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鉄道小話 無線式列車制御システム

東京メトロとJR東日本は、 無線式列車制御システムの導入推進に向け、協力して検討を進めます

というプレスリリースが2022年12月15日付で両会社の連名で出されました。
https://www.tokyometro.jp/news/images_h/metroNews221215_g34.pdf

私なりに少し解説したいと思います。

件名を見て分かったような分からない言葉が「列車制御」です。列車を制御するとはなんでしょう。簡単に言うと信号の話です。一般的には赤・黄・青のアレですね。
運転士さんは信号を見て列車を運転してよいか確認しています。

しかし、運転士さんも人である以上間違いが起こります。
鉄道の世界ではたくさんの間違い(事故)も歴史上起こってきました。

そこで制御するというお話が出てきます。路面電車はちょっと違うのですが、ふつうの電車はある決まった区間を閉塞(へいそく)と呼んで、そこに1つの列車しか入れないようにするルールになっています。

最初は信号すらなくて、タブレットとよばれる金属のカギを持った運転士さん(列車)のみが閉塞にはいれるようにしていました。

列車の本数が増えてくるとカギのやり取りが大変になってくるので、線路に電流をながして左側のレールから車輪を伝わって右側のレールに電流が流れて電流の量が変化するとそこに列車がいることが分かる仕組み(軌道回路)で信号を出すことにしました。

ここで車でもあるかもしれませんが、ぼーっとしたりして信号を見過ごすということが起こります。そうして前の列車に(1つの線路だったら向かってくる列車に)衝突するという事故が起きていしまいます。

衝突事故を防ぐには人間の眼だけに頼らないようにしようと考えられました。
(車も最近は踏み間違いや人を検知するアシスト機能がありますね)

まず最初に出てきたのがATSという仕組み。赤信号(次の閉塞に列車がいる)に近づくとキンコンキンコンと警報を鳴らすことにしました。

それでも警報を確認したよとボタンを押すと警報が鳴りやむ仕組みになっていて結果的に赤信号を過ぎてしまって衝突という事故も起きていました。(平成に入ってからも)
そこで強制的に列車を止めてしまう仕組みも出てきます。ATS-Pなどと呼ばれます。

また信号機を見おとすのなら、運転席に信号を表示すればいいじゃんという考えもありATCとよばれる車上に信号を速度として示す方式や信号にあわせて運転するのであれば自動で運転速度をコントロールすればいいじゃんと、駅発車時にボタンを押すと後は停止まで自動で運転してくれるATOという仕組みも開発されました。

これらはいずれも軌道回路を前提としており、ダイヤが乱れたりすると先の区間(閉塞)に列車がいることを検知して減速します。

一方で今回発表された無線制御方式では、列車と列車の位置を列車どおしが無線を通じて把握し、列車が走れる速度(次の列車に衝突しないよう止まれる速度)をつねにコントロールする仕組みです。

無線制御方式を導入すると何が良いかというと、軌道回路ではレールに電流を流して列車がいることを分かるようにしていたため、一定の区間(閉塞)毎にレールを区切って回路を分ける仕組みが必要だったのですが、それが不要となります。

また、踏切も軌道回路を利用した列車制御の場合、スピードの速い特急列車や通過列車でもスピードの遅い貨物列車でもある点を過ぎたら鳴り始めるため、貨物列車では待ち時間が長い場合がありました。その点無線制御では、列車が自分の位置と速度から踏切を安全に遮断できる時間を判断して踏切が鳴ることとなり待ち時間が少なくなる効果があります。

鉄道会社がコロナ禍で利用客が少なくなり赤字になったというニュースを聞きます。利用者が多くても少なくても同じ設備をメンテナンスする必要があり、少しむつかしく言うと固定費が高いため割と少ない減少割合でも赤字になってしまう構造にあります。

そういったなかで今回のプレスリリースは少しでもメンテナンスが少なくなる方向に動いているという話でした。


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