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夢で逢えたら【1分しまうま】(毎週ショートショートnote)

ほぼ毎日この電車に乗ってくる彼女。
仕事終わりだろう。
リュックを前に抱えてスマホをいじっている。
時折、頬がゆるみ目が綺麗な三日月になる。
おそらくメールを送っているのだろう。
子供だろうか。
旦那さんにだろうか。
それとも恋人か。

前の座席が空いても、隣に立つおばあちゃんにどうぞと譲ってまた目が優しい三日月になる。
やがて彼女の瞼が時折重そうに閉じられそうになる。
その度にはっと慌てて目を開ける仕草にドキドキする。


吊り革につかまって立つ彼女。
電車の動きに合わせて揺れている。
うつらうつらしている姿は
しまうまのようだ。
立ったまま寝ている彼女の夢に
どうにかして入ってみたい衝動。


しまうまのような彼女は
駅に着くまでの1分を
優しい夢の中で過ごしている。
このまま寝かせてあげたい。
そしてできることなら隣にいたい。

降りる駅は一緒だ。
しまうまの彼女は駅の階段を降りていく。
そこで待っていた男と並んで歩いて行く。
こんなもんさ。


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