ネットの記事やFacebookを見れば、有名人や知人の成功話が目に入ってくる。

起業して成功しただとか、自分のブランドを立ち上げただとか。
結婚したとか家を買ったとか、最近仕事がうまくいってるとか。

そういう話を見るたびに私たちは自分と比較をする。
そして大抵、

「ああ、それに比べて私は全然ダメだ」

という気持ちになる。

「みんなこうやって自分の生きる道を見つけているのに、私はなんてダメなんだろう...」

みんなが発信する情報が、「昨日道でうん〇を踏んじゃった！」とか、「今日も職場でバチクソに怒られた！」とかばっかりだったら、
それを見た私たちは決してケラケラ笑ってそれでおしまい...なのだけど。

とにかく私たちは他人と比べたがる。

そして、仕事・生活、何においても明確な方向性を持っている人を見るたびに、
自分がちっぽけな人間に見えてしまう。

みんな生き方に悩んでる

さて、ネットで成功話を発信する有名人や知人たち。

彼ら・彼女らは当然、人生の方向性が明確になっているように見えるのだが、果たして本当にそうだろうか？

アパレル系の会社を作って成功した人物がいるとしよう。
彼は当然、その会社を成長させることに専念していくわけなので、人生の方向性はしっかりと決まっているように見える。

だがそれは周りから見た時だけであって、実際には分からない。

アパレルの世界で上手くいったけれど、実はITの世界で勝負したかったかもしれないし、
お金はあるけど時間がない、という状態に強いフラストレーションを感じているかもしれない。

仕事はうまくいっているけど、もう5年も恋人がいないかもしれない。
実は仕事なんてどうでも良いから、素敵な恋人と毎日ゆったりと過ごしたいと思っているかもしれない。

人生の方向性が明確なように見えても、実際にどうかは分からない。
人間には様々な側面があって、その全てが満ち足りていることなんて、ほとんどあり得ないからだ。

どんな人も、少なからず人生に悩んでいる。
『本当にこれで良いのか？』と、いつも考えて生きている。

キラキラして見える人たちっているけれど、それは対外的なパフォーマンスの賜物なので、それを間に受けない方が良いと思う。

実際には心の奥底に、どろどろとした暗い『悩み』が潜んでいるはずだから。

”人生の悩み”から逃れることはできない

よく、『20年後の自分を思い描いて行動しよう！』と言う人がいる。

非常に結構な心意気なので、参考にした方が良いと思うし、数十年後の自分を思い描いておくことは非常に重要だ。

では、『20年後の自分』が具体的になったからといって”人生に悩む”ことは無くなるのだろうか？

答えはNOだ。
僕自身、20年後の自分の姿をノートいっぱいに書き殴ってみたけれど、”人生に悩む”ことを避けることはできなかった。

文字やイラストで埋め尽くされたノートを目の前に、描き終えた時点での僕は非常に満ち足りた気持ちだったけれど、数週間後、すぐまた不安に襲われた。

あの時書いた人生は、本当に僕が理想とするものなのだろうか？

そう考えては、自分自身が分からなくなった。

きっと、誰も”人生の悩み”から逃れることはできないのだ。

全てを悟った人であっても、きっと悩んでいる。

悟りを開いた後のブッダだって、人々に教えを説きながらその道中で、「本当にこのままで良いのかな...」と不安になっていたはずだ。

良い人生だった...と言って病床で眠る老人だって、「あれ、本当にこれでよかったのかな...」と思っているはずだ。

結局、どれだけ悩んでも、どれだけノートに書き殴っても、どれだけ座禅を組んでも、”人生に悩む”ことから逃れる術はない。

人生が続いている以上、逃れることはできない。
逃れる術があるとしたら、死ぬ時だけだ。

悩みながら生きていく

これまで誰も想像していなかった職業が生まれ、様々な生き方が可能になった現代。
働くこと・生きることの選択肢はとんでもなく多くなったし、これからも加速度的に増えていくことだろう。

そんな時代にあるからこそ、自分の生きる方向性を一つに絞ることは、あまりに難しい。
ほとんど不可能だと言っても良いだろう。

逆に、生きる方向性を一つに絞ったところで、自分の生き方を見つけたところで、果たしてそれで満足するのか？という疑問も生まれる。

１人の人間がいろんな顔を持ち、いろんな仕事をこなし、いろんな立場で生きている今の時代、
生き方を一つに絞ることはあまりに「もったいない」ことなのかもしれない。

そんな時代だからこそ、人生に悩んでて当たり前。
人生に悩んでいる状態こそ、健全な状態なのだ。

人生に悩みがないのだとしたら、それはその人の人生が”頭打ち”だってことだ。
それ以上発展する可能性も、拡大する可能性もないから悩まないんだ。

今、”人生に悩む”ことがあるのなら、それはその人生にまだ見ぬ選択肢があるってことだ。

だから、人生に悩んでいことに安心しよう。

悩んで、考えて、あれもこれもと欲張って、生きていこう。