第10回 リンダグラットン教授(2)

ロンドンビジネススクールより、リンダグラットン教授をお迎えした第10回(part2)の文字起こしになります。お楽しみください!



のりぞー:今回は引き続き、リンダグラットン教授のインタビューをお届けします。
二人:それではお楽しみください。

質問4:アッカさん(20代女性・会社員)
私は非常に上下関係の強い保守的な会社で若手社員として働いています。どうやったら、会社の文化をよりオープンでフラットな文化に変えられるでしょうか?

リンダの回答:
日本の企業文化は世界で最もヒエラルキーがある文化の一つです。若い女性が縦社会の中で働くというのは難しいことです。なので、選択肢は二つしかありません。


一つ目は、変化を起こすために立ち上がること。

二つ目は、縦の縛りが強い会社を去り、もっとフラットな組織な会社に入りなおすこと。


今日本では、変化のために努力している会社が増えてきていますので、そういう会社を選んで移るのも良いでしょう。もし、今の会社にアッカさんが留まりたいのであれば、勇気を持たなければなりません。日本人の女性は自分の権利のために発言をし、行動を起こすという訓練を受けてきていないので、それはとても勇気が必要で難しいことだと思いますが、自分が立ち上がって行動を起こさない限り、変化は起きません。


ヨーロッパやアメリカではアッカさんのような普通の女性が立ち上がって、私はこれが欲しい、という発言をしてきたから、今の地位を女性が得ているのです。日本の文化の中で簡単ではないと思いますが、それ以外の方法は無いです。

追加質問:
日本企業で変化を起こしつつあるような、ポジティブな事例はご存知ですか?

リンダの回答:
一緒に活動している企業の中でも、多くの企業では問題を認識していて、働きかけを始めています。速度が遅いという認識はありますが、変わりたいという強い想いを持っています。


ここでは問題が二つあって、変化にかかるその速度の遅さと、あとは個人がどれだけ勇気を持てるか、という点です。特に勇気について。何が欲しいのか?というのを、一般女性が具体的に明確に周囲、上司に伝える必要があります。

質問4:コウヘイさん(30代男性・1000人以上の会社所属)
リンダ自身の100年ライフの向き合い方について。
リンダ自身、100年人生を達成するために、どういったゴールや、マイルストーン、中間地点の目標を立てていますか?

リンダの回答:
興味深いことに、100年ライフを書くことで、自分自身への理解が深まりました。
私は今63歳ですが、まず最初に、私は、これからも働き続けたいということ。そして、年齢だけによって型にはめられたくない、ということを感じています。若い世代の人や学生、若い教授などと一緒に仕事をすることは、私の一つの本当のゴールです。

そしてもう一つのゴールは、旅をすることです。私は沢山旅をしており、日本にも何度も足を運んでいます。また、アフリカにも行っていて、アフリカの全部の国を訪問することが目標です。ゴールを持つことは素晴らしいことです。

今私は新しい本も書いています。来年日本で発売する予定です。この執筆活動も私の原動力なのです。

追加質問:
リンダはセルフリフレクション(内省)を定期的にしますか?

リンダの回答:
幸いなことに素晴らしい男性と結婚し、私たちは自分たちがどうしたいかについて、よく語り合います。

私は長い間シングルでした。というのも、自分の子供が小さい時に離婚したからです。去年まで、実はシングルマザーでした。そして去年結婚しました。私たちは本当に自分たちのゴールについてよく語り合います。
また子供たちとも旅をしています。私たちの間には実は八人もの子供がいるのです。

追加質問②:
パートナーを見つける時の判断基準はありますか?

リンダの回答:
アメリカで素晴らしい研究が合って、1950年から女性たちをずっと追跡したものなのですが、私は1955年生まれなので、私が生まれるより少し前ですね。彼女たちが20代の時に、将来どうなりたいか?と聞いたところ、半分は仕事を続けたい、残りの半分は家にいたいと言いました。
そしてその後のキャリアを追跡したところ、何が仕事を続ける助けになったか、について三つの事を発見したのです。

一つ目は、仕事をサポートしてくれる配偶者と結婚すること。

二つ目は、サポーティブな会社で働くこと。

三つ目は、病気にならないこと、もしくは病気の人を介護する必要性が無いこと、ということでした。


この研究からも分かる通り、実際のところ、どんなパートナーと結婚するのか、というのは非常に大きな要因であることが分かりました。なので、もしあなたが仕事を続けたいことを望むなら、それを応援してくれるパートナーと結婚すべきです。

現代の日本では、男性がパートナーが仕事を続けるのを応援することの、男性にとっての良い点をまだ分かってないように思います。
しかし私が日本人の男性にこれまで伝えてきたことは、あなたは100歳まで生きる、つまり、70歳80歳まで働くのが当たり前になります。
もしあなたのパートナーに収入が無い場合、生きていくのに必要なお金を全てあなたが稼がなければいけないのです。それって本当に大変なことではないですか?二人とも働かなければいけないことは明らかですよね?
我々は男性に対し、働く女性と結婚することは素晴らしいことだと理解してもらうよう促す必要がありますよね。それは、彼にとっても素晴らしいことなのです。


なので、私のパートナーを選ぶ時の大切な優先順位の一つは、私がどんな人間かを認識し、キャリアをサポートしてくれる男性を選ぶということです。
幸いなことに、その男性と結婚しました。そして私も、彼のキャリアをサポートしています。彼も私のキャリアをサポートします。
そして時には一緒に旅をしています。例えば私がダボス会議に出席する時、彼はいつも一緒に参加します。Mr.グラットンとしてね。

えり:最後にえりのパートナーは一つのロールモデルだから、彼のインタビューもするべきよ、というようなことを言ってくれました。

のりぞー:ということで、今回は会社の企業文化についてと、リンダ自身の100年人生について、二つの質問をご紹介させて頂きました。どうだった?

えり:良かったよね、リンダの自分のビジョンとか、自分のパートナーについて聞ける機会ってなかなかなかったからすごく興味深かった。

のりぞー:彼女のよく言っている説を、彼女自身がどう自分の人生に反映しているのか。

えり:よくわかったよね。私が印象に残ったのは、最初の企業文化の質問で、若い女性にとって組織を変えるというのは、そんなに簡単な事じゃない。だから、あなたの選択肢は二つで、戦うのか去るのかである、っていうすごくシンプルだけど、なかなかシンプルには考えきれない、思い切れない自分がいて、でもおっしゃる通りだなって思っちゃった。

のりぞー:ついつい当事者としてお世話になった方の顔が浮かんだりとか、キャリアを変えることってやっぱり大変だよなぁと、色んな要素が入ってくるよね。

えり:でももし残るなら勇気を持てっていうのも、それもまた力強いメッセージだったなぁと思った。

のりぞー:その選択肢の中には残りながら愚痴を言うのは無いんだね。

えり:そうだね。

のりぞー:結構大半の人はそうなっちゃうよね。

えり:のりちゃんはどうだった?

のりぞー:私は1950年からやっている追跡調査がすごく面白くて、仕事を続けられた女性は、仕事に理解のあるパートナーといる、そしてサポートがある会社で働く、そして自分も家族も健康っていう、この三つについて、結構日本って就職活動の時とかって、会社がどれだけ女性活用を推進しているか、とか、あとは自分の親が何歳まで健康でいられるか、みたいなことを色々考えて言っている就活生に会ってきたけど、一方でパートナーが仕事に理解があるのかっているのを、就活している時点でしっかり選択基準に入れて選んでいる女の子ってあんまり会ったことないなと思った。考えてた?

えり:全然考えてなかった。結果論的に今、お互いサポートしあえる関係になっているけど、それはすごくラッキーな事なんだなぁと思ったよ。

のりぞー:私の場合は逆に裏返して、仕事をサポートしてくれない人とはどうせ付き合えないしみたいな、どっちかというと高飛車な言い方なんだけど、結果的にはサポートしてくれるパートナーが見つかったから、結果的には良かったけど、20代前半の就活の時にこういうことちゃんと考えるっていうのは大事だなっていう。

えり:ちょっと頭の片隅に置いておくと。

のりぞー:このプログラムは20代後半~30代前半に向けての女性へお届けしているけど、是非周りの就活中の女の子に伝えてあげたいな、と思いました。

えり:なので、次回はもう一回あるんだよね。次回は日本の雇用の状況とか、日本の政府の取り組みについて、リンダとお話をしましたので、次回もまた楽しみにしていてください。

二人:それではまた、さようなら~。

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