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叫びたいくらい好き


田んぼに水が入る、

小さな苗がゆれる。


瀧の瀬に似た、水路の水音

空が大地に映る。

私が生まれた町には少しずつ田んぼがあった。

どんどん、住宅になっていったけど。

幼い頃間近で見てた田んぼの
田植えの頃のことは記憶にない、のに。


ここに「帰って」きて、
憶いだした。

大地の枯れる12月、
ここに初めて立った時の
誰も彼も知らない、
土地のことも知らない
場所の花も緑もない、
寄る辺ないさみしさが

3月、水路が干上がる人為的な水どめが終わり、
広大な面積の田に水が張られていく様で
自分の心にも潤いを取り戻し、

4月、花や緑の歌と共に、
日本人の命の糧であるイネの苗が
祈りと共に大地に添えられていく。

みずうみのようになった
水田を渡る空気を吸いながら、
私は憶いだした。

子どもの頃の記憶なのか、
遺伝子に刻まれた先祖の記憶なのか、
それより生まれる前の記憶なのかわからない。

私はここに「帰って」きた。

ずっとここに帰ってきたかったんだ。

どんな美しい花も景色も敵わない。

私はこの天地をつなぐ田んぼの世界に
帰って、きたかった。

自分で田んぼをすることは
今は叶わない。

農家さんには厳しい政策が続いている。
気候も穏やかではない。
高齢化は止まらない。

そんな中で、
今年も田に水を引き、
苗を植えてくださった皆様に
最大の祝福がありますように。

叫びたいくらい、田んぼの世界が好き。
大好き。




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