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HISの決算内容を3分で解説!

ここ最近でハウステンボス売却!というニュースを目にした人は多いのではないでしょうか。

報道機関各社、同様のニュースを流していました。
しかし「現時点では正式決定はしていません」とHISはHPのニュースリリースで発表しています。

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出所:HPニュースリリース

興味がある方も多いかと思いますので、今回はこのHISの決算内容について見ていきましょう。

1.PLの状況

まずはPLの状況について見ていきましょう。
内容を見ていく前に、今回も「収益認識に関する会計基準」を適用することにより「売上高の計上方法が変更」になりました。
これにより従来の計上方法と比較すると「売上高は少なくなる」と考えられます。

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出所:決算説明会資料

この決算説明会資料にあるように、今回の基準変更は売上高の「金額」と「タイミング」の二つが変更となりました。
金額は「総額→ネット」へ、タイミングは「一括→分割」へ変更、といった感じでしょうか。
今回の基準変更による売上高への影響は△337億円となります。
変更前の売上高が1,022億円なので半年で約30%減少です。インパクト大です。

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出所:決算説明会資料

では話を戻してPLを見ていきましょう。
売上高は新基準計算で684億円となりました。営業利益は△281億円となり前年同期に引き続いて赤字です。四半期純利益に関しても△269億円の赤字となりました。営業利益や四半期純利益に関して、計上基準変更による影響は売上高ほど大きくはありませんが、それでも少なからず影響はありました。

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出所:決算説明会資料

セグメント別も見て見ましょう。
セグメントとしては5つあります。その中でも一番規模が大きい事業はやはり「旅行事業」です。売上高としては233億円で全体の34%を占めています。
ただ赤字金額も一番大きくセグメント利益は△147億円となりました。
あと今回話題となっている「ハウステンボス」は「テーマパーク事業」に属していて、この事業は三番目の規模で売上高は100億円です。
利益に関しては、唯一の黒字事業でとかろうじて1億円の黒字となりました。

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出所:決算短信

これは全ての事業に共通のことなのですが、コロナ前の2019年は全ての事業は黒字でした。ただコロナが始まった2020年からは赤字が続いていました。
そこでようやくこのテーマパーク事業で黒字復活できたわけです。
せっかく立て直しの兆しが出てきたところでの売却、勿体ないと気がします。

あと営業利益以降の項目も少し見てみますと、今回は特別損失に「関係会社整理損失引当金繰入額」として30億円の損失が計上されています。

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出所:決算短信

これは連結100%子会社のHTBエナジーの株式譲渡に伴う損失です。
HTBエナジーは電力小売業の会社ですが、2021年に営業利益△94億円と多額の損失を計上してしまいました。前年までは黒字経営ではありましたが、電力調達価格の高騰の影響などで一気に赤字・債務超過になってしまい、株式譲渡することになりました。

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出所:決算説明会資料

HIS自身の業績に問題がなければ、株式譲渡はなかったかもしれませんが、今はともかくキャッシュを生まない赤字企業を支えることは難しいようです。

2.BSの状況

次はBSの状況について見ていきましょう。
今回の決算の話ではなく今後の決算に関する話で大きなニュースが出ましたの、今回はその点について見ていくことにします。
それは資本金を1億円に減資するというニュースです。

これはHISのHPにある8/26のニュースリリースにも情報が掲載されています。
これによりますと大きなポイントは以下3点です。
 ・資本金を247億円から1億円に減資
 ・発行済株式総数の変更はなし
 ・減資分のうち133億円を繰越利益剰余金へ振替えて欠損補填に充当

出所:HPニュースリリース

今回の決算の赤字で繰越利益剰余金がマイナスになってしまったので、その欠損補填として今回の減資に至ったわけです。
あと今回の減資をすることで大企業から中小企業に区分が変わります。この中小企業に変わることによる税務メリットも考慮した上での判断かと考えられます。
税務メリットとしてはいくつかありますが、HISのように赤字決算が続いている企業の場合は「赤字の場合は翌年以降の所得から全額控除できる」という点が一番大きなメリットだと考えられます。
これは大企業の場合だと全額控除は認められず、その半分の50%までとなります。

3.CFの状況

最後にCFの状況について見ていきましょう。
内容を見るにあたって注意が必要な点があります。BS上の現預金残高とCF上の残高で相違があります。見ていただくと分かりますが、BS上の残高は1,016億円、一方CF上の残高は964億円となっております。
その差52億円ありますが、これは「現預金の定義の違い」によるものです。
CFでの現預金は「3ヶ月以内に現金化が可能なもの」となりますので、預入期間が3ヶ月を超える定期預金はCFの集計から外れています。
まずはこの点ご注意ください。

出所:四半期報告書

この前提の上で内容を見てみると、CF全体の動きとしては+84億円の増加となりました。内訳としては営業CFで△180億円、投資CFで+195億円、財務CFで+58億円です。営業CFに関しては、四半期純損失が△233億円あるので当然マイナスとなってしまいます。ただその損失分を固定資産売却などによって投資CFでカバーした結果となります。
また財務CFでは株式発行により+75億円が効いています。

出所:決算短信

投資・財務CF自体は特段問題ないのですが、やはり本業に係る営業CFでプラスにならないと経営上厳しいかと思います。
このような厳しい状況もあり今回ニュースで報じられた「ハウステンボス売却」を検討しているのかもしれません。

今回の決算内容3分解説は以上となります。
次はどの会社の決算を見ようかな?



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