【書籍・資料・文献】『ドキュメント 検察官』(中公新書)読売新聞社会部

検察官という仕事

 今般、弁護士がテレビ番組に出演することは珍しくない。それはニュース番組やニュースバラエティといった、報道色のある番組に限らない。法律を題材にしたバラエティ番組も増え、法律の専門家たる弁護士は重用される傾向にある。

 弁護士といった職業がテレビで当たり前になる一方、刑事裁判の原告を務める検察官はテレビで目にすることはほとんどない。

 少なくても、現役の検察官がテレビに出演して、何か見解を話すなどということは起こり得ない。そうした状況が、多くの国民と検察官とを引き離し、無関係な生活を送る要因になっている。

 テレビ番組で俎上にのぼる諍いは、民事事件が大半を占める。「訴えてやる!」というフレーズが溢れるのも、基本的に民事事件を想定している。

 検察官出身のヤメ検弁護士を見る機会はあっても、検察官そのものを見る機会はほとんどないだろう。

 検察官が担当する刑事裁判は、訴える・訴えられるをこちらの意思で決めることはできない。検察官の裁量に委ねられている。だから、私たち平凡に生活を送っているなら、事件の当事者もしくは関与することがなければ検察官と接する機会はない。

 刑事・民事問わず、弁護士はどちらの裁判でも登場する。検察官は刑事事件でしか登場しない。そうした限られたシーンでしか目にしないことも、検察という存在を縁遠いものにしているのかもしれない。

 そもそも、警察と検察が違うことすらわかっていない国民だって少なからずいるだろう。刑事事件に関与することがなければ、いや関与していても被告にならなければ検察と濃厚接触することはない。

 これは、以前にも何度か書いたことがあるが、私は過去に創価学会から刑事告訴されたことがある。

 それは2005年〜6年にかけてのことで、刑事告訴の取り調べで、私は4度にわたって所轄の四谷署に呼ばれて事情聴取を受けた。

 その後、一度だけ事情聴取のために東京地検へ足を運んだ。以降、東京地検に呼ばれていない。不起訴になったのか、はたまた起訴猶予という処分になったのかは定かではない。

 検察庁を訪れた際、入り口から部屋まで先導してくれた検察事務官は、「起訴されれば連絡はいくが、不起訴の場合は連絡しない。自分で確認するしかない」と教えてくれた。

 面倒だったこと、そして多忙ですっかり忘れていたことを理由に、今日まで確認せずに至っている。それから約15年もの歳月が経過した。その間、検察関連でも大きなトッピクがいくつかあった。

 例えば、小沢一郎衆議院議員をはじめ当時の秘書だった石川知裕衆議院議員が起訴された陸山会事件。

 小沢一郎議員には特捜検察による捜査のメスが入ったものの、決定的な証拠をあげることができず、不起訴となった。その後、検察審査会の議決によって強制起訴されるはこびになるが、小沢一郎議員の無罪が確定している。

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