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子供達との旅を行うために大切にしていること

今年の100マイルアドベンチャーのロケハンを終了し、いよいよルートの最終調整に入っている。

今年で13年目となる100マイル。

開催地を毎回日本各地で変えているが、ルートを作るのも大変な作業だ。

ルート作成にはいくつかの段階がある。

①まずは、地図上で大まかにスタートとゴールを決める。
過去の例で言えば、昨年2023年だと「今年は九州に行こうかなぁ」と、まずは漠然と決める。
Googleマップを見ながら、九州の中でどこのあたりを歩こうか。どこが楽しいだろうか。ここ行ってみたいなぁ。そうやって、土地を想像していく。
スタートとゴールが程よい距離で、それぞれが象徴的な場所が良い。昨年であれば、福岡タワーから長崎平和公園、長崎平和公園から熊本城、という2ルート。
日本中から参加者が集まってくるので、集合と解散の場所のアクセスも考えておく必要がある。

②大まかにルートが決まったら、細かいルートを考える
「福岡タワー〜長崎平和公園」「長崎平和公園〜熊本城」という大まかなスタートとゴール地点が決まったら、実際にどの道を歩くかをGoogleマップ上で考えていく。
重要なのは、宿泊地となるキャンプ場の配置だ。良い具合にキャンプ場があるかどうか?100マイルでは、一日歩き終わった場所からキャンプ場まで車両移動することもあるので、必ずしもキャンプ場が等間隔に存在している必要はない。が、それでも「車で20km行かないとキャンプ場がない」なんていうのは遠すぎる。
宿泊施設の存在、歩くことができる道かどうか、距離感、高低差、なども考えて、地図上でルートを作成する。
過去には、このルートは良いなぁと思って繋げようと思ったが、キャンプ場が全然なくて諦めたというルートもある。

③ロケハンに行く
地図上でのルートが出来上がったら、いよいよ現場を見に行く。
ロケハンは、歩くわけではなく車で行く。実際に行ってみなければわからないことがたくさんある。
主要な国道で、交通量はめちゃくちゃ多いのに、道が細くて歩道がない。しかも、路肩は草が茂っていて車道にはみ出て歩く必要がありそうな道、なんてところはよくある。
結構難しいのがトンネルだ。山間部の国道のトンネルなどは、拡幅工事もなかなかできなかったりするので、非常に狭く、暗く、交通量が多いトンネルもいまだにある。
短いトンネルであれば良いのだが、そこそこ長いトンネルをどうやって安全に通過するか。もしくは、そこは回避するか。それも、ロケハンに行きながら現場で考える。
子供たちを連れて歩くのに、ここは危なくて歩くわけにはいかない、と判断すれば、ではそこを回避して行くにはどの道を歩けばいいだろうか。それを現場で見つけながら、ルートを繋いでいく。
宿泊のキャンプ場の状況なども、実際に見ておく必要がある。

④ロケハンの結果をまとめて、一本のルートにする
ロケハンを経て、実際に歩くルートを確定させていく。キャンプ場や宿泊施設の予約を行い、ようやく今年のルートとして発表、募集となる。

先日、今年のロケハンを終えた。
これから4番目の段階、ルートを仕上げる作業に入る。

こうやってルートを作成するのだが、実際に8月の開催の時には、この予定が変わっていくこともある。

予定変更の一番の要素は天候だ。

台風がやってくる、ゲリラ雷雨で川が増水して予定の道が歩けない、あまりにも猛暑が厳しすぎて歩くのを中断する、などなどなどなど、これまで12年間17ルートやっていると、いろいろな事があった。

その度、予定のルートを変更したり、休養日などの日程を入れ替えたり、昼に歩かず夜中に歩いたり、その場で対応策を考えながら歩いてきた。

今までの17ルートは、全てをつないで歩いている。この年のここのパートは結局歩けなかった、ということもなく、全員が全てのルートを歩く事ができた。

100マイルアドベンチャーで大切にしているのは「計画に従うこと」ではなく「感情に従うこと」であると、以前のnoteにも書いている。

しかし、それはあくまでも「子供たちが大事にしてほしいこと」である。主催している私は、あくまでも子供たちの安全を第一としながら、最大限の力を尽くしてスタートとゴールをつなぐことが重要だと思っている。

「計画に従う」ことを重要視しているうちは、世界の広がりを生み出せない。
旅は、未知との出会い、不意なるものとの遭遇によって、世界を広げてくれる。
人為的に予測された計画を忠実に遂行するためには、未知性を排除することが重要になる。未知を排除し、事前の計画に自分のありようを適応させていく。未知は楽しむものではなく、単なるエラー要素でしかない。
そうではなく、何が起きるか分からないことに楽しみがあり、その場の瞬発力の感情で身の処し方も決めていく、という人為を離れたものをどれだけ信頼できるか。

未知性を大切にするというのは、どれだけ自分自身の予測の範疇外の要素を信頼できるか、ということでもある。
社会に生きていれば、目の前にいる他者もまたエラー要素だろう。他人は自分の思い通りには動いてくれない。しかし、信頼によって関係を作っていくことで、裏切りの可能性も飲み込んで社会は動いていく。
安心したければ、他人は信頼しない方が良い。裏切りの可能性を完全に排除するためには、誰も信じなければ良い。
信頼するためには、裏切りの可能性を残したまま、信頼する必要がある。そのためには、安心を犠牲にする必要がある。
信頼するためには安心を犠牲にし、安心するためには信頼を犠牲にする。

安心するためには、計画が必要になる。計画するためには、未知性を排除する。つまり、未知性を排除していくことで計画し安心を獲得していくが、その結果として信頼を犠牲にしていくことにもつながる。

計画に従う、というのは、未知性を排除し、他者性を排除し、人為の範疇に埋没していく、ということにつながっていく。

感情に従う、というのは、自分の感情を大切にし、他者の感情も大切にする。未知性を受け入れ、人為の範疇の外側に広がる世界を信頼していく、ということだと思う。

100マイルアドベンチャーでは、子供たちには感情を大切にしながら、計画や予定に従うのではなく、その瞬間ごとの出来事を体全身で受け止めながら、旅を行ってほしい。

それを主催する私たちは、子供たちが安全に各家庭に帰る事ができるように、みんなでゴールをするという計画を大事にしながら、瞬間の感情を子供達と融合させて決められた日程の中で最高の旅を行う。

計画遂行能力を磨くのは、もう少し大人になってからで良い。子供のうちは、まずは感情を磨き、未知を楽しみ、世界を信頼する体験をしてもらいたい。

それが、100マイルアドベンチャーで大切にしていることだ。


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