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しょうちゃんに会いたい

もともと肩は凝るほうだった。
巨乳でもないのに肩が凝るのを、なんでやねんと不服に思っていた。
その痛みは、子どもを産んでからますますひどくなった。
気がつけば肩に力が入っている。

子どもにおやすみ前の本を読む時、これはあかんやつとしか言いようのない痛みがきた。痛い~っ!というわたしに、子どもは全く容赦なく
「本読んで、本読んでよお。」の一点張り。
やさしさの欠片も無い息子に将来の不安を感じつつ、明日は病院に行くことを決めた。

受付から3時間という驚異の待ち時間を経て、レントゲン撮影。
そののち診察を受けた。
首のレントゲンを見ながら先生が
「4番目と5番目の軟骨が狭くなってるね。神経からの痛みの可能性もあるから、もう少し詳しく調べさせてね。MRIを撮ってきてね。」
と言った。

正直いって、めんどくさいことになってきた。
先生に診てもらう頃には、病院行ったら症状がマシになるという、誰でも一度は経験したことのあるであろう現象がおきており、肩がずいぶん楽になっていたのだった。
しかも少し離れた専門の病院に行かないといけない。
電気とか通してもらったらそれでいいです。心の中で100回は言ったけど、通じない。当たり前か。結局専門のところで診てもらうことになった。

専門の画像診断クリニックについて、受付を済ませると病院で渡された服に着替えて、いよいよMRIを受ける。気さくな看護師さんが、いくつか注意事項を教えてくれるのだが「かなり大きい音がする。」というのを何回も言うので、その度にじわじわ覚悟を深めていった。

ついに、始まった!!!

機械音がする。ものすごい勢いで動いてる音がする。看護婦さんが注意してくれていたおかげで、想像していたよりは大したことないかもしれない。

アタアタアタアタアタアタアタアタアタアタアタ…

あたあたあたあたあたあたあたあたあたあたあた…

なんか、「あたあた」言っているように聞こえるなぁと思っていたら、記憶の奥底から「あた!」という声が聞こえる。

しょうちゃんの声だ。

声が少し鼻にかかっていて、笑う時はダダダダっと笑うしょうちゃん。

目がくるくるしたショートカットの似合う女の子だった。

しょうちゃんは当たり前という言葉をあた!と略していたのだった。しょうちゃんは、独特の略し方やリズムでいつも楽しそうに話をする人だった。私はそんなしょうちゃんが大好きだった。

懐かしくて可笑しくて、こんなところでしょうちゃんのことを思い出せるなんて、少し遠いところまではるばるMRIをしに来た甲斐があったなと病院を後にした。

後日、MRIの結果を近くの病院で聞いたが異常なしだった。

すごくしょうちゃんに会いたい。











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