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潮の香りがする

風に乗って、

海の見えない町にも、

潮の香りがやってくる。

埼玉の内陸生まれには、とても、不思議なこと。

自転車も、野ざらしにすると、すぐ錆びる。

傘も、すぐ錆びる。


潮が降ってくるのだ。

高知のここの空気には、

埼玉や東京と違うものが入っている。

見えないけれど、入ってる。


この空気を吸うと、

昔覚えた歌の感覚が、初めて本当にわかる気がする。



千里寄せくる海の気を

吸いてわらべとなりにけり

(唱歌、我は海の子)



実をとりて胸にあつれば

新たなり流離の憂い

海の日の沈むを見ればたぎり落つ異郷の涙

思いやる八重の汐じお

いづれの日にか郷里(くに)に帰らん

(椰子の実)


強い憧れはあっても、

海はあまりにも巨大な自然で、

怖いものだと思っていたし、

海の近くに住むことなど考えたこともなかった。


そんな私が、

日々潮の気を吸っている。

欠けたものがはまったような不思議な感覚。


どこまでも遠く、どこまでも広く、どこまでも深い。

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(室戸)


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(桂浜)

名勝、桂浜の坂本龍馬像は

遠いアメリカの

カルフォルニアの方向を見つめていると言う。


封建的な差別階級意識が根強い、

龍馬が生きた時代、

特権階級の切り捨て御免が許された時代、

今よりもっと

意味不明なルールがあり

道理が通らず叫びだしたいことも、

やけになりたいこともあっただろう。

現にそのエネルギーで、脱藩し、今でいうとフリーランスで働いた。

そこにいたるまでのもだえるような叫びを受け止めたのは、

多分海なんだろうと、

肌で感じている。









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