鼎談：「ぷろおご×伊予柑の大預言」をアーカイブします..

大預言を読む

今回はスペシャルゲストに素数量子さんをお招きしております。こちらは鼎談を加筆編集したものです。

◼️今回の課題図書

前回までの大預言

傷つけないことってむずかしい。生きていれば当然のように、傷ついてしまうし、傷つけてしまう。わたしがわたしであるために、わたしは傷つけられて、もうわたしであることをやめたいと思ってしまったりもする。不意にその人の口からこぼれる、「消えたい」ってそういうシグナルじゃん？

「あなたはなぜあなたの話をしないの？あなたの話をして！」まったくやれやれだぜ。いつのまにか、こんなことを言われるようになっちまった。自分の話をしなければ、この人は傷ついてしまうだろう。傷つけたくないんだよ。だけどさ、僕っていう人間は自分の話をするのがすこぶる苦手なんだ。さて、どうしたもんかな

今回お送りするのは、居るのはつらいよ（２）
西洋医学と東洋医学のちがいや、ゲームにハマる人間の心理から、ケアとセラピーのちがいについてめぐります。

居るのはつらいよにあんまり興味がなさそうだった素数さんですが、ぷろおごと伊予柑が話しているのを聞いているうちに、興味がわいてきたようです。

◾️前回記事

ケアをするには、問いは必要か？

伊予柑：居るのはつらいよ２です。どこがおもしろそうに感じましたか？

素数さん：僕はニーチェが好きで、ケアとかセラピーってあんまりなじみがないっていうのと、自分はあんまり、ケアとかそういうのを求めてないと思ってたんですよ

素数さん：僕はシミュレーションゲームとかで、擬似的な人間関係で、満たされてたと思ってたんです。パソコンを開くと、かわいい女の子のキャラが自分にしゃべっているような感覚があるから、現実には要らねえよってなってたんですけど、じゃあなんでスラムにいるんだろう？って

ぷろおご・伊予柑：お、おおお・・・！

素数さん：ゲームはケアしてるようで、実はセラピーの可能性があるんじゃないか？と思ったんです。

オタク文化とケアってつながっている気がしていて、推しとかもそうだし、一時期のアニメとかゲームのキャラって病弱な女の子がよくでていたんですよ。ケアするような感覚を得たり、逆に主人公がケアされるみたいな場面とかもあったりして

ぷろおご：されるんじゃなくて、するほうってこと？

伊予柑：キャラクターを治すほうだったら、セラピーですね

理由なくその場所に留まれるとしたら、そこを居場所だと感じているから？

素数さん：ゲームの世界で満足すればいいんじゃねって思ってたけど、それだけで満足してたらさみしさとかは感じないだろうし、コミュニティとか絶対に興味持たないと思うんです。

最近はスラムのうわさ話が面白いと思ってるんですけど、うわさ話を面白いと思う、そんな自分の感覚も面白く感じますね。

あんまり人に興味がない感じだったんですけど、うわさとして間接的にその人の話を聞くと一回話してみたいな〜と思ったり、スラム、ケアじゃね？というのは思います

ぷろおご：それは間違いない。スラムはなにもセラピーしてくれない！なんにもしてくれない

伊予柑：セラピーは問題解決なんですね。これをやると何かが解決する。お医者さんに行くと風邪が治るように

ぷろおご：西洋的なアプローチですよね

素数さん：スラムの「なんでも聞いていい部屋」を読んだり書いたりしてるんですけど、Yahoo!知恵袋とは全然違うな〜と思っていて、まずベストアンサーとか決めないじゃないですか。

思ったことを書けばいいだけで、しかもそれが正しいとか正しくないとかは関係なく、返してくれること自体が重要なんですよね。

スラム以外のコミュニティにも入ったりしてたんですけど、リアクションがあるのとないのとで全然違いますね。スタンプひとつでも違う。人数が多ければそれでいいわけでもないみたいで、人数が多くてもリアクションつかないコミュニティがけっこうあるんですよ

ぷろおご：コミュニティ風な掲示板というかね、ほとんどがそうですよね

素数さん：ほぼROM専だったりとか、ほとんどそのコミュニティのマネージャーが投稿してるとかそういうところが多くて、そういうところに居場所は感じないですよね

ぷろおご：便利だから居るとかね。セラピー的に使えるから居る。儲けたくて、儲けるアドバイスをくれるから居る

素数さん：スラムがそういうのとは全然違うコミュニティだから面白いなぁというのはひとつあります

ケアを得れば、虚無感をなくすことはできるのか？

素数さん：この本を全部読んでないので、なんにも言えないんですけど、最後のほうでニヒリズムについて書かれていて、僕はニヒリズムの対処法は人によって違うと思うんですよね。僕はニーチェ路線でニヒリズムを克服しようとしてたんです

伊予柑：ニーチェはニヒリズムの本丸ですね。ニヒリズムはニーチェといっても過言ではないぐらいなので

素数さん：いわゆる虚無感みたいなものに対して、どうやって独自の価値みたいなものを自分で決めるかというような、マッチョなことをやるんですね

伊予柑：問題解決的ですね

素数さん：みんなが超人になれるかというと、僕はそんなことないと思ってて

ぷろおご：ニーチェがでてきたのは何年でしたっけ、200年ぐらい居ないわけですからね。居たとしても3、4人ぐらい。しょうがないですね、むりでした！

素数さん：もしかしたら、ニーチェに必要なのはケアだったかもしれない。ケアが足りなかったから発狂した可能性もありますからね

ぷろおご：結局、本人は発狂してますからね

素数さん：発狂したくなければケアが必要かもしれない

ぷろおご：そういう意味でいい課題図書ですよね

友達がいないことに気づくのはいつ、どうやって？

伊予柑：デイケアセンターのケアって毎日同じ日常を送ることなんですね。大事なことは毎日、同じ日常をやることで、メインの人の仕事は「おはよう」って挨拶するだけみたいな感じなんですよ

素数さん：すげえ健康的

伊予柑：「じゃあ、日が暮れてきたね、バイバーイ」っていうのがケアなんですよ。これって友達じゃん。その人は友達の専門家なんですよ

ぷろおご：スラムは基本的には友達をベースに設計してるわけだよね。ケアがある場所はほかにあまりないので、それをつくってきたんだと認識できますね。セラピーはもう要らないんですよ。便利なものはいっぱいインターネットにあるし、ツイッターに書いたら教えてもらえるし、Chat GPTに書いても教えてもらえるので。

やっぱりケアっていうのは友達がいないとできないから、友達がいる人はそれだけでいいんですよ。だけど、いないじゃないですか

伊予柑：レンタル彼女はありますけど、レンタル友達ってまだワークしてないですよね

素数さん：ちょっとネタバレかもしれないんですけど、タイトルってどういうことなんですか？

伊予柑：これは完全にいちばん最後のネタバレなので・・・

最初は単純に「ここにいて」って言われた新人のデイケアセンター職員が「えっ、居るだけっすか？暇なんですけど、つらいよ」からはじまります

ぷろおご：セラピーがしたかったんですよね。セラピーをしてると暇しないし、訪れる人はわかりやすく回復していき、「ありがとうございます。」って言われて嬉しいし。

ケアって誰がケアしたのかわからないし、なんかケアされていってる人がいて、健康になっても居なくなるだけという。「あれ、やりがいがない…？」みたいな話で

伊予柑：「オレ、おはようしか言っとらんのだが？」

ぷろおご：そこらへんの話が最初にありますね。おもしろいですよ

伊予柑：何回か読めるというか、自分の感覚が変わったらまた違う見え方がするんだろうなっていういい本

素数さん：読んでないからアレなんですけど、ニーチェ読むより幸せになりそうですね

伊予柑：両方読むとまじでいいと思う

愛と呼ばれるものに満たされているとき、ふたりの関係にはケアがふくまれている

伊予柑：ちなみに話の中盤で、だんだん同僚が辞めていくんですよ

素数さん：なんかつらそう

ぷろおご：スラムもあるじゃないですか、「引退します」って

素数さん：このタイトルを見て、一番最初に思ったのは、人間関係リセット症候群とか、グループライン辞めちゃうのはなんでだろうって。グループラインだけじゃなくて、お金とか払ってないコミュニティでも人がいなくなることがあったりするじゃないですか。個人的にはすごく気になっていたので、そのヒントがありそうだなと今日思いました

伊予柑：ぜひ読んでみてください

ぷろおご：居づらさみたいなね

伊予柑：合理的な関係だけではないんですよね

ぷろおご：そういう意味でいうと、ほとんどの男女関係って唯一残されたケアの場だとおもうんですよ。

わかりやすく「彼女募集してます」「彼氏募集してます」というきっかけがあって、お互いが消費するのはケアっていう、一緒にダラダラする時間がほしいから一緒に住んだりするじゃないですか

伊予柑：それなのにTinderだと年収だの顔だの、セラピー的な要素でバトルするんですよ

ぷろおご：どんどんパッケージが失われてきてますね

ぷろおご：彼女なんか要らないよね、結婚なんか要らないよねっていう状態になると、外から見たときには変わらないんだけど、「なんか具合悪くね？」みたいなことが起きたりするんだろうね。食べ物とおなじで、栄養素ってのがあるわけじゃないですか。

肉体的な栄養素だけじゃなくて、精神的な栄養素みたいなものもあるとおもうんです。それを摂ろうとして、完全栄養食だ〜とかいって飲んでも、腸とか消化器官的な限界はあるわけで、そんな同時にいろんなものを入れられても困るわけですよ。

飲んだ気になってるんだけど全部でていってるみたいなことになる。そうなると、欠乏するものがでてきて、それによって体調が悪くなって、なんだろうなぁって思いながら、ずっとTinderするみたいな。

海水を飲み、「水分取ってるはずなんだけどな〜」って汗をかいてるみたいな話だよね

凝りは偏りによって起こる。長続きする関係のための、最良なセラピーとケアの配分をどうやって知るのか？

伊予柑：まさに西洋医学と東洋医学がセラピーとケアの関係で、僕は鍼を2週間に一回受けてるんですけど、鍼って究極的になにをしているかというと、体の血液バランスをフラットにしてるだけなんですよ。

たとえば、頭脳労働をやってるときって脳に血液を集中させてるんですよ。それは脳を使うからしょうがないじゃん。でも、そうなるとほかのところの予算が足りなくなって、内臓とかは血の巡りがおろそかになる。なので、お腹が空かないとか消化が悪くなったりする。もしくは、筋肉の方の血液をしぼるので腰が痛くなったりすることもある。

逆に、スポーツをやってる時は脳とか内臓の血液量を落としたりするみたいに、血液が偏るんですよ。それを東洋医学はフラットにするだけなんですね。なにも治してないのよ。

たんに「今、脳モードになってるのをオフにしようね〜フラット〜」って言ってフラットになった状態で寝るとわりと回復する。まじでケアなんですよ。なにもしてないんです。治すのは自分だから。

一方、西洋医学は「お、肩が凝ってる。湿布で炎症を抑えましょう」と問題があって、それを解決している

ぷろおご：それで、とりあえず痛みがひいたりする

伊予柑：西洋医学的なアプローチだけだと自分の回復力は得られないので、トータルでは治らなかったりする。でも、わかりやすい。

つまり、「私は不幸、年収が高い男がほしい！」が西洋医学じゃないですか。ほんとうはなんとなく気があって、一緒に安いご飯が食えればオッケーかもしれない。これは東洋医学的ですよね

ぷろおご：「〇〇する方法」みたいなわかりやすくフィードバックがあるものって流行りやすいですよね

伊予柑：うん、流行りやすい。わかりやすいからね

ぷろおご：そういうものはセラピー的ですよね。それをやるのはいいんだがそれによってケアがおろそかになると、長期的に見たときに「んん？」ってなる。

それこそ、すごいジムに行って筋トレしたりするよりは、住む場所を変えて、駅から徒歩10分、毎日歩くとかそういうほうが効果的だったりするんだよね。

でもなんとなく気がついたら健康になってくるから、「なんでオレは最近調子がいいのかわからないけど、まあよかった」ってなる。風水とかもそうじゃないですか。

ケアみたいな扱いで、できるだけフラットに状態を保てるような環境に住むべきだよ、居るべきだよっていうけど、わかりづらいからどんどんおろそかにされていくというか。

「べつによくない？東京の3畳の部屋に住んでても。寝るだけなんだし、シャワーだけあればいいよね」っていう考え方だと、だんだん体調が悪くなっていったりする。たしかになにを失っているのかわからない。

意味と合理性を追求すると、どこで破綻することになるのか？

伊予柑：知り合いに会社でMVP獲ってるようなめっちゃ賢くて行動力のある優秀な女がいるんですけど、そいつが離婚したんです。で、その報告を聞いていたんですけど、結婚相手はめちゃくちゃ合理的で賢いやつである。と。

お互いの幸せを最大化するために最大化したと、好きなものを食い、好きなときに好きなことをして非常に合理的に暮らしていたし、年収もWカップルでめっちゃよくなり、家もよくなり、幸福度は最高のはずなんだが別れた

ぷろおご：ど、どうしてだろ〜

伊予柑：その女の反省会を聞いたところ、一緒にメシを食うべきだった・・と

ぷろおご：いいですねぇ・・・

伊予柑：一緒にメシを食う必然性ってないじゃないですか。個別で好きなときに食えばいい。しかし、１日２食、一緒にメシを食うべきだったという反省の弁を述べており、あらためて一緒にメシを食うってめちゃめちゃケア的ですよね

ぷろおご：Bruno Marsっていうアメリカの歌手がいるんですけど、

花を贈ればよかった、そして手をとって・・・

こういう歌詞があって、これもケアですね。
やることはご飯食べたりとかとおなじで、日常に寄り添って花束をあげる

伊予柑：意味のないことがまじで意味があるんだよ

素数さん：意味のないことを切り捨てると最終的に意味がなくなるという

伊予柑・ぷろおご：そうなんですよ・・

ぷろおご：そこがむしろ基盤になるはずなのにそれを忘れちゃうと、あれ？ってなる

伊予柑：じゃあ次は意味のないことは意味がないよねって言ってる人の話です

（つづく）

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