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感性工学がデザインに資する可能性

初めまして、こんにちは

事業会社でインターンをしているohaです。

このnoteでは、私が大学院で研究をしている感性工学にについてお話しします。就活をしていると、「大学院で学んでいること(感性工学)がどのようにデザインに活かせるの?」「感性工学って何?」という質問をよくいただきます。それに併せて「学部(メディア学)と大学院(工学)での研究の繋がりってあるんですか?」等もよく聞いていただくので、かる〜く自己紹介も含めて、お話しできたらと思います。

研究を始めたばかりの若輩者ですので、訂正・補足等ありましたらご連絡いただきたいですmm

感性工学のなんぞやをサクッと知りたい方は見出しから飛んでくださいね〜


感性工学との出会い

そもそも私は、学部でメディア社会学を研究しており、取得した学位はメディア学士です。

私なりの解釈ですが、学部が作られた背景として「昨今の世界は、メディアの影響が強く、グローバル化が進んでいる」であるが故に、メディア・英語・マネジメント系のさまざまな分野のゼミがありました。

メディアのハードの部分はどう作られているの?→プログラミング系
メディアからどんな現象が読み取れる?→メディア社会学系
グローバルな視点で見たビジネス→ビジネス系、マネジメント系
英語の教育について知る→英語系
…etc

私はその中でもメディア社会学系のゼミにいました。

ゼミの先生は皇室の方々のファッションから意図や背景を読み取り、分析することを専門にしていました。ファッションをメディアと見立てたんですね。
※人と人の間にあって、情報を伝える媒体はメディア、という捉え方をしています。

そこで私は、絵本をテーマに研究していました。
絵本を読む体験において、何を読んでいるのか・体験しているのか、という今考えると研究とも言えないようなものでしたが、、、。
ざっくりいうと、絵本を読む際には以下の3つを体験しているよね〜と考察した事例研究です。
①作者の社会的背景がこういうところに反映されていて、それを読んでいる。
②言葉と絵を、意味を補完しながら読み取っている。
③視覚表現の体験として、色によって感情を読み取っている。

この③を考えているとき、「本当か!?」と率直に思ったのです。


「この場面で赤色は溢れ出る怒りの感情を表している。」


確かにそう伝わっているけれど、それって私だけが感じているものではないのか?

もう少し確実性を持って、解析することはできないのか、、
せめて数量化できないのか、、

Googleで「画像 表現 感情」などと検索していくうちに行き着いたのが、感性工学でした。


Google大先生。


※デザイナーに興味はありつつ、「デザイナーになれるわけないな」と思っていた私は、興味のあった「感性工学」「京都に住みたい」を起点に東京を出て、京都へ院進したのでした。デザイナーになるための足掻きとも考えられますね、、。そして今は社会学と感性工学を組み合わせた研究テーマを持つことに、、。コネクティングドッツ。


感性工学とは


さてさて本題へ

感性工学会は「感性工学」を以下のように説明しています。

感性という価値の発見と活用によって、社会に資することを目的とする学問
〜中略〜
感性を活用した哲学の実践、感性豊かな人々を育む教育、美しい風土の実現などを初めとして、感性の計測と定量化に関する手法の開発、揺らぎ・ファジィ・フラクタル・複雑系というような新しい解析方法の導入、情報工学・人間工学・認知科学・心理学・デザイン学などの諸領域にわたる学際的研究、さらにはこれら成果の事業化や産業化への検討など、既存の工学や境界領域で取り上げにくいテーマに積極的に対応

日本感性工学会(https://www.jske.org/abouts


また、こんなふうにも言われています。

商品に抱いている心理的イメージを具体的な商品設計に翻訳し表現する技術

長町「感性工学とは」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber1944/50/8/50_8_P468/_pdf


ざっくりいうと、感性を数量化して、ものづくりに活かしていくような学問です。(面接だとこんな感じでお答えしている)


具体例を簡単に説明するとこんな感じです↓

白には、クリーム色っぽい白、灰色っぽい白、青みのかかった白、、などなど幅があるなかで、「人間はどこまでを白として認識するのか」を、数量化する。これを白の幅が広い再生紙に置き換えると、どこまでを白とできるのかがわかります。それによって再生紙の適切な白色が明確になるのです。
詳しくはこちら

他にも、「お菓子のイメージとして何色が適切か?」「ロゴに利用されている色によってイメージはどう変わるか?」などなど

ちなみに、私の研究室ではメーカーの開発職を希望される方が多いです。


ここまでで、なんとなく感性工学のことは理解いただけたかなと思うのですが、日本語の「感性」には異なる使われ方があるため、混乱を招いているところがあります。

一つは、美学という意味での「感性的認識能力」"aesethica"
こちらは1700年代にドイツのバウムガルテンによって提唱されたものの、日本では「美学」と翻訳されました。

一方で、感性工学における感性は、以下の言葉たちを包含しています。
・外部情報による情報を受容する感覚
・感受性
・感情や情動
・気持ち

(参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsoft/16/5/16_KJ00003258330/_pdf

そのため、英語でもKanseiと表記されるのです。
ややこしや。


それでは、感性工学がどんなふうにデザインに資することができるのか、お話していこうと思うのですが、その前に感性工学がどのように始まったのか、背景を説明させてください。


そもそもの感性工学のはじまり

大量生産大量消費の時代、「こんなものが売れるんでしょ?」「こういうニーズがあるんでしょ?」といった、企業が作りたいものを作るプロダクトアウト方式によって、人の物質的豊かさは満たされていました。

しかし、モノが増え、消費者は購入するモノを比較できるようになり、モノが与えられる価値を見直す必要が出てきました。企業も、消費者がどう感じ、何を求めているのか、ニーズを捉えた商品開発をしなければならなかったのです。

そこで、「人間の根源的な能力としての感性を中心にした科学技術」として、感性工学は生まれたのでした。


つまり、人間の感性を中心にしたものづくりを始めようとしたんですね。



感性工学がデザインに資する可能性


それでは、結論にいきましょう。
感性工学がデザインに資する可能性として二つ考えられます。
※あくまでも可能性で、まだまだ実践は足りていないです

①ユーザーやデザインを理解する手段の一つになり得る
IT系だと顕著だと思うのですが、デザインに対してのユーザーの反応・数値から、ユーザーの感性を知ることができます。
そこからユーザーにとって好ましいデザイン・そうでないデザインがわかってくると思います。
ただの🆎テストも、科学しようとすればできる、はず。

また、ユーザーリサーチでも、「広告が多く感じる」というご意見があれば、「どれを広告と認識しているのか?」もしくは「何個で広告を多いと認識するのか?」等々の問いがたてられるのかな、と思います。


②ユーザーの情報をもとにプロダクトに反映する
元々がものづくりのために発明された学問なので当たり前ですが、ユーザーの情報から数量化されたものをデザインに反映することで、「ユーザーが使いやすいデザインとは?」を深めていけるのかなと。

UIUXデザイナー初学者必読の「UXデザインの教科書」でも、ユーザー体験を考えられる学問の一つとしてあげられています。ユーザー中心設計を知る上でも、なんとなく知っておいてもよいのでは?と思っています。


感性工学を学んでみてどう?


論文を読んでいて、「本当に?」と思うことも全然あります。笑
その母集団で合ってる???セグメントの切り方細かすぎない???みたいな。笑

しかし、指標の一つとして、分析の考え方は身についてきたのかなと思います。
とはいえ、定性分析でしか見えぬものも勿論あって、そこはバランスよく筋肉をつけていきたいところ。

学問は奥深いけれども、指標のひとつでしかなく、定規をいくつも携えて、適切な定規を使って、現象を捉え、考え、デザインをしていく必要があるのかなと。

うまく定規たちを活用しながら、ユーザーの理想に近いもの、自分自身が使いやすいものをデザインしていきたいですね。


ここまで読んでいただきありがとうございました。
あと1年の修士研究、頑張っていきます。



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