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妊娠してから、里帰りをしないと決断するまでに時間はかからなかった。
最終的に流産に終わった前回の妊娠のときも、里帰りに対して億劫な気持ちが強く、
「親は自分が里帰りすると思っているだろう、片道2時間かからない距離で里帰りしないと言ったらどんな顔をするだろう…」と最終的には不要になる心配をしていた。

私の母は、一言でいうと、アクティブな人だ。
頻繁にFacebookを更新し、友人の投稿もチェックし、外出も大好き。
3人の娘を育てる傍ら、私が高校生になるくらいまで仕事もフルタイムで続けていたが、
根本的に体力や気力があり、前向きで、友達も多く、よくしゃべる人だ。

そんな母とのお出かけは、話が尽きず(というか母の話が止まらず)、
疲れはするものの、楽しい。
たまに、飲み会で、なんとなくよそよそしく場が持たないことがあると、母のようにずっと楽しそうに話し続けてくれる人がいたら楽だろうなと思う。
実家に夫を連れて帰るときも、夫には基本的に相槌を打ち続けてもらえれば場が持つので、楽だ。
ミーハーで好みがわかりやすく、贈り物もしやすい。

一方で、母は、いきいきとしすぎていて、自分の考えや生き方を強く主張してしまう節がある。
「聞く」より「話す」タイプで、娘の立場から見ると、そのバランスが偏りすぎている。
人生の分岐点において何か相談をしたり、本当に自分の心が弱っているときに話を聞いてもらったりするのには向いていない。
世代間のギャップも影響しているのだろう、これまで、何度か母に相談を持ち掛け、後悔してきた。

そんな母とのこれまでのことを思うと、おっかなくて、里帰りできないなと思った。
自分が人生でも最も弱るであろう時期に、頼るのは危険だと。

妊娠すると、地域において、助産師さんと面談する機会が多々ある。
夫婦双方の実家が遠方で、今の地域に身寄りがない現在の私たちの状況を聞くと、
「里帰りしないときついと思うよ」
「せめて産後すぐは誰か来てくれるのかな?」と問われる。
「いや、でも夫が長く育休をとれるので」と都度微笑みながら回答する。
私たち夫婦の社会的資源を思うと、実家には頼らない子育てスタイルが一番安全に思われるのだ。
(何より、夫婦間の仲が良く、まだ子もいなくて、双方が家事を一通りできるという心強い大前提がある。)

娘の妊娠・出産というライフイベントにおいて、安心して頼れない母親は、母親失格だろうか。
あるいは、過去の些事を気にして、母への感謝や信頼の気持ちよりもまず警戒心が出る私は、娘として欠けているだろうか。
答えは「No」だと思いたい。

母とはいえ、一人の人であり、娘とはいえ、私も一人の人だ。
私が、根本的に自身を尊重してほしいという考え方が強いことを踏まえても、
私と母の相性を思うと、おそらく「心身が元気なときに、リフレッシュのために一緒にいる」というのが最適解だと私は思う。
それ以外の場面では、お互いが心を許せる人に頼りながら、それぞれ人生を進めていくのが、きっと私たちには合っている。

「プレママ」になると、母親や子育てのステレオタイプを突き付けられ、その度に考えさせられる。
「母としてどうあるべきか」という価値観が、時に呪縛として自分の首に絡まるような感じがする。
お腹の中にいる未来の息子のキックにHPを削られながら、この子と私はどんな親子関係を築いていくのだろうかと思いを馳せる。
性別が異なることもあり、私が母に抱いてきた感情とは異なる感情をこの子は私に抱くだろうが、
今のうちから想定しすぎず、自然な形で親子関係が定まっていったらいい。

今日から数日間、関東にいる母が、関西の我が家に遊びに来る。
妊娠9か月、時間を持て余しつつも、疲れやすい身体にうんざりしてきている今の自分にとって、ちょうどいいリフレッシュになりそうだ。

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