのは、どういう人なんだろうなぁ」とぼんやり思っていた。

 私たちの知らないところで、水道法はたびたび改正されている。そして、改正のたびに上水道における水質基準が厳しく定められるのだが、そこには水〇リットルあたり残留塩素を〇ミリ以上〇〇ミリ未満にすることという衛生を保つ基準がある。また、水質の検査項目も複数あり、「本当に、これだけの項目をいちいち検査しているのか?」と驚かされるほど、その詳細は多岐にわたっている。

 水道水に含まれる塩素が多ければ人体に影響を及ぼし、少なければ衛生面で問題を生じる。日本の水道水はの品質管理は、非常に厳格だ。これは、商品と言っても差支えない。しかし、徹底的な品質管理をしても、東京の水はマズいという評判は簡単に覆らない。

 東京都水道局は、2003年に調査したお客様アンケートの結果から「飲んでもらえるような水道水にしよう」と奮闘を始める。残留塩素を下限ギリギリまで減らすことで、カルキ臭をなくすといった水道の上流部から着手。しかし、それだけを改めても水は美味しくはならない。

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