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専業主婦だって、いいじゃないか。

私は専業主婦だ。

専業主婦は、否定的に言われることが多い気がする…。
ジェンダー的な本がたくさん置いてある図書館によく行くんだけど、「専業主婦なんてなっちゃダメだ」とか「働く母は立派だ」的な本のタイトルが多い。

そういう背表紙を見るたび、私は静かに傷つく。

10代のころの私も、就職活動中の私も、
「絶対に、結婚しても働く!」
と宣言していた。

母(バリバリに働いていた)から、口酸っぱく
「何になってもいいけど、経済的には自立しないとダメ!」
と言われていたのだ。

そして、
「女性が働きやすい」
「福利厚生がすごい」
が有名な会社に入った。

でも、世の中そう甘くはなかった。
思った以上に労働時間は長く、仕事量も多く、私の心は疲弊していった。

そこで出会った夫と結婚し、逃げるように寿退社して、現在に至る。

「辞めるなんて、もったいない!」
と多くの人に言われたし、実際引き留めてくれる人もいたけど、あのまま働いていたら絶対心の病になっていたと思うし、まして家事や子育てと両立させるなんて、絶対に無理だった。

就職活動の時も、就職してからも、メンタル的な検査をするたびに「ストレス耐性」が安定して低かった。

両方頑張る、ということはなかなか私には難しかったのだ。

それから間もなく妊娠し、子育てしながら何度か転勤し、現在に至る。

PTAやら地域の役員やらやるだけで、眠れなくなるくらい心が疲れる。

最低賃金でパートに行って、随分年下の社員に怒られ、時間外に勉強を強いられている友達を見ていると、たぶん自分には無理だな…と思う。

数千円稼ぐために、その日のご飯は手抜きになり、惣菜を買い、イライラして子どもにきつく当たったりするだろう。
たぶん時間もお金も無駄にした上で、心に傷を残して辞める気がする…。

それなら、もうその分節約して家で機嫌よく主婦をやっていた方がいい。

専業主婦になってすぐ、私は図書館通いを始めた。
借りられるだけ本を借り、予約できるだけ本を予約して、とにかくたくさん本を読むようになった。かれこれ10年以上その生活を続けている。
軽く千冊は読んだだろう。

仕事をしていないと、常識がなくなる…とか、視野が狭くなる…とかいうけど、私に関しては、むしろたくさん本を読んだおかげで、視野が広がった。

バリバリに働いていた母も、定年退職後、やはり図書館通いをするようになったんだけど、別人のようにいい人になった。

もちろん、仕事を持つ人として、私が知っている以上に、プロの仕事を厳しい現場でやってきたんだろう。
そのおかげで、私たち兄弟は、お金の心配をすることなく進学でき、大人になれた。

一方で、母の視野は狭く、価値観も凝り固まっていた。

学歴偏重主義というか、世間体めちゃ大事に生きてるというか…。
母の職場には真面目で高学歴な人が多く、その子どもも、やはりそういう人が多かったことも影響していたのかもしれない。

母のその圧に苦しめられてきたのも事実だし、その呪いはたぶん死ぬまで私たちを苦しめる。

ところが、定年後、たくさんの本を読むようになって、母の言うことが変わってきた。

「他人の目を気にするより、自分がどう思うかよね。」
なんて言葉が、世間体と他人の目を何より大事にしていた母から自発的に出てきたのだ。

私もやっぱり昔の私とは違って、母に対して「許せない!」と思っていたようなことも、ニュートラルに受け入れられるようになりつつある。
これも、絶対読書のおかげだ。

仕事していても、うまく時間を使って、家庭も子育てもうまくこなし、自己研鑽しながら、趣味を楽しんで読書もする、という人もきっとたくさんいるだろう。

でも、「私は」できないのだ。

存在しない理想の自分を追いかけても、辛いし苦しい。

ここに存在する「私」は、色々いっぺんにできないし、ダラダラするのが大好きだし、たくさん本を読む時間は確保したい。
機嫌良く子どもと過ごしたいし、毎日「おかえり」と言える日が最高に幸せなのだ。

専業主婦代表にはとてもなれないけど、私自身として、この生き方が幸せなのだ。

だからといって、子どもたちに、今から専業主婦(夫)を目指す生き方はしてほしくはないのも事実。
経済的に自立できないリスクは大きいし、実際専業主婦をしていたせいで離婚したくてもできない…という友達もいるから。

でも、行きついた先が専業主婦だったとしたら、別に誰がどうこういう話じゃないよね、とも思う。
誰かの生き方やあり方を、他の誰かが批判するなんて、そっちの生き方の方がよっぽど批判されるべきじゃないか。

それぞれに、大切なものがあって、できないこともあって、取捨選択しながら生きている。

私は、私でいい。
私が決めた生き方を、知らない誰かに批判される筋合いはない。
それでも、背表紙に傷つけられる日々は続くかもしれないけど、それも含めて「そういう考え方もありますよね。」と思える人でいたい。


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